国立病院総合医学会





歯科口腔外科

顎骨骨折嚢胞顎関節症顎変形症口腔乾燥や唾液の異常口腔ケア睡眠時無呼吸症候群顎口腔領域の不随意運動インプラント治療顎顔面補綴治療

顎骨骨折

交通事故やスポーツなどによって引き起こされる顎や顔面の骨折には、下顎骨骨折、上顎骨骨折、頬骨骨折、歯槽骨骨折などがあります。



下顎骨骨折

下顎骨は顔面の中でも外力の作用を受ける頻度が最も高く、ゆえに下顎骨骨折は顔面骨骨折のうち最も頻度の高いものです。それぞれの骨折により症状は異なりますが、共通の症状としては骨折部の痛みや腫れなどを認めます。さらに口が開けにくい、咬み合わせがずれるといった症状やこれらの症状に伴う咀嚼(そしゃく)・発音障害などがあります。



歯槽骨骨折

歯槽骨とは歯が植立している部分の骨を指します。歯槽骨骨折は転倒、打撲によって起こることが多く、頻度の高い部位は上顎の前歯部です。症状としては唇、あるいは口の中の粘膜などの軟組織の損傷を合併している場合が多くみられます。



◆治療

顎骨骨折治療の大原則は「咬合(咬み合わせ)の回復」です。咬合の回復と顎骨の安静をはかるためにワイヤーで上下の歯を固定源に正常な咬み合わせに誘導し、口が開いたり、咬み合わせがずれないように固定(顎間固定)を行います。顎間固定を行うに際しては手術により骨折部位をプレートやスクリューで固定する方法と手術を行わずに顎間固定のみを行う方法があります。手術を行うか否かは骨折部位、骨片の偏位などから決定されます。 手術を行う場合は口腔内からの切開を行い、骨折した部位を整復の上、チタンプレートとスクリュー(ネジ)を用い固定します。また、スクリューを口の外から通す際に顔面の皮膚の一部(8mm程度)を切開をする場合がありますが、傷が目立たないような皮膚切開を行なっております。顎間固定期間は、骨折の状態によりますが、プレート使用の場合は約2週間、使用しない場合は約3週間程度必要となります。
骨の接合部分に用いられるプレートは生体親和性の高い(異物反応の少ない)チタンミニプレートシステムが一般的ですが、金属による強固な整復固定が得られ、早期の社会復帰可能である反面、再度除去手術をする必要があります。当科では、吸収性プレート(PLLAプレート)も使用しています。再手術の必要がない吸収性プレートは、患者さんへの負担が軽い上、金属プレートに遜色のない治療結果が得られています。プレートの吸収には2~3年を要しますが、できる限り早期の社会復帰が果たせるように心がけています。 歯槽骨骨折の治療法としては徒手にて骨折した部位をもとに戻した上でワイヤーなどによる固定を行います。軟組織の損傷がある場合はこれに対する処置も行います。顎顔面の多発骨折に対しては当院形成外科のご協力を得て共同で手術をさせていただくことが多いです。

のう胞(嚢胞)

のう胞(嚢胞)とは固有の壁を有し、内面が上皮で裏装(裏打ち)され、その中に液体または半流動体を含む病的な嚢状(袋状)の構造物を指します。顎骨、歯槽骨などの骨の中にできるものや、舌、口唇などの軟組織に生じるものと様々です。通常、痛みはなく、ゆっくりと大きくなることが多く、感染を伴うことにより痛みが生じてきます。



歯根嚢胞

骨のなかにできる嚢胞のうち、最も頻度が高く、失活歯(虫歯などで神経が死んだ状態の歯) の根尖性歯周炎(歯の根の先の炎症)が原因で生じます。



粘液嚢胞

唾液の流出障害、すなわち唾液腺(唾液を貯留する役割を果たす器官)の排泄管の狭窄、閉鎖および損傷などにより生じた貯留嚢胞です。発生部位としては誤咬が起こりやすい下口唇に多く、その他に口底、舌、頬粘膜などにも生じます。

この他に軟組織に発生する嚢胞としてガマ腫(口腔底部に生じ、外見がガマガエルの咽頭に似ていることからこう呼ばれます)、類皮嚢胞、類表皮嚢胞、甲状舌管嚢胞、鰓嚢胞などがあります。嚢胞性の病変は、摘出時に病理検査を行い、確定診断を得るようにしています。



◆治療

歯根嚢胞の治療法としては嚢胞の摘出と原因歯の治療(歯根端切除術や抜歯)となります。嚢胞の小さいものでしたら根管治療で治癒する場合もあります。



・嚢胞摘出術
経過が長く大きなものや、摘出が難しい部位に存在する嚢胞は、全身麻酔下での摘出が必要となることがあります。嚢胞の原因となった歯の抜歯が必要となります。粘液嚢胞の治療は外科的に摘出します。再発することもありますので摘出の際は周辺部の腺組織も含めて摘出します。



・歯根端切除術
歯根端切除術とは、歯髄の治療(根管治療)だけでは治癒が期待できない場合に、嚢胞の除去と同時に、細菌などが付着した根の先の切除を行うことにより、抜歯をせずにその歯を残す方法です。



・意図的再植術
意図的再植術は根尖に嚢胞があっても、動揺やその他の症状が軽い歯は、歯を一旦抜いて、直接嚢胞を取り除いて、抜歯した歯を元の位置に戻して固定する方法です。当科では意図的再植を積極的に応用しています。上顎臼歯部で歯性上顎洞炎を起こしているような場合、以前は全身麻酔下で抜歯することが多かったのですが、局所麻酔で抜歯せずに治療可能です。

顎関節症

顎関節症は咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要徴候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包・靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれます。つまり、顎の筋肉や顎関節が痛かったり、口を開けるときに顎関節に音がしたり、口が開けられなくなるなどの症状があります。痛みや機能障害がある場合にはなるべく早期に治療にとりかかることが望まれます。咬むときに働く筋肉に痛みが出るのは、無意識の歯ぎしりやくいしばりをしている方に多くみられます。口を開けるときの「カクッ」あるいは「パキン」という額関節雑音は顎の関節の軟骨(顎関節円板)が不安定となり、ずれたり、戻ったりするときに音がします。痛みやひっかかって口が開きにくくなると、治療の必要がありますが、雑音だけの場合は経過観察となることが多いです。顎関節円板がずれてしまい、ひっかかると(非復位性顎関節円板前方転位、クローズドロック)、痛みを伴い、口が1-2cmしか開けられなくなり、できるだけ早期の治療が必要となります。

当科は日本顎関節学会の認定機関であり、同時に日本口腔外科学会と日本補綴歯科学会の認定機関でもあります。したがって、顎関節疾患に対して、補綴的治療法から口腔外科的治療法まで、各患者さんに最適な診断と治療を行なうことが可能です。
顎関節症の他に顎関節に関連する疾患として顎関節脱臼、咬筋肥大症、筋突起過長症、咀嚼筋腱腱膜過形成症などがあります。顎が外れてしまう顎関節脱臼はご高齢の方にみられことが多く、繰り返すと習慣性顎関節脱臼となることがあります。咬むときに収縮する咬筋が肥大すると、エラが張ったような四角い顔になります(咬筋肥大症)。咬むときに働く側頭筋が付着している筋突起が長くなると、口を開けるとき引っかかって口が開けられなくなります(筋突起過長症)。咀嚼筋腱・腱膜過形成症は無意識に起こる歯ぎしりや強い噛みしめが生じ、咀嚼筋の腱が発達し、口が開けられなくなる最近注目されるようになった病態です。就寝時や何か精密作業に熱中しているとき、あるいは緊張しているときに、無意識に起こる歯ぎしりや強い噛みしめなどの口腔習癖(ブラキシズム)のある方は咬筋肥大症、筋突起過長症、咀嚼筋腱膜過形成症となる可能性があります。



