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倫理審査委員会

倫理審査委員会 平成26年 2月12日(水)

申請者 消化器科医長 石田 博保
課 題

KRAS野生型の大腸癌肝限局転移に対するmFOLFOX6+ベバシズマブ療法とmFOLFOX6+セツキシマブ療法のランダム化第2相臨床試験

研究の概要

 肝臓に転移のある大腸がんに対する治療法には、手術のような限局した場所への治療と、化学療法(抗がん剤治療)のような全身への治療となる薬物療法などがあります。転移した病巣が多数だったり大きかったりすると、転移した病巣を切除した残りの肝臓が小さくなってしまい、手術ができないことがあります。そこで、まず化学療法(抗がん剤治療)を行って、転移巣の大きさを小さくしたり、数を少なくしたりしてから手術することが行われます。一方、見た目には肝臓に転移した病巣を完全に切除できたとしても、残った肝臓や他の臓器に再発することがあります。肝臓に転移した病巣が多数あったり、大きかったりするとその再発する危険性は高くなります。そのため、手術だけでなく化学療法(抗がん剤治療)による治療を組み合わせることで、目に見えないがん細胞を死滅させることで再発が少なくなると考えられています。肝臓に転移のある大腸がんに対する初回化学療法では、以下のような化学療法(抗がん剤治療)が行われます。
1.5-FU/l-LVとオキサリプラチン(以下FOLFOX:フォルフォックス)を用いた治療法
2.5-FU/l-LVとイリノテカン(以下FOLFIRI:フォルフィリ)を用いた治療法
3.FOLFOX療法にベバシズマブを併用する治療法
4.FOLFIRI療法にベバシズマブを併用する治療法
5.FOLFOX療法に抗EGFR抗体*(セツキシマブもしくはパニツムマブ)を併用する治療法
6.FOLFIRI療法に抗EGFR抗体*(セツキシマブもしくはパニツムマブ)を併用する治療法
7.5-FU/l-LVとオキサリプラチン、イリノテカン(FOLFOXIRI:フォルフォキシリ)を用いた治療法
*:セツキシマブもしくはパニツムマブはKRAS遺伝子**に異常がない状態でのみ使用されます
**:KRAS遺伝子は、大腸癌の発癌過程において重要な役割を担っている癌遺伝子です。異常がある場合、癌細胞にとって都合の良いシグナル(信号)伝達を遮断できず、EGFRを介した抗EGFR抗体の治療効果がないことが分かっています。
 私たちは化学療法(抗がん剤治療)の有効性と安全性を総合的に判断して、それぞれの患者さまにとってもっとも良いと考えられる治療を行っています。肝臓に転移のある大腸がんの治療の標準的な治療として、FOLFOX+ベバシズマブ併用療法、FOLFOX+抗EGFR抗体併用療法がもっとも治療効果が期待できる治療法の一つとされており、いずれも用いられています。
ベバシズマブは、がん細胞に直接作用して効果を表す他の抗がん剤とは異なり、がん細胞が成長し増殖していく際に必要な血管を作ったり、増やしたりすることを促進する物質であるVEGF(Vascular Endotherial Growth Factor:血管内皮細胞増殖因子)の働きを阻害することのできる薬剤です。
 また抗EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ)は、がん細胞の増殖に関わる物質であるEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor:上皮成長因子受容体)の働きを阻害することのできる薬剤で海外で行われた臨床試験によって、大腸がんの初回化学療法にベバシズマブ、もしくは抗EGFR抗体を併用することで、がんを縮小させたり、生存期間を延長したりできることが報告されています。しかし、ベバシズマブ、セツキシマブのどちらを併用するのが良いのかは、はっきりわかっていません。これは、肝臓のみに転移のある大腸がんの初回化学療法も同様です。
 今回の臨床試験は肝臓のみに転移のある大腸がんの初回化学療法として、FOLFOX療法にベバシズマブ、もしくは抗EGFR抗体の一つであるセツキシマブを併用する化学療法(抗がん剤治療)を行い、どちらが良いのか探るために行います。

判定 承認 本審査は、全員一致で承認された。

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