救命救急から慢性期まであらゆるニーズに対応するハイブリット型病院

独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター
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がん診療連携指定病院

内視鏡手術センター

内視鏡手術センター長
外科系副診療部長 齋藤 裕司

 当院では2010年に北海道医療センターとして開院して以来、外科、婦人科、泌尿器科、呼吸器外科の4診療科が独自に内視鏡外科手術に取り組んできました。

 日本内視鏡外科学会認定の技術認定医がいるだけではなく、医師、看護師、臨床工学技士らも高い技術を有し徐々に症例数を積み重ねてきました。

 その中で相互に連携して手術にあたる症例も増え、各診療科単位ではなく、内視鏡手術に関わる全てのスタッフが一致協力して治療にあたることが、スキルを磨き、チーム力を高め、より安全で安心な医療の提供につながると考え、2017年4月に内視鏡手術センターを立ち上げました。

 今後はさらなる低侵襲手術のニーズの高まりに応えるべく、スタッフ一同より一層の努力を重ねていきます。

●内視鏡手術センターの構成

【背景】 高齢化の進行とともに、体への負担や術後の合併症が少ない低侵襲な手技が求められています。内視鏡を使用した手技は操作部位を拡大視し、精密な手技を行えることから、術後の合併症を最低限に抑え、早期離床を可能にします。
【目的】 各診療科の持つ知識や技術を共有し連携を図り、より高度な内視鏡手術を行うことで、適正な治療を提供します。
【構成】 内視鏡手術センターは外科、婦人科、泌尿器科、呼吸器外科の4つの診療科を中心に活動していきます。

●安全性と根治性を高めた内視鏡手技

 臓器に直接触れずに限られた術野で切除や縫合を行う内視鏡手術の「安全性と根治性」を高めるために、当院では「多職種が連携するチーム医療の構築」と「メンバーの質の高い手技の習得」に努めています。

4つの診療科のスキルとその総合力によって、より高度な内視鏡手術を実施しています。

●経験の豊富な高い専門性を持った医師による手術

 内視鏡外科手術を安全に行うためには特別のトレーニングを受ける必要があります。日本内視鏡外科学会では、「技術認定制度」を立ち上げ、指導的な立場でこの手術を行うことができる医師を認定するための難易度の高い試験を行っています。

 当院には、この資格を有する医師(日本内視鏡外科学会技術認定医)が5人おり、安全な手術を提供できる体制を確立しています。

婦人科の内視鏡手術について

●婦人科の主な適応疾患

・子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮外妊娠、子宮体がん

●婦人科の手術件数における内視鏡手術の割合い

 婦人科の手術件数は2010年の開院当初から右肩あがりに延びており、2012年度から350件を超える件数となっています。特に内視鏡手術のしめる割合いは50%を超えており、2016年度は60%を超える症例数となっています。

●技術認定医の専門チームが独自の臨床研究から導いた2孔式腹腔鏡手術

 当科では北海道医療センター開院後の2013年3月から「臍部単孔式腹腔鏡手術」「2孔式腹腔鏡手術」を順次導入しました。

低侵襲性と安全性を両立するため研究をおこなっており、「従来法(4孔式)」、「単孔式」「2孔式」の3手法のついて安全性、操作性、手術時間や摘出物重量などを比較検討し2011年からは「2孔式腹腔鏡手術」を中心に症例を重ねています。

 低侵襲性と安全性、つまり患者様のからだにとってやさしい手術を常に心がけて診療に当たっています。

 その2大柱が、①低侵襲腹腔鏡手術、②自己血輸血の積極的導入、以上の2つです。

① 低侵襲腹腔鏡手術

 腹腔鏡手術は、臍を中心にお腹の3〜4カ所の傷からカメラや鉗子を使って腫瘍を取り除く手術ですが、当科で行っている腹腔鏡手術は、臍に1カ所、その他下腹部横に3〜5mm程度の傷、計2カ所の小さな傷だけで行う、いわゆる2孔式手術をほぼ全ての腹腔鏡手術に適用しています。

 数年前より臍1カ所のみの単孔式手術が行われるようになってきましたが、癒着している例への対処が難しかったり、臍の傷そのものが大きくなったりする影響で、術後の痛みが増す傾向にあったり、さまざまな問題点が出てきています。当科で行っている2孔式手術ではそれらの問題はすべて解決され、また古典的な3〜4孔式腹腔鏡手術と同等な手術成績を挙げているのみならず、傷が少ないため痛みや整容性にも優れ、患者様に好評をもって迎えられております。