◆治療

まず、顎全体および開口時、閉口時の顎関節のレントゲン写真を撮影し、顎関節症の原因がどこにあるのかを診断します。つまり、骨、軟骨(顎関節円板)、筋肉のうちのどこに異常があるのか診断します。顎関節円板の転位が疑われる場合はMRIを撮影する必要があります。

顎関節の痛みが強ければ、鎮痛薬、筋肉の痛みが強ければ、鎮痛薬や筋弛緩薬などの処方、さらに筋緊張を和らげるマイオモニターをします。各種スプリント(マウスピース)を作製し、夜寝るときに装着していただきます。経過によりパンピングマニピュレーション (関節腔内注射)を行なうこともあります。この段階で改善が見られる場合がほとんどですが、改善がない場合はさらに入院して手術を行うことがあります。

また、顎関節脱臼に対しても保存的治療から全身麻酔下での外科的治療までを行なっています。咬筋肥大症、筋突起過長症、咀嚼筋腱・腱膜過形成症などには全身麻酔下での手術が必要になります。鎮痛薬、マイオモニター、スプリントなどでは効果のない、きわめて強度の歯ぎしりや強い噛みしめなどに対しては緊張した筋肉に局所麻酔薬を注射するMAB(エムエービー:muscle afferent block)療法(参考文献10,11)やボツリヌス毒素の筋注による治療(ボツリヌス療法)を行っています(参考文献11,12)。従来の方法では効果のない習慣性顎関節脱臼に対しても、開口筋である外側翼突筋にボツリヌス療法を行い、非常に良好な成績をおさめています。



◆研究

咀嚼運動に伴う咀嚼筋(咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋)の活動、さらに咀嚼時に活動する他の筋肉(顎二腹筋、舌筋、胸鎖乳突筋他)の活動を下顎運動、切歯点運動、下顎頭運動と同時記録して、これらの筋肉の機能的役割を研究しました(参考文献1-3)。特に、外側翼突筋上頭、下頭が顎関節内障その他の顎関節症によってどのように変化するかを研究しました(参考文献1,4-9)。またスプリントや内服薬治療などの従来の方法では効果のない強度のブラキシズムに対するMAB療法(参考文献10,11)やボツリヌス療法に関する臨床研究を行なっています(参考文献11,12)。従来の方法では効果のない習慣性顎関節脱臼に対しても、開口筋である外側翼突筋にボツリヌス療法を行い、非常に良好な成績をおさめています。

◆参考文献

 
  1. Yoshida K, Inoue H. EMG activity of the superior and inferior heads of the human lateral pterygoid muscles in internal deranged patients. Advanced Prosthodontics Worldwide, Proceedings of the World Congress on Prosthodontics, 258-259, 1991.
  2. 吉田和也, 福田順直,ほか. ヒト外側翼突筋上頭への筋電図電極刺入方法. 日本補綴歯科学会雑誌, 36: 88-93, 1992.
  3. 吉田和也. 顆頭運動からみた咀嚼時の外側翼突筋上頭の筋電図学的研究. 日本補綴歯科学会雑誌, 36: 110-120, 1992.
  4. 吉田和也, 井上 宏. 顎関節内障患者の咀嚼時における外側翼突筋に関する筋電図学的研究.日本補綴歯科学会雑誌, 36: 1261-1272, 1992.
  5. Yoshida K. Elektromyographische Aktivität der Kaumuskeln während Kiefergelenkknacken.Schweizer Monatsschrift für Zahnmedizin, 105: 24-29, 1995.
  6. Yoshida K. Elektromyographische Aktivität des M. pterygoideus lateralis bei Patienten mit Kiefergelenkknacken und Diskusverlagerung. Deutsche Zahnärztliche Zeitschrift, 50: 721-724, 1995.
  7. Yoshida K. Kiefergelenkknacken und Diskusverlagerung aus der Sicht der Elektromyographie der Kaumuskeln. In: Siebert GK (ed): Atlas der Zahnärztlichen Funktionsdiagnostik, Carl Hanser, München, 44-50, 1996.
  8. Yoshida K. Koordination der Kaumuskeln während der Kaubewegung aus der Sicht der Kondylusbewegung bei Patienten mit Diskusdislokation. Deutsche Zahnärztliche Zeitschrift, 52: 816-820, 1998.
  9. Yoshida K. Eigenschaften der Kaumuskelaktivität während verschiedenen Unterkieferbewegungen bei Patienten mit Diskusverlagerung ohne Reposition. Stomatologie, 96: 107-121, 1999.
  10. 吉田和也, 梶 龍兒, ほか. 顎口腔ジストニア(oromandibular dystonia)に対するMuscle afferent block(MAB)療法. 日本口腔外科学会雑誌, 46: 563-571, 2000.
  11. 吉田和也. 顎関節症と睡眠. 飯塚忠彦, 井上 宏編, 顎関節症診断・治療マニュアル. 第1版, 永末書店, 京都, 186-193, 2004.
  12. 宮脇正一, 吉田和也. 顎顔面領域の不随意運動. 高戸 毅, 天笠光男, ほか編, 口と歯の事典, 朝倉書店, 東京, 282-296, 2008.
  13. 吉田和也. 歯ぎしりにボツリヌス治療は有効か?. アンチ・エイジング医学─日本抗加齢医学会雑誌, 2017.

顎変形症

上顎が前に出すぎている(上顎前突)。下顎が前に出すぎている(下顎前突)。これらは、歯並びの異常だけの問題の場合と、顎骨の位置や形態に異常がある場合とにわけることができます。歯の問題だけでなく、顎骨の位置や形態の異常が起っている場合を顎変形症と言います。顎変形症の種類には、上顎前突、下顎前突、開咬症(咬み合わせたとき、上下の歯の一部が接触せず、隙間が空いている状態)、非対称症、下顎後退症などがあります。そのために充分な咀嚼機能が得られなかったり、発音や審美的に問題が生じるばかりでなく、放置すると顎関節に異常をきたす場合があります。顎変形症の治療は、矯正歯科医と連携して手術によって改善をはかります。



◆治療

治療期間は長期(数年)にわたることになります。

診査・診断

顔貌の分析、レントゲン写真、歯列などから顎変形症の診断を 行い、治療方針を決定します。

手術前矯正

手術後の咬み合わせを想定して、最も安定した咬み合わせになるよう歯列矯正を行います。
通常1~2年かかります。

手 術

全身麻酔下での手術になります。手術の種類にもよりますが、 2~6時間の手術になります。
入院期間は1~2週間です。

退院後リハビリ

骨が癒合するまでの約3ヶ月間は上下の歯にゴムをかけて歯列を牽引することにより、正しい咬合関係に導くとともに、早期に通常の食事ができるようにするリハビリテーションの期間と言えます。

