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2014年5月17日開催 第15回 がん診療アップデート がんの予防・早期発見 開催レポート
  がん診療アップデート会場
 開講の挨拶
 細野 眞 先生の講演
 神戸 章 先生の講演
 堀内 哲也 先生の講演
 陰山 麻美子 先生の講演
 原 千晶さんの講演(1)
  原 千晶さんの講演(2)
 原 千晶さんの講演(3)
 閉講の挨拶
 
隂山 麻美子 先生の講演


「上手に食べてきちんと予防 ~「何を」じゃなくて「どうやって、どのくらい」~」 大阪南医療センター 管理栄養士 陰山 麻美子

私たちの体は毎日食べているものでできています。一日に3回食事を摂るとして一年間で365日と考えると1095回も食事を摂っていることになります。健康な体を作るためにも、がんを予防するためにも食生活はとても重要なファクターだと考えられます。今日は現時点でがんと食生活の因果関係が明らかになっているものについて予防の観点からお話ししたいと思っています。
がんと食生活の関係の中でも食塩および高塩分の摂取は胃がんの発生リスクを高めるのはほぼ確実だと言われています。そのためにも塩分の摂取量を抑えることは胃がんの予防に有効であり高血圧や循環器疾患のリスク減少にもつながります。では普段の食事をどうやって薄味で食べていけばいいのでしょうか。普段一日にどれぐらいの塩分を摂っているかご存じでしょうか。平成24年度の国民健康栄養調査において一日の食塩摂取量の平均は、男性で11.1g女性で9.1gだそうです。健康を維持するための塩分の一日の目標量は男性9.0g女性7.5gになります。すなわち健康を維持するだけの塩分量より約2g多く摂りすぎているということになります。ですので毎日のお食事の中であと2g塩分を少なくする工夫を意識して頂きたいと思います。普段の食事の食べ方を思い出して頂きたいのですが、先におかずを食べてしまって残ったご飯を漬け物やふりかけやお茶漬けのりを食べたり、もともと味がついている焼きそばとかカレーに味もみないで醤油をかけたりというような習慣はありませんか。減塩のポイントの1つ目は、かけなくても味がついているものには後から塩分を上乗せしないこと。出来合いの弁当や外食の場合はどうすればいいでしょうか。もともと塩分が高い漬け物や調味料がついている場合、それらを食べないようにするだけで1.5g程塩分を減らすことが出来ます。減塩のポイントの2つ目は塩分の高い物は残すようにすることです。

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大阪南医療センター 管理栄養士 陰山麻美子

私たちにとって馴染みのある調味料醤油ですが、あまり考えないで醤油差しからチャーっとかけるより、小皿にとって食べる方が塩分の摂りすぎが防止できます。出汁で薄めたり醤油をポン酢に変えたり減塩醤油にかえるだけでも小さじ一杯の塩分が半分の0.5gに抑えられます。主婦の方でしたらお料理をされるときに計量スプーンを使ってお醤油を入れたりしないかもしれないですが、改めて計量スプーンを使うことで調味料の使いすぎを防ぐことができます。減塩のポイントの3つ目、調味料は計量して使うことを意識してください。
栄養成分表示ってみたことはありますか。こちらの成分表示はエネルギーや三大栄養素の他に塩分量(ナトリウムの量)が記載されています。ナトリウム(g)は表示量に2.54を掛けると食塩相当量を求めることが出来ます。栄養成分表示を見て商品を選んだり、塩分が多かった場合は残す工夫をして表示を味方につけるようにしてみてください。

続けて、がんと食生活との関連では、野菜や果物の摂取不足は食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化器系がんや肺がんの発生リスクを高めるということが分かっています。予防にはたっぷりの野菜と適量の果物を摂る必要があります。野菜や果物にはビタミン・ミネラル・食物繊維やポリフェノールなど、がんの発生を抑える働きをする栄養が含まれています。どれぐらい摂ればよいのか、野菜の一日の目標摂取量は350g、果物は200gです。しかしながらこの量を一日に摂れているかというと、平成24年度の国民栄養調査の野菜摂取量を見てみると、大阪府はワースト3位で255gでした。全国平均は288.9gです。粉モン文化の影響もあるかもわかりませんが、単品で食事を済ませてしまっているとどうしても野菜の摂取量が少なくなってしまうことがあると思います。目標の350gを摂るために献立の工夫例をお知らせしたいと思います。片手に乗る野菜の量約70gを1サービングとして一日に5サービング摂ると350gになります。朝1サービング、昼2サービング、夜2サービングと果物をどこかでひとつ摂るようにしてみてください。食べ方は、生の方がビタミンやミネラルが崩れなくて良いのか、もしくは火を通した方がたくさんの量を食べられるのでその方が良いのか、と疑問を持っておられると思うのですが、毎日350gの野菜を続けて摂るためには冷たい物、温かい物とこだわるのではなく、季節や気分に合わせて美味しいと思える食事を楽しんでいろんな種類の野菜を摂ることを目標にしていただければと思います。

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最後に、食事のバランスについて考えてみたいと思います。免疫力を高めるための食事は体全体がそれぞれ役割を発揮できるように栄養素のバランスが大切になってきます。カロリーの摂りすぎは良くありませんがカロリーが低いからバランスが良いかと言えばそうとは限りません。高カロリーだけどバランスのよい場合もあります。カレーセットと単品のうどんを比べるとカレーの方が栄養素のバランスは良好です。カロリーを抑えればカレーセットでもバランスのよい食事になります。また、一日30品目という言葉はよく耳にされると思いますが、いろんな品数を食べることは良いことだと思いますが、やはり組み合わせが大事だと思います。バランスの良い食事を摂るためには働きの異なる栄養素を組み合わせる必要があります。力の元になる炭水化物、体の組織を作るタンパク質、体の調整をおこなうビタミン・ミネラルを組み合わせることです。そして1回の食事で摂る量は先程の手のひらの分量が目安になります。主食は片手に乗る量、主菜も片手に乗る量、野菜類は両手に乗る量を目安にしてください。一日のお食事では主食・主菜・副菜を揃えることによってバランスが整ってきます。

がんの予防にはいったい何が良いのでしょうか?と質問を受けることがありますが、残念ながらこれを食べたら大丈夫という食品はありません。彩りよくいろんな色の食品を少しずつ偏りなく食べることを心がけてください。また最近よく耳にします、乳酸菌や食物繊維を使って腸内細菌を整えることや魚の不飽和脂肪酸を使って摂る油の種類に気をつけること等が注目されていますが、やはり基本的なバランスを整えることを前提にしてこれらの食品を組み合わせると良いのではないでしょうか。

過剰な塩分摂取を控えるために減塩をしましょう。あと2g減らすように。
野菜や果物の摂取不足を防ぐために片手一杯の野菜料理を一日5サービングを目標に摂りましょう。
主食・主菜・副菜を揃えてバランスの良いお食事を彩りよく摂ることを心がけてください。
そして、何よりも食事の時間を楽しんで頂ければと思います。