 また最近では卵巣腫瘍手術を中心に、臍を切ることなく、臍の周囲、いわゆる臍輪に2〜5mmの傷だけで行う臍にやさしい手術も行い、さらなる低侵襲化を目指しています。

◎代表的な症例

2孔式による腹腔鏡下子宮全摘術
 臍部切開創にラッププロテクター(開創器)を装着し、さらに蓋状のE・Z アクセス(差込口)をかぶせ、そこに腹腔鏡と鉗子を挿入する5㎜径のトロカール(筒)を穿刺します。次に右下腹部に小さく切開創を作り、5㎜径のトロカール1本を挿入します。
モニタで拡大視された臓器を確認しながら、電気メスや鉗子を使って、子宮周辺の剥離や切離を行い子宮を摘出、腟を縫合します。次にラッププロテクターを装着した臍部創から子宮と筋腫をつまみ上げ、メスの先で細切しながら回収します。最後に膀胱鏡で尿路損傷がないことを確認し、閉腹します。
この手術のメリットは、手術器具の操作性が良好なことです。傷口は臍部以外は1カ所で整容面に優れ、創痛が抑えられ、経過とともに極めて目立たなくなります。

②自己血輸血の積極的導入

 輸血には同種血輸血と自己血輸血の2種類の方法があります。同種血輸血は献血者の血液から作られた血液製剤を使用するため、感染や副作用のリスクがあります、患者本人の血液を使用する自己血輸血では極めて低リスクです。
手術において、特にがんを中心とした悪性腫瘍の手術においては、腫瘍のひろがりや癒着、大きさやもろさ等々の影響で出血量の増加に伴い、術中や術後に輸血しなければならない症例が少なからずあります。輸血を実施した場合、非常にまれですが発熱や感染、じんましんが出たりショック状態におちいってしまうこともあります。
当科では自己血輸血を推奨し、安全で適切に実施する体制を整えています。

 それにより良性腫瘍の手術での輸血はほぼ0に、悪性腫瘍の手術でも可能な限り輸血を行わずに手術しています。つまり他人の血液をできるだけ使わない手術を行うという意味からも、低侵襲な手術を実践していると言えます。
宗教的な理由から、同種血輸血だけでなく自己血輸血の「貯血式」もできない場合は、医療機関によっては手術の実施が難しくなります。
当センターでは、貯血式ができない場合も安全に手術を実施するための独自マニュアルを作成し、術中出血量を最小限に抑えながら、自己血輸血の「希釈式」「回収式」で手術を行う技術と経験を積み上げてきました。
新病院に移行してから2017年3月までの当科の手術数は2750 件ですが、そのうち30件が、「宗教上の理由で同種血輸血、貯血式自己血輸血ができない症例」です。良性悪性を問わず積極的に手術治療を実施し、良好な結果を得ています。
特にエホバの証人の方々を中心とする輸血拒否の方々、また信条的に輸血を受け入れない方々の手術も積極的に受け入れており、それぞれの方々の希望に寄り添った手術を行うことを常に心がけております。

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外科の内視鏡手術について

●外科の主な適応疾患

・胆のう結石症、鼠径ヘルニア、胃がん、大腸がん、急性虫垂炎
腸閉塞症十二指腸潰瘍穿孔、婦人科や消化器内科との合同手術

●主な手術の件数と腹腔鏡手術の割合い

 外科の腹腔鏡手術は上記のとおり適応症例が多岐にわたております。その中でも主な5症例の件数をグラフで比較すると、合計で腹腔鏡手術のみでも220件を超えており、2015年度には約80%が腹腔鏡による手術となっています。

●指導医が率いるチームプレイで高い安全性を確保

 当科では腹腔鏡手術を安全に行うために、日本内視鏡外科学会技術認定医を中心に手術を行い、外科医師の技量を高めるための指導体制(当センター技術認定医:常勤1人、非常勤1人)があります。一般臨床のみならず、トレーニングセンターで研修を受け、学会で新しい手技や最新情報を入手しながら、日々研鑽を積んでいます。

●外科の腹腔鏡手術例

◎根治を目指す直腸切除術

 大腸がんの腹腔鏡手術は術者の経験や技量が十分あれば、早期がんだけではなく、進行がんにおいても通常の開腹手術と同様に安全に実施することが可能です。しかし直腸は解剖が複雑な上、狭い骨盤内での操作が必要とされることから、開腹手術を選択するケースが少なくありませんが、当センターでは根治を目指す治療の選択肢の一つです。

 全身麻酔下で腹腔内を炭酸ガスで膨らませた後は、手術器具を挿入する5~10㎜程度の切開創を、臍部を含み合計5カ所作り、ポート(筒)を差し入れます。
臍部から腹腔鏡を挿入して腹腔内を十分に観察します。モニタに鮮明に映し出された臓器は拡大視されているため、血管や神経の位置を確認しながらの細かな操作が可能です。

 腹腔鏡手術は、術者・助手・スコピスト(腹腔鏡を保持する医師)の3人がモニタに映し出された同じ映像を見ながら、各切開孔から挿入した腹腔鏡手術専用の鉗子や電気メスなどを駆使して臓器の剥離や授動、血管の遮断や切離を行います。
病変部から肛門側の腸管を自動縫合器で切離し、直腸を臍部の切開創から体外に取り出し、病変部を直接観察しながら切除します。
腸管に自動吻合器の接続部を留置して腹腔内に戻し、肛門から挿入した自動吻合器の接続部と結合させて腹腔内で吻合し、5カ所の切開創を閉じます。