手術後矯正

手術後に再度歯列矯正で咬み合わせの微調整を行います。
通常1~2年かかります。



◆よく行われる手術

 
  1. 下顎枝矢状分割(かがくししじょうぶんかつ)骨切り術
    歯列を含めた下顎全体を移動させる方法です。左右の奥歯あたりの歯肉を切開し、骨を内外側に分割します。下顎を目的の位置に移動し、骨接合用のプレートで固定します。下口唇から、顎の先端にかけて知覚異常を生じることがあります。
  2. 下顎枝垂直(かがくしすいちょく)骨切り術
    歯列を含めた下顎全体を移動させる方法です。左右の奥歯あたりの歯肉を切開し、後方の骨を外側から垂直に切り離します。知覚異常は少ないとされていますが、顎間固定の期間は長く、術後約2週間です。
  3. オトガイ形成術
    下顎の前歯部の歯肉を切開し、オトガイ部(顎の先端部)の骨を切り離し、おもに前方に移動させます。下口唇から、顎の先端にかけて知覚異常を生じることがあります。
  4. 前方歯槽骨切り術
    上顎や下顎の前歯部のみに問題がある場合に適用される術式です。左右の小臼歯を手術中に抜歯し、できた空隙を利用して移動させます。
  5. Le FortⅠ(ル・フォー1)型骨切り術
    上顎全体の移動を行う方法です。上顎の歯肉を切開し、鼻の横あたりから水平に骨を切り離します。上顎を目的の位置まで移動し、骨接合用のプレートで固定します。頬部の皮膚に知覚異常が生じやすく、鼻の形が変る・出血が多いなどの問題があります。


◆手術直後の状況

どんな手術でも手術直後はつらいです。手術後の1,2日は痛みと腫れが強いです。さらに顎変形症の手術後は手術部位の安静のため、原則的に顎間固定を行います。顎間固定とは上の歯列と下の歯列をワイヤーやゴムなどで固定することを言います。顎間固定中は口を開くことができないので、食事は流動物に限られ、会話も不自由となります。顎間固定は、状況により数日~2週間のうちには解除されますが、通常の食事が可能になるのは手術後2ヶ月くらいかかります。



◆手術時の合併症

 
  1. 出血
    輸血の可能性がある場合は、あらかじめ患者さんとご家族に説明しますが、術中に予想していたよりも出血が多くなる場合には、ご本人は全身麻酔中のため、ご家族に承諾を得て、輸血する場合があります。
  2. 口唇、頬、歯肉のしびれ感
    慎重に手術を行っても、神経が侵襲を受けて、しびれが出る可能性が否定出来ません。
  3. 顔貌の変化
    咬合の改善のために手術によって顎の骨を移動させます。期待されていた顔貌にはならない可能性があります。
  4. 不測の事態
    骨の形態、性状、解剖学的な問題により、手術術式を変更することもあり、予定していない金属プレートによる固定を行うことがあります。また、術後の出血や、顎関節の脱臼による、緊急での再手術の必要が生じる場合もあります。
  5. 傷口の感染
    術後の口腔内が清潔に保たれないと、感染をおこし、傷口が開いてしまう場合があり、入院が長引くこともあります。


◆費用

顎変形症と診断され、治療を行う場合、入院・手術の費用はすべて保険適用になります。手術のための術前、術後の歯列矯正治療も保険の適用になります。 高額療養費の申請が可能です。高額療養費とは、同じ病院や診療所で支払った1ヶ月の医療費が、自己負担限度額を超える場合には、手続きをすれば、その金額が返金される制度です。顎変形症にかかった治療費も給付申請することができます。

口腔乾燥や唾液の異常(舌痛症、口腔乾燥症)

唾液には食欲増進、酵素による糖質の分解、食塊の通過を助け、口臭や虫歯を予防するなどの働きがあります。
舌がピリピリ痛む、舌の灼熱感などの症状を訴える患者さんが増えていますが、その原因は唾液の分泌不良にあります。口腔乾燥をきたす原因は、

 
  1. 唾液腺自体の病変や障害がある場合:
    シェーグレン症候群、老人性唾液機能低下症、放射線照射による唾液腺機能低下症、薬剤投与による唾液分泌低下
  2. 体の水分が不足している場合:
    糖尿病、脱水、尿崩症、発汗、下痢、嘔吐など
  3. 口での呼吸が水分を蒸発させる場合:
    副鼻腔炎、鼻、咽喉疾患
  4. その他心因性のものなど


があり、30%の方が唾液分泌低下を示していると言われています。
唾液腺自体の病変や障害により発生するものが最も多く、心因性のものがこれに続きます。
唾液腺の障害による患者さんでは、薬物(抗精神剤、入眠剤、降圧剤など)の長期連用、心因性やシェーグレン症候群や加齢による分泌低下があげられます。

唾液流量の測定で減少が認められた場合は、まず日常生活の改善を行います。これは、口腔内を常に湿潤させ、清潔に保ち、咀嚼回数を増やし、軽い運動を行い、酸味のある食べ物を摂取し、唾液腺のマッサージを行うなどです。さらに現在内服中の薬剤の変更中止などを主治医に依頼することが必要です。



◆治療
日常生活のケアとともに、人工唾液による唾液の補充、保湿材の利用、唾液分泌促進薬、去痰薬、利胆薬、漢方薬の内服を行います。シェーグレン症候群が疑われる場合には、唾液腺のムスカリン受容体を刺激して分泌促進の働きを有するお薬の服用で症状軽減をはかります。
高齢化社会が進むにつれて患者さんは増えています。総合病院の特徴を生かして全身管理下に治療を行い、患者さんのQOL(クオリティー・オブ・ライフ:人生の質・生活の質)の向上をはかっています。

口腔ケア

口腔ケアとは、「口腔の疾病予防、健康の保持増進、リハビリテーションにより、話すことや食べることを可能とし、QOLの向上をめざした科学であり技術」と考えています。具体的には、健診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉・頬部のマッサージ、食事の介護、口臭の除去、口腔乾燥予防などがあります。

う蝕(虫歯)や歯周病は細菌感染症と言われており、う蝕や歯周病の予防として日々の口腔ケアが重要であることは言うまでもありません。 それに加えて最近の研究では、口腔内細菌は脳出血・誤嚥性肺炎・感染性心内膜炎・糖尿病などの全身疾患に深く関わっていることが分かって来ており、ますます口腔ケアの重要性が高まって来ています。

当院は総合病院であり、また地域がん診療連携拠点病院であるため、悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患、内分泌・代謝疾患、呼吸器疾患等、これらの疾患に罹られている患者さんに対し、多職種が連携して治療に当たっております。当科では、口腔機能および口腔衛生状態を総合的に判断し、専門的口腔ケアを行い改善することで、主疾患の治療をサポートしております。

1. 手術前後の口腔ケア
  目的:

口腔内が不潔であった場合、口腔内の創部が感染し、治癒不全を引き起こす可能性があります。また、全身麻酔下で手術を行なう場合、挿管チューブ(人工呼吸の管)を伝って口腔内細菌が肺に入り、肺炎を引き起こす可能性があります。これらのことを防ぐために、術前術後に口腔ケアを行ないます。

  方法:

口腔外科手術を行なう患者さんには、前日にスケーリング(機械を使った歯石の除去)などの口腔ケアを行なっています。術後にはそれぞれの患者さん毎に、適切な口腔衛生指導を行ないます。また、当院呼吸器外科と連携し、肺の手術を行なう患者さんには術前に当科で口腔ケアを行なっています。

2. 放射線治療前後の口腔ケア
  目的:

口腔癌に対して放射線治療を行なっている患者さんは、手術の瘢痕による舌の運動障害および、唾液腺障害による唾液腺分泌能低下で口腔内に汚れが残りやすいことが多いです。それに加えて、放射線性の口内炎や口角炎、骨髄炎などを併発し、疼痛および開口障害を生じることが多く、口腔ケアが困難となることが多いため、より専門的な口腔ケアが必要です。

  方法:

まず、放射線治療開始前に歯科健診を行ない、口腔内の状態を把握・改善を行ないます。抜歯が必要な歯は前もって抜歯を行ないます。ケア時に、腫瘍部分には触れないよう注意して行ないます。放射線治療開始後には、口腔ケア時の疼痛を抑えるために保湿剤などにて粘膜保護を行ない、接触痛が強ければ氷などにより冷却を行なったり、キシロカインゼリーなどの局所麻酔薬を併用します。その後でスポンジブラシにて優しく清拭を行ないます。なお、唾液腺分泌能低下によるう蝕・歯周病の悪化にも注意して経過観察を行ないます。

3. 化学療法前後の口腔ケア
  目的:

化学療法で使われる抗がん剤の副作用で粘膜に障害が現れる場合や、骨髄抑制に伴う歯肉炎・歯周病の悪化、その他感染症が生じる場合があります。感染が生じやすい状態であるため、より口腔内を清潔に保つ必要があります。

  方法:

まず、化学療法開始前には歯科検診を行い、感染源となりやすい歯の治療を行ないます。化学療法開始後には、全身的な状態、血液検査のデータ(白血球や血小板の値)に常に注意を払い、可能な限り口腔ケアを行ないます。吐き気などで気分のすぐれない患者さんに対しては無理のない方法でケアを行ないます。

4. 緩和医療における口腔ケア
  目的:

終末期には全身状態の悪化に、セルフケア困難な状況が加わり、さまざまな口腔トラブルが生じやすく、重症化する場合があります。具体的には、口腔乾燥、口腔カンジダ症、口腔粘膜、味覚障害、口臭、口内不衛生・舌苔、義歯の不具合、う蝕や歯周病の悪化、口内出血が挙げられます。これらは、口渇や口の痛み、口腔内違和感を伴うため、会話がしづらい、食事が楽しめない等の苦痛を生じます。口腔内を清潔に保ち、口腔機能を維持することは、最期まで人間らしく生きる喜びや楽しみを支援します。

  方法:

当院では緩和ケア病棟と連携し、早期から口腔ケアの介入を行っております。
歯科医師が、週に1回、定期的に緩和ケア病棟をラウンドしており、口腔内のチェックおよび口腔ケアを患者さんの希望や体調に合わせて行っています。


これらの他にも、人工呼吸器を装着している患者さんへの口腔ケア、脳血管障害などにより片麻痺や摂食嚥下障害のある患者さんへの口腔ケアなど、他科と連携して多種多様の疾患別に対応いたします。
なお、口腔ケアを行なうにあたっては日本口腔ケア学会誌などの参考文献を幅広く取り入れ、エビデンス(研究で効果が証明されている)のある口腔ケアの実施・アドバイスなどを行なっていくよう、心がけています。



◆研究費
平成29年 公益財団法人 笹川記念保健協力財団 研究助成 (研究代表者:下郷麻衣子)
「終末期がん患者の生命予後予測法の開発に関する研究 ー非侵襲的で簡便な口腔粘膜の客観的評価を用いてー」

睡眠時無呼吸症候群

1時間に無呼吸(10秒以上の呼吸停止)と低呼吸(10秒以上の換気量50%以上低下)の合計(無呼吸低呼吸指数)が5回以上あれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
ほとんどの患者さんには大きないびきが認められます。睡眠中の呼吸停止によって目が覚め、不十分な睡眠のため昼間の眠気が強いなどの症状があります。
また、患者さんの多くは生活習慣病である糖尿病、肥満、高血圧症、高脂血症、循環器疾患を合併しているため、睡眠時無呼吸症候群が生活習慣病の増悪因子となることが指摘されています。さらに、集中力や思考力の低下、居眠り運転による交通事故を誘発することがあります。
最も多い原因は、筋肉が睡眠中に緩んで舌が後ろに下がって気道を狭くするか、塞いでしまうことです。こういう状態は小さい下顎、大きい舌、体重増加、仰向けに寝ることによって起こりやすくなります(文献1,12,14,27,28)。睡眠呼吸障害のひとつの上気道抵抗症候群では同じように眠気が強いですが、無呼吸低呼吸指数が1時間あたり5未満で、いびきをかかないこともあり、若くてやせている女性にもみられるという特徴があります。
日本人の無呼吸症候群の患者さんの特徴として、顎顔面形態から肥満のみられない方が多いことがあげられます。最近、わが国の40歳代男性で20%以上、50歳代男性では30%以上が本疾患に罹患していることが報告され、以前の推測よりはるかに多くの患者さんがいることが明らかになりました。
診断には一泊して検査する方法と、測定用の装置を自宅に持ち帰り、自分で睡眠時に測定する方法があります。以下に簡単な自己診断の目安を記載します。当てはまる方は、日本睡眠学会の認定機関あるいは大きな病院の呼吸器科や耳鼻咽喉科に睡眠検査が可能かを確認してから受診されることをお勧めします。

1. 眠気

昼間の眠気は睡眠時無呼吸症候群の自覚症状のなかで最も分かりやすい症状のひとつです。しかし、眠気を起こす病気は睡眠時無呼吸症候群以外にもあり、また重症の睡眠時無呼吸症候群の方でもあまり眠気のない方もおられます。眠気をチェックするために簡単な方法としてよく用いられるESS(Epworth Sleepiness Scale)は以下の通りです。次の八つの状況で眠ってしまうかを0-3までの4段階でお答えください。合計点が10点以下で正常、12点以上は中等症傾眠、16点以上は高度傾眠とされます。

あなたの最近の生活の中で、次のような状況になると、眠ってしまうかどうかを下の数字でお答えください。質問のような状況になったことがなくても、その状況になればどうなるかを想像してお答えください。

    0=眠ってしまうことはない
    1=時に眠ってしまう(軽度)
    2=しばしば眠ってしまう(中等度)
    3=ほとんど眠ってしまう(高度)
     
  1. 座って読書中
  2. テレビを見ているとき
  3. 会議、劇場などで積極的に発言などをせずに座っているとき
  4. 乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき
  5. 午後に横になったとすれば、そのとき
  6. 座って人と話をしているとき
  7. アルコールを飲まずに昼食をとった後静かに座っているとき
  8. 自動車を運転中に信号や交通渋滞などにより数分間止まったとき

2. 肥満

日本の睡眠時無呼吸症侯群の患者さんの約70%が肥満を伴っています。BMI(Body Mass Index)は体重(Kg)を身長(cm)の二乗で割った値で、BMIが25以上であると肥満と診断されます。たとえば、身長170cmで、体重が80kgの方は、BMI は80÷1.7÷1.7=27.68..となります。

以下のような咬合と顎の特徴がある方は、肥満がなくても睡眠時無呼吸症候群を起こすことがあります。

  ●咬合
 

下の前歯の先は上の前歯の先より、上下の歯を咬みあわせたとき、普通2‐3mm内側に入っています。それが5mm以上内側に入っていたり、咬み合わせると下の前歯が見えないほど深い咬み合わせの場合、下顎と舌が後へ押しつけられることになり、気道が狭くなって無呼吸を起こしやすくなります。

  ●顎の形
 

顔を横から見たとき、鼻の先と下顎の先を結ぶ線、顎の先と顎の下を結ぶ線の角度が大きいほど、無呼吸を起こしやすくなります。下顎が上顎より大きく後に下がっている方、二重顎の方はこの角度が大きくなります。



◆治療
当科は日本睡眠学会の認定機関です。口腔内装置(マウスピース)による治療を中心に、口腔外科的手術療法などを行っています。睡眠検査の結果、睡眠時無呼吸症候群(無呼吸低呼吸指数が5以上)と確定診断された患者さんに対しては、口腔内装置治療が保険適用されます(3割負担で約1万円ほどです。)。無呼吸低呼吸指数が5未満の上気道抵抗症候群やいびきのみの患者さんは保険が適応されず、自費となります。

