京都医療センター

外科

低侵襲手術(ロボット・腹腔鏡手術)のご案内

ロボット支援手術

胃・大腸・肝臓・膵臓のロボット支援手術が保険診療になりました

ロボット支援手術

  • 術者が、コックピットのようなところで、“3D画像”を見ながらロボットのアームを操作して手術を行います
  • ロボットアームは、術者の“手のブレ”を取り除き、“動きを縮小して”動くため、非常に繊細な手術が可能となります
  • ロボットアームには、通常の腹腔鏡手術の道具とは違って、関節機能があるため、色々な方向からより安全に、より確実に手術を行うことができます
  • ロボット支援手術は、2018年4月から保険収載され、当院でも胃・大腸・肝臓・膵臓のロボット支援手術を行っています

詳しい内容については,外科外来までお尋ねください

腹腔鏡下肝切除術について

はじめに ~肝臓豆知識~

  • 肝臓は右上腹部に存在し、その大部分が肋骨に囲まれて存在しています。
  • 肝臓は重さが成人男子で1200~1400g、成人女子で1000~1200gあり、体重のほぼ2.8%に相当する大きな実質臓器です。
  • 血液は肝動脈および門脈を介して1分間に約1100mL肝臓に流入するといわれています。
  • 肝臓の中に蓄えられている血液は、身体全体の10%以上に相当します。

以上のことから、肝臓の手術は必然的に難易度の高いものになります。
当院は、日本肝胆膵外科学会が、2008年より始めた高度技能専門医制度で認められた肝胆膵外科専門A認定施設であり、同学会が認定した資格をもつ肝胆膵外科高度技能専門医・指導医2名により肝臓手術を行っています。

肝臓手術の変遷

~傷は大きく、痛くて当たり前の手術から傷は小さく、痛みの少ない手術へ~

上記のごとく肝臓は血液の塊の臓器であり、解剖学的にも体内の奥深いところにあることから、これまでは
「手術は大きく切って安全に行うべきである」
という考え方で手術がなされてきました。そのため、必然的に傷は大きくなり、術後の痛みはあっても仕方がないという考え方が根付いていました。

その一方で、2010年4月に保険診療報酬の改定がなされ、腹腔鏡での肝臓手術が保険適応になりました。当初は肝部分切除(肝臓の一部分のみを摘出する手術)と外側区域切除のみに保険適応がありましたが、2016年4月にはさらに適応は拡大し、
厚生労働大臣が定める施設基準を満たす施設のみ、胆道再建を伴わない全ての肝切除に腹腔鏡による手術が適応となっています。

腹腔鏡手術とは?

傷が小さく患者さんに負担の少ない腹腔鏡手術とは、おなかに1cm程度の切開を数カ所おき、そこから器械を通す筒を入れて炭酸ガスをおなかの中に充満させておなかを膨らまし、テレビモニターを見ながら手術を行う方法です。傷が小さいこと、腹腔内臓器が空気に触れないことから患者さんへの侵襲が少ないため、術後の回復が早く、癒着が少ない手術として胆嚢・胃・大腸などの消化管手術ではポピュラーなものとなっています。

下のグラフは当科における肝臓手術の内訳を表しています。当院では2010年6月から腹腔鏡下肝切除術を開始していますが、腹腔鏡下肝切除術は技術的に難易度が高くなるため、安全性を担保すべく適応を厳格に設定しているため2014年までの腹腔鏡下手術が占める割合はそれほど多くありませんでした。2015年からは手技が安定したため件数は増加し、2017年7月現在までに68例に腹腔鏡下肝切除術を施行しています。

手術件数

腹腔鏡下肝切除手術は安全?

ニュースで一時期話題になったこともあり、腹腔鏡手術は安全なのか疑問をお持ちの方もたくさんいらっしゃると思われます。
当科では、適応を厳格にし、慎重に手術を行うことにより安全に手術を行っています。
下の表は当科における腹腔鏡下肝切除術の術後早期成績で、同時期に施行した開腹肝切除術の術後合併症と比較しました。
手術内容や患者さんの状況が異なるため単純な比較はできませんが、出血量、合併症発症率・入院期間とも明らかに腹腔鏡下肝切除で低いものになっています。腹腔鏡手術症例では術中輸血を要した患者さんはいませんし、もちろん術後死亡例はありません。

 	腹腔鏡下肝切除手術

その一方で、全ての肝臓手術に腹腔鏡手術が適応する、とは考えていませんし、患者さんの状態・肝臓の状態・腫瘍の位置などによっては腹腔鏡より開腹手術が安全な場合があります。
われわれは、腹腔鏡手術は適応を選んで慎重に行うことにより、患者さんに多大なメリットをもたらすものと考えています。肝臓手術を受けられる方は是非ご相談ください。

ご連絡は(075-641-9161(代表)に電話し、「外科外来」を通じて問い合わせいただきますようお願