◎2型病変の胃全摘術

 胃がんにおいて推奨できる腹腔鏡手術は、胃がん治療ガイドラインおよび内視鏡外科診療ガイドラインではステージⅠ症例に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術のみとなっています。

 進行胃がんや胃全摘術に対する腹腔鏡手術がガイドラインで推奨されていない理由は、周術期における安全性と長期予後に関して推奨する根拠が現在のところ乏しいためであり、これらの症例に対する適応範囲は各施設の習熟度に応じて設けているのが現状で当症例の進行胃がんに対する腹腔鏡下胃全摘術は、安全性と根治性を十分に検討した後、患者に十分に説明を行い、院内の倫理委員会の承認を得て実施しています。

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泌尿器科の内視鏡手術について

●泌尿器科の主な適応疾患

・副腎腫瘍、腎盂尿管移行部狭窄症、腎がん、腎盂尿管がん、膀胱がん

●腎臓の機能を温存する腹腔鏡手術を早期がんに拡大

 腎がんには化学療法や放射線療法の効果が期待できないことから、治療は外科的に片方の腎臓を摘除する腎摘除術か、腫瘍周囲の腎組織を切除する腎部分切除術の選択になります。近年の画像診断の発展に伴い、健康診断やほかの病気の検査中に偶然発見される早期腎がんの患者が増えていることから、当科では腹腔鏡手術による温存治療に積極的に取り組んでいます。

●腎機能を保持する腹腔鏡手術による腎部分切除術

 腎がんの手術には腎摘除術と腎部分切除術があり、それぞれの手術に開腹手術と腹腔鏡手術があります。
腎がんの腫瘍最大径が4㎝以下の場合、腎摘除術と腎部分切除術における制がん性は同等ですが、腎摘除術では術後長期間経過すると腎機能低下をきたし、そのことに起因する合併症(心血管系の病気など)での死亡率が上昇することが報告されています。
当科では進行性腎がんなど特殊な症例以外は腹腔鏡手術を行い、腫瘍径の小さな腎がんには腎部分切除術が第一選択です。腹腔鏡手術は、体腔内での腎組織の切除や縫合を必要とするため難易度が高く、腎摘除術にはない合併症(出血や尿漏れ)が発生する危険性がありますが、当科の國島は2009 年から前任地で腹腔鏡手術での腎部分切除術を開始し、現在60例を超える実績を持っています。腎部分切除術は、切除ラインに起因するがんのコントロール、手術中の腎血管の阻血時間に起因する残存腎機能温存が重要になりますが、これまでの経験症例では切除断端は全て陰性で、再発・転移の出現した症例はありません。また、腎血管の阻血時間は一般的に30分以内であることが腎機能の保持に必要であるとされていますが、腫瘍が腎血管や腎盂腎杯に近い難易度の高い症例でもほぼ30分以内の阻血時間で手術を施行しています。

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呼吸器外科の内視鏡手術について

●胸腔鏡が手術の主流呼吸器外科の胸腔鏡手術豊富な経験による高い精度

 腹腔鏡手術では腹腔内に炭酸ガスを注入して手術する空間をつくりますが、胸腔鏡手術では肺の中の空気を抜いて肺を萎ませて空間をつくり手術を行います。術中は反対側の肺だけで呼吸させています。
腹腔鏡手術では炭酸ガスが逃げないように腹部を密閉する特別な器具を用いて手術を行いますが、胸腔鏡手術では密閉する必要がなく、通常の開胸手術に用いる器具を使用して手術を行います。
しかし、胸腔鏡手術の創部の大きさは通常3~5㎝程度と限られるため、時に1つの創部から3~4本の器械を操って、器具が干渉しないようにしながら手術を行うこともあり高度な技術を要します。
特に肺の血管は体血管に比べて太く非常に脆弱なため、出血する事態となれば大量出血につながります。こうした肺血管を取り扱うには繊細な手技が必要になるため、その精度を高めるさまざまな工夫と応用が生まれています。
条件にもよりますが、当院ではできるだけ低侵襲な治療を行いたいという考えから、良性疾患である気胸などは2・5㎝と5㎜の2カ所の創部で胸腔鏡手術を行っています。

 また、神経内科の協力のもと重症筋無力症や胸腺腫に対する拡大胸腺摘出術を行っていますが、近年は病状の状態によって胸腔鏡手術を採用しています。
従来の拡大胸腺摘出術は、胸骨を縦切開して胸部を「観音開き」のように開いて手術を行うため、大きな傷跡と術後の疼痛を伴う手術でしたが、胸腔鏡手術では疼痛の軽減のみならず、手術創が小さく整容性に優れ、胸の中心に傷がないために襟元が開いた服が着られるなどの利点があります。

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