図1.睡眠時無呼吸治療用の口腔内装置

口腔内装置は下顎を前突させ上気道を拡大し、さらに舌筋の活性化によって上気道の解放を維持し、無呼吸の発生を防止します(参考文献1-3,5,7)。この口腔内装置は、上下顎の型取りで得られた模型上で下顎の最大前突量の60-80%になるように作製します(図1)。
当科の担当医はこの方法を世界で初めて開発したドイツのマイヤー・エバート(Meier-Ewert)教授のもとへ2年間(1992-1994)留学し、これまで二千数百例の経験があります(参考文献1-29)。マスクで空気を送るCPAP(シーパップ:continuous positive airway pressure)療法と比較して費用が安く、違和感が少なく、携帯および使用が容易などの利点があり、患者さんの満足度が高いことが多いです(参考文献1,16)。
下顎が極端に小さい無呼吸症候群の患者さんには、原因療法として顎矯正手術が可能です(参考文献25,27-29)。



◆研究
当科では睡眠時無呼吸症候群、いびき、上気道抵抗症候群などの睡眠呼吸障害における上気道、軟口蓋の知覚、顎運動や舌運動の電気生理学的研究、顎顔面の形態学的研究、咀嚼、食習慣、歯周病、高血圧、肥満、メタボリック症候群(代謝症候群)との関連、さらに口腔内装置やCPAPの改良などの臨床的研究を行っています(参考文献27,28)。
口腔内装置療法によって血圧が有意に下がることが確認されました(参考文献21,22)。口腔内装置治療による睡眠時無呼吸症候群に伴う生活習慣病の病態変化を他科と連携し、これら疾患の関連性を解明することが今後の大きな臨床的課題です(参考文献27-29)。肥満と高血圧を伴う睡眠時無呼吸症候群の患者さんに対する漢方薬(防風通聖散)の効果に関する研究として、陳 和夫京大教授を研究代表者とする多施設共同研究の分担研究者として他の多くの機関とともに研究に参加しました。
これまでは治療のみで予防には全く目が向けられていませんでしたが、睡眠時無呼吸症候群の2大要因である肥満と小顎は咀嚼と密接な関連があり、幼少期からの食育あるいは適切な歯科矯正治療によって予防できる可能性があります(参考文献27-29)。食育と顎の発育と無呼吸症候群の発症に関する長期的な研究を行っています。睡眠時無呼吸症候群に関するさらに詳しい内容をご覧になりたい方はこちらをクリックしてください。                       (https://sites.google.com/site/sleepapneasyndrome/) 



◆参考文献

 
  1. Yoshida K. Prosthetic therapy for sleep apnea syndrome. Journal of Prosthetic Dentistry, 72: 296-302, 1994.
  2. Yoshida K. Kau- und Zungenmuskelaktivität während des Schlafens bei Patienten mit Schlafapnoesyndrom. In: Struppler A (eds): Motodiagnostik-Mototherapie II, Universitätsverlag, Jena, 161-164, 1994.
  3. Yoshida K. Masticatory and tongue muscle activity during sleep in the patients with sleep apnea syndrome. In: Morimoto T (eds): Brain and Oral Functions, Elsevier, 569-573, 1995.
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  6. Thumm J, Siebert GK, Mylonas T, Yoshida K, Meier-Ewert K. Langzeitakzeptanz von Esmarch-Schiene bei Patienten mit obstruktiven Schlaf-Apnoe-Syndrom. Zahnärztliche Welt, 104: 458-462, 1995.
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  9. Yoshida K. Prothetische Therapie des Schlafapnoesyndroms: Wirksamkeit für obstruktiven, gemischten und zentralen Apnoen. Acta Med Dent Helv, 3: 75-78, 1998.
  10. Yoshida K. Einfluß der Esmarch-Schiene für Behandlung des Schlafapnoesyndroms auf die Kau- und Zungenmuskelaktivität. Nervenarzt, 69: 666-670, 1998.
  11. Yoshida K. Elastics retracted oral appliance to treat sleep apnea in mentally impared patients and patients with neuromuscular disabilities. Journal of Prosthetic Dentistry, 81: 196-201, 1999.
  12. Yoshida K. Der Zusammenhang zwischen der Schlaflage und dem Behandlungserfolg durch die Esmarch-Schiene beim Schlafapnoesyndroms. Fortschritte der Neurologie Psychiatrie, 68: 93-96, 2000.
  13. Yoshida K. Effects of a mandibular advancement device for the treatment of sleep apnea syndrome and snoring on respiratory function and sleep quality. Journal of Craniomandibular Practice, 18: 98-105, 2000.
  14. Yoshida K. Influence of sleep posture on response to oral appliance therapy for sleep apnea syndrome. Sleep, 24: 538-544, 2001.
  15. Yoshida K, Sakamoto K, Takagi A, Iizuka T. Three-piece oral appliance with Herbst attachments for persistent vegetative state patient with sleep-disordered breathing. International Journal of Prosthodontics, 16, 350-354, 2003.
  16. 吉田和也. 口腔内装置の治療効果. 塩見利明, 菊池 哲編, 睡眠医歯学の臨床. 第1版, ヒョーロン・パブリッシャーズ, 東京, 150-157, 2004.
  17. 吉田和也. 睡眠時無呼吸症候群. 堂前尚親, 飯塚忠彦, 今井久夫編, 歯科と内科との接点を求めて. 第1版, 永末書店, 京都, 156-159, 2004.
  18. 吉田和也. 顎関節症と睡眠. 飯塚忠彦, 井上 宏編, 顎関節症診断・治療マニュアル. 第1版, 永末書店, 京都, 186-193, 2004.
  19. 吉田和也. 塩見利明, 山田史郎編, 保険診療における無呼吸症候群の診断と治療. 第1版, 医歯薬出版, 東京, 30-47, 2004.
  20. 吉田和也, 飯塚忠彦. 睡眠時無呼吸症候群の歯科口腔外科的治療法. 上田 実, 香月 武, 野間弘康ほか編, 口腔外科ハンドマニュアル ‘05. 第1版, クインテッセンス出版, 東京, 27-39, 2005.
  21. Yoshida K. Effect of oral appliance therapy for sleep apnea syndrome on blood pressure. International Journal of Prosthodontics 19: 463-468, 2006.
  22. Yoshida K. Effect of oral appliance therapy for sleep apnea syndrome on blood pressure. Proceedings of the1st Congress of the World Association of Sleep Medicine, 115-118, 2006.
  23. 吉田和也. 睡眠時無呼吸症候群の治療と予後 3. 口腔内装置. Mebio, 24: 124-138, 2007.
  24. 吉田和也. 口腔内装置(閉塞型に対して). 麻野井英次編, 睡眠時無呼吸症候群―循環器臨床に必要な知識. メジカルレビュー社, 東京, 225-232,2008. 
  25. 吉田和也. 口腔内装置治療の有効性と限界および顎矯正手術の展開. 最新医学睡眠時無呼吸症候群特集号, 64: 76-88, 2009.
  26. 吉田和也. 睡眠に関する口腔衛生. 本田和樹, 福田一彦, 塩見利明ほか編, 睡眠学, 朝倉書店, 東京, 644-648, 2009.
  27. Yoshida K. Sleep apnea syndrome from clinical and neurophysiological aspects in the stomatognathic system. Nova Science Publishers, New York, 1-123, 2010.
  28. Yoshida K. Treatment and research of sleep apnea syndrome from clinical and neurophysiological aspects in the stomatognathic system. International Journal of Medical and Biological Frontiers. 17: 1-88, 2011.
  29. 吉田和也. 口腔内装置、口腔外科手術. Medicina, 48: 1042-1046, 2011.
  30. 吉田和也. 睡眠時無呼吸症候群の歯科口腔外科的治療法と今後の展望. 最新医学,32: 20, 2011.


◆科研費
 
  • 平成7~10年 科学研究費補助金(特別研究員奨励費) (研究代表者:吉田和也)
    「睡眠時無呼吸の発現に咀嚼筋、舌筋および下顎位がおよぼす影響と歯科的療法の適応症例の診断基準」
  • 平成17~18年 科学研究費補助金(基盤研究C)(研究代表者:吉田和也、分担研究者:陳和夫)
    「睡眠時無呼吸発生時のみ下顎前突させる人工筋肉駆動型口腔内装置の開発」
  • 平成19~21年 科学研究費補助金(基盤研究C)(研究代表者:吉田和也、分担研究者:陳和夫)
    「睡眠時無呼吸発生時のみ下顎前突させ閉塞が消失しなければ陽圧送気する治療装置の開発」
  • 平成22~24年 厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)(研究代表者:陳 和夫、分担研究者:吉田和也、他)
    「肥満残存高血圧合併睡眠時無呼吸患者に対する防風通聖散及び大柴胡湯の治療効果の比較と病態生理の解明」
  • 平成24~26年 科学研究費補助金(基盤研究C)(研究代表者:吉田和也)
    「睡眠時無呼吸症候群患者の食習慣の特徴および咀嚼指導が症状へ及ぼす影響」

顎口腔領域の不随意運動

口と顎はものを食べたり、咬んだり、話したり、飲み込んだり、いろいろな機能を行うため重要な役割をしています。しかし、顎と口を動かしている筋肉が何らかの原因で緊張しすぎてしまうと様々な障害が生じてきます。ものがうまく咬めない(咀嚼障害)、口が開かない(開口障害)、顎、口、舌、唇が無意識に動く(不随意運動)、筋肉が痛い、口が閉じられない(閉口障害)、顎がずれる(顎偏位)、飲み込みにくい(嚥下障害)、うまくしゃべれない(構音障害)、などの症状が出ます。このような症状を起こす病態は、口と顎のジストニア(oromandibular dystonia:顎口腔ジストニア、口顎部ジストニア、口・下顎ジストニア)、顎関節症、ジスキネジア、ブラキシズム、咀嚼筋腱・腱膜過形成症などがあります。これらのうちどれか一つの場合もありますが、二つ以上が同時にみられることもあります。不随意運動の原因はまだはっきりしませんが、精神科の薬を長期内服している患者さんに生じることがあり、歯科治療(義歯作製、抜歯)あるいは外傷後に症状が現れてくることがしばしば認められます。

 
  • ジストニア(英語dystonia:ジストニア、または仏語dystonie:ジストニーと読まれます。緊張(tonia)の異常(dys)を意味します。)とは、持続的な筋肉の緊張のために無意識にねじれたり、あるいは繰り返しのある運動や異常な姿勢を生じる病態であり、首、まぶた、顔面、口などにみられます。顎口腔ジストニアには無意識に口を閉じてしまう閉口ジストニア、開口してしまう開口ジストニア、舌が前に出てしまう舌前突ジストニア、下顎が横へずれる顎偏位ジストニア、下顎が前へ出る顎前突ジストニアなどがあります(参考文献1,5-10,14)。顎口腔ジストニアは顎関節疾患あるいは心因性の疾患と誤診されやすく、確定診断までには長年にわたって多数の病院や診療科を受診する方も少なくありません。
  • ジスキネジア(dyskinesia:運動(kinesia)の異常(dys)を意味します。)は舌、唇などにみられるペロペロとくり返す不随意運動です。ジストニアが主に筋緊張の異常を示すのに対し、ジスキネジアは運動の異常を示します。ご高齢の方や精神科の薬を長期内服された方にみられます。舌や唇がジスキネジアによって繰り返し、歯にすれて、傷となることがあります。
  • ブラキシズムは就寝時や何か精密作業に熱中しているとき、あるいは緊張しているときに、無意識に起こる歯ぎしりや強い噛みしめなどの無意識の口腔習癖を総称して呼ばれます。強度のブラキシズムが長期間に及ぶと、咀嚼筋の腱が発達し、口が開けられなくなる咀嚼筋腱・腱膜過形成症となることがあります。

当科のように顎口腔領域の不随意運動を専門に診察している科は全国的にも例がなく、不随意運動の症例を多くの病院より紹介していただいています。

図2.不随意収縮を起こす可能性のある筋肉


◆治療

十分に病歴を伺い、症状と検査から慎重に確定診断します。治療として最初は内服薬を処方し、かなりの方の症状が軽快します。症状が改善しなければ、緊張した筋肉に局所麻酔薬を注射するMAB(エムエービー:muscle afferent block)療法やボツリヌス毒素の筋注による治療(ボツリヌス療法)を行います。 当科では「口腔顎顔面領域の筋過緊張に対するmuscle afferent block (MAB)療法」および「口腔顎顔面領域の筋過緊張に対するボツリヌス療法」を厚生労働省の先進医療に申請を予定しております。申請が承認されれば、MAB療法とボツリヌス療法以外の検査、処置はすべて保険診療として診察可能です。



・MAB(muscle afferent block)療法
MAB療法は局所麻酔薬(0.5%キシロカイン)を筋肉内に注射して、筋の緊張を調節する感覚入力を減少させて、筋の緊張緩和を図る治療法です(参考文献1,2,5,6,8-10,14)。週1-2回程度の頻度で、数回から10回程度、この治療を繰り返して、効果を観察します。治療の効果が認められる症例では、治療の直後から改善しますが、最初は持続時間が短いです。有効な例では、次第に効果の持続時間が延長します。


・ボツリヌス療法
ボツリヌス毒素は神経が筋肉に接している箇所(神経筋接合部)に作用し、筋緊張を緩和します(参考文献10,12,14)。ボツリヌス毒素の注射による治療法はまぶた、首などの局所性ジストニアの標準的な治療法として世界80カ国以上で承認されています。従来の治療法では効果がなかった強度の筋緊張を和らげることによって、過緊張に伴った開口障害、疼痛、構音障害、咀嚼障害を改善させることが可能です。効果は注射後2,3日後から現れます。効果は通常最低3~4ヵ月持続し、その後消失しますが、患者さんによっては効果がずっと続くこともあります。経過によって投与を繰り返す必要があります。ボツリヌス療法は注射する部位と筋肉によって保険が適応されず、自費となる場合があります。平成27-29年度科研費・基盤C「インプラント埋入用装置を応用した顎口腔ジストニアへのボツリヌス毒素注射方法の確立」(研究代表者:吉田和也)が採択され、インプラント埋入用CAD/CAM装置を応用した顎口腔ジストニアへのボツリヌス毒素注射法に取り組んでいます。これは患者さんの顎の石膏模型をスキャンし、CTデータとともにコンピューター上で重ね合わせ、筋内の最も理想的な位置に注射針を誘導できる口腔内装置を作製し、ボツリヌス治療を行う技術です。非常に良好な結果が出ており、先進医療に申請する予定です。この装置を当科で作成すれば、紹介元の病院で継続治療が可能となります。
インプラント

図4. インプト埋入用CAD/CAM装置を応用した開口ジストニアへのボツリヌス毒素注射法



・手術
口を閉じる筋肉が極度に緊張した閉口ジストニアやブラキシズムなどで症状が長期にわたる場合には、咀嚼筋腱・腱膜過形成症や筋突起過長症、咬筋肥大症を誘発することがあり、筋突起切離術などの口腔外科的手術療法が必要となります(参考文献10,13,14,19)。


・その他の不随意運動の治療
口や唇がペロペロと動くジスキネジアに対しては内服薬による治療が中心となります(参考文献14)。ブラキシズムに対しては一般的にスプリントや内服薬で治療しますが、当科ではこれらの従来の方法で効果のない方にボツリヌス療法も行っています。

口や顎の筋肉に無意識に力が入ってしまったり、動いてしまうという症状がある方は原因がジストニアである可能性があります。次の質問にお答え下さい。

口と顎のジストニア セルフチェック
1. (  )口と顎の筋肉に無意識に力が入って動いてしまう。
2. (  )力が入る場所と方向(口を閉じる、開ける、舌が前に出るなど)はいつも同じ。
3. (  )一定の運動(話す、食べる、口を開けるなど)のときだけ症状が出る。
4. (  )何か(ガム、飴、マウスピースなど)口の中に入っていると症状が楽になる。
5. (  )寝ているときには症状はまったくない。
6. (  )朝起きたときは症状がなく、あるいは軽く、その後次第に症状が出てくる。
7. (  )現在、精神科の薬を飲んでいる。あるいは以前飲んでいた。
8. (  )緊張あるいはリラックスすることによって症状の程度が変化する。
9. (  )歯や入歯の治療後、または歯や顎に怪我をした後に症状が出てきた。
10.(  )他のジストニア(痙性斜頸、眼瞼痙攣、書痙など)の治療を受けている。

2-3あてはまれば、口と顎のジストニアの可能性があります。
4-5あてはまれば、可能性が高いです。
6以上あてはまれば、可能性がきわめて高いです。

診断や治療を希望される方は、当科を受診していただく必要があります。遠方で受診困難な方、さらに詳しい内容をご覧になりたい方はこちらをクリックしてください。                   (https://sites.google.com/site/oromadibulardystonia/



◆研究

顎口腔領域のジストニア、ジスキネジアなどの運動異常症、その他ブラキシズム、咬筋肥大症、筋突起過長症、咀嚼筋腱膜過形成症、顎関節症など咀嚼筋の緊張異常に起因する疾患の臨床的研究を行っています(参考文献1-17)。特に、脳波(運動関連脳電位、随伴陰性変動、体性感覚誘発電位)、筋電図(表面筋電図、針筋電図、誘発筋電図)、脳磁図(運動関連脳磁場、体性感覚誘発脳磁場)、近赤外線スペクトロスコピーその他の非侵襲的脳機能測定装置を用いて顎口腔領域の電気生理学的研究を行っています(参考文献3,4,7,9-15)。下顎、咀嚼、舌運動あるいは口唇、舌、歯肉、口蓋における知覚が中枢でどのように調節され、顎口腔領域の疾患においてどのような変化がみられるのかを研究しています。たとえば、運動準備のための大脳基底核、補足運動野の活動と考えられる運動関連脳電位は閉口、開口、右側方、左側方運動の順に振幅が高いこと(参考文献3,4,7)、顎口腔ジストニアでは低下することを報告しています(参考文献7,9)。また、脳磁計を用いて軟口蓋刺激による反応を体性感覚脳磁場として記録し、両側の二次感覚野に反応を認めること(参考文献11)、脳磁計を用いて舌の知覚についても報告しています(参考文献15,17)。



◆参考文献

 
  1. Yoshida K, Kaji R, et al. Muscle afferent block for the treatment of oromandibular dystonia. Movement Disorders, 13: 699-705, 1998.
  2. Yoshida K, Kaji R, et al. Muskelafferenzblockierung mittels lokaler Injektion von Lidocain bei Kaumuskelspasmus. Deutsche Zahnärztliche Zeitschrift, 53: 197-199, 1998.
  3. Yoshida K, Kaji R, et al. Cortical distribution of Bereitschaftspotential and negative slope potential preceding mouth opening movements in human subjects.
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  4. Yoshida K, Kaji R, et al. Cortical potentials associated with voluntary mandibular movements. Journal of Dental Research, 79: 1514-1518, 2000.
  5. 吉田和也, 梶 龍兒, ほか. 顎口腔ジストニア(oromandibular dystonia)に対するMuscle afferent block(MAB)療法. 日本口腔外科学会雑誌, 46: 563-571, 2000.
  6. Yoshida K, Kaji R, et al. Factors influencing the therapeutic effect of muscle afferent block for oromandibular dystonia: implications their distinct pathophysiology. International Journal of Oral Maxillofacial Surgery, 31, 499-505, 2002.
  7. Yoshida K, Kaji R, et al. Movement-related cortical potentials prior to jaw excursions in patients with oromandibular dystonia. Movement Disorders 18, 94-100, 2003.
  8. Yoshida K. Muskelafferentzblockierung in der Behandlung der oromandibulären Dystonie -Unterschiedliche Wirkung auf Kau- und Zungenmuskulatur-. Nervenarzt, 74: 516-522, 2003.
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  10. 吉田和也. 顎関節症と睡眠. 飯塚忠彦, 井上 宏編, 顎関節症診断・治療マニュアル. 第1版, 永末書店, 京都, 186-193, 2004.
  11. Yoshida K, Maezawa H, et al. Somatosensory evoked magnetic fields to air-puff stimulation on the soft palate. Neuroscience Research, 2006 55, 116-122, 2006.
  12. Yoshida K, Iizuka T. Botulinum toxin treatment for upper airway collapse resulting from temporomandibular joint dislocation due to jaw-opening dystonia. Journal of Craniomandibular Practice, 24 217-222, 2006.
  13. Yoshida K. Coronoidotomy as treatment for trismus due to jaw-closing oromandibular dystonia. Movement Disorders, 21, 1028-1031, 2006.
  14. 宮脇正一, 吉田和也. 顎顔面領域の不随意運動. 高戸 毅, 天笠光男,ほか編, 口と歯の事典, 朝倉書店, 東京, 282-296, 2008.
  15. Maezawa H, Yoshida K, et al. Somatosensory evoked magnetic fields following the tongue stimulation using needle electrodes. Neuroscience Research, 62, 131-139, 2008.
  16. 前澤仁志, 松橋眞生, 吉田和也ほか. 脳磁図計測における歯科用金属に由来するアーチファクト. 認知神経科学, 11: 258-267, 2010.
  17. Maezawa H, Yoshida K, et al. Evaluation of tongue sensory disturbance by somatosensory evoked magnetic fields following tongue stimulation. Neuroscience Research , 71, 244-250, 2011.
  18. Maezawa H, Tojyo I, Yoshida K, Fujita S. Recovery of impaired somatosensory evoked fields induced by tongue stimulation after improvement of tongue sensory deficits. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery. 2016
  19. Yoshida K. Surgical intervention for oromandibular dystonia-related limited mouth opening: long-term follow-up. Journal of Craniomaxillofacial Surgery, 45, 56-62, 2017.
  20. Yoshida K. How do I inject botulinum toxin into the lateral and medial pterygoid muscles? Mov Disord Clin Pract 2017 doi:10.1002/mdc3.12460.
  21. 吉田和也. 歯ぎしりにボツリヌス治療は有効か?. アンチ・エイジング医学─日本抗加齢医学会雑誌, 2017.


◆科研費

平成27~29年 科学研究費補助金(基盤研究C)(研究代表者:吉田和也)
「インプラント埋入用装置を応用した顎口腔ジストニアへのボツリヌス毒素注射方法の確立」

インプラント治療

失ってしまった自分の歯の替わりに、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を作製して、もう一度自分の歯のように機能させる治療法です。歯科用インプラント製品は数多くのメーカーが様々なシステムの製品を発売しています。現在、当科ではノーベルバイオケア社の製品を第一選択として使用しています。統計的には10年残存率(10年間口腔内で機能する割合)は90%以上です。

図4. 歯科用インプラントの構造


◆歯科用インプラントの構造

 
  1. 歯根部(インプラント体)
    直接、顎の骨の中に埋入する部分で、チタン製のものが主流です。本来の歯根に似た形態をしています。
  2. 人工歯(上部構造体)
    人工歯の部分は、セラミック、あるいはハイブリッドセラミックと呼ばれる材料を使用し、可能な限り審美的な回復に努めます。
  3. 連結部(アバットメント)
    インプラント体と上部構造を連結するための装置です。

通常、上記の3つの部分から成り立っているのが一般的です。



◆インプラント治療の概要

診査・診断・治療計画の立案
 
1次手術(インプラントの埋入手術)
 
2次手術(連結部の形成)
 
仮歯の作製、もしくは最終補綴物作成開始
 
最終補綴物の完成
 
定期健診


◆治療期間

1次手術から2次手術までの期間は、手術の部位や骨の質により様々ですが、下顎で1.5ヶ月から3ヶ月程度、上顎で3ヶ月から6ヶ月程度必要です。この期間はインプラント治療において大変重要な治癒期間です。骨の中に埋め込まれたインプラントと骨を強固に結合させるために手術部位の安静を保たねばなりません。そのため、全体の治療期間は比較的長く、おおよそ6ヶ月から1年と考えていただくのがいいと思います。



◆治療費用(平成23年12月現在の主要項目)

初診検査診断料(CT、模型作製、分析)
インプラント手術 1次手術(1歯あたり)
インプラント手術 2次手術(1歯あたり)
骨造成手術
型取り、アバットメント、仮歯
セラミック上部構造(1歯あたり
110,000円
129,600円
10,800円
75,000~230,000円
50,000~80,000円
129,600円


治療期間、治療費用は各ケースで違いが生じますが、概ね、歯を1本作るのに6ヶ月間かかって、40万円前後の費用になると考えていいかと思います。2本ならば40×2で80万円前後となります。各ケースで多少の費用の増減は伴います。 

一言でインプラントと言いましても、患者さんの年齢や健康状態、口腔内の状態などにより、治療の方法や内容が異なります。詳しくは担当医と相談の上、治療を進める必要があります。



◆研究

歯周病や虫歯による一般的な歯の欠損の他に、外傷や腫瘍の摘出などによる歯と顎の欠損のインプラント治療に関する臨床的研究を行なっています(参考文献3,5)歯と骨の間には歯根膜というクッションのような組織があり、その中に歯根膜受容器と呼ばれるセンサーのような器官があります。この受容器からの情報によって咀嚼運動や咬合力など咀嚼に重要な様々な機能が反射的に調節されています。インプラントの場合、歯根膜がありませんが、多くの患者さんは次第に慣れて問題なく咀嚼が可能となります。しかし、中には咬合力の調整がうまくいかず、過剰な力が働いてしまい、インプラントが何度も破折してしまう方もおられます。インプラント完成後、どのように咀嚼運動や咬合力が調整されていくかを神経生理学的に研究してきました(参考文献1,2,4,6)。



◆参考文献

 
  1. Yoshida K. Untersuchung zum Entlastungsreflex von Kaumuskeln während des Zerbeißens von Nahrung. Deutsche Zahnärztliche Zeitschrift, 48: 588-590, 1993.
  2. Yoshida K. Masticatory muscle responses associated with unloading of biting force during food crushing. Journal of Oral Rehabilitation, 25: 830-837, 1998.
  3. 吉田和也. 硬口蓋圧迫挙上術とインプラントを用いた歯槽堤高度吸収症例. 日本補綴歯科学会雑誌, 47: 856-857, 2003.
  4. Miyamoto I, Yoshida K, et al. Rehabilitation with dental prosthesis can increase cerebral regional blood volume. Clinical Oral Implants Research, 16, 723-727, 2005.
  5. Yoshida K, Takagi A, et al. Modified Epitec System abutment for magnetic retention of orbital prostheses. Journal of Prosthodontics, 17, 219-222, 2008.
  6. Miyamoto I, Yoshida K, et al. Shortened dental arch and cerebral regional blood volume –an experimental study with optical topography-. Journal of Craniomandibular Practice, 27, 94-100, 2009.


◆科研費
  平成7~8年度 奨励研究(A)(研究代表者:吉田和也)
「歯科インプラントからの求心性情報が咀嚼筋反射に及ぼす影響の神経生理学的研究」

顎顔面補綴治療

顎顔面補綴治療は顎顔面領域の腫瘍、外傷、炎症、先天奇形などにより顔の一部の欠損を生じ、見た目が気になるために元の疾患が治癒しても精神的、審美的に社会復帰が困難な患者さんに対して行なわれます。特に再建手術の適応とならない場合や患者さんが手術を希望しない場合に適応となります。
顎顔面領域の悪性腫瘍および他の疾患の治療成績が向上するに伴い、術後の顎顔面の欠損が残っている患者さんが増加しています。当院耳鼻咽喉科、頭頸部外科、形成外科の協力を得て、顎顔面領域の欠損を伴った症例を紹介いただいています。日本補綴歯科学会と日本口腔外科学会の認定機関である当科では、歯科的技術を発揮できる重要な分野であると考えています。



◆治療
この治療法は、顔、顎あるいは口の欠損を取り外し可能な修復物で補うことと、それに伴う審美性や機能性の改善のために行われるものです。レントゲンやCTを撮影し、欠損部とその周囲の粘膜、皮膚、筋肉などの軟組織、歯や骨などの硬組織の状態を診断します。欠損部位と周囲組織の状態、全身状態から維持方法を決定します。維持のためにはインプラント手術をして土台を作り、補綴物を固定する方法が最も確実です。インプラントが可能な場合は、ノーベルバイオケア社のインプラントを用いてインプラント一次、二次手術を行います。欠損部の型取りを行い、石膏模型上でワックスで欠損部の形態を再現し、顔面補綴用のシリコンで置き換えて完成です。



◆研究
当科では顎顔面補綴治療に関する臨床的研究や生体材料に関する研究を行っています(参考文献1-3)。さらに、ロボット開発の企業および大学工学部と連携して、最新のロボット工学を応用した健側眼と同期して瞬目、眼球運動が可能な動的顔面補綴の開発に取り組んでいます。これらの技術は身体の他部位の欠損にも応用可能であり、適応範囲を広げることが今後の課題と考えています。顎顔面補綴治療による咀嚼、嚥下、発音、審美性などの機能回復を客観的に評価するために咀嚼筋筋電図、下顎運動記録、発音などを測定し、分析しています。光トポグラフィー(近赤外線スペクトロスコピー)を用いて顎顔面補綴装着による脳血液量の変化の測定など最新の客観的機能評価を応用し、より高度な機能回復やQOLの向上を目指しています。



◆参考文献

 
  1. Yoshida K, Bessho K, et al. Osteoinducing capability of recombinant human bone morphogenetic protein-2 in intramuscular and subcutaneous sites -an experimental study. Journal of Cranio- and Maxillofacial Surgery, 26: 112-115, 1998.
  2. Yoshida K, Bessho K,et al. Enhancement by recombinant human bone morphogenetic protein-2 of bone formation by means of porous hydroxyapatite in mandibular bone defects. Journal of Dental Research, 78: 1505-1510, 1999.
  3. Yoshida K, Takagi A, et al. Modified Epitec System abutment for magnetic retention of orbital prostheses. Journal of Prosthodontics, 17, 219-222, 2008.


◆科研費

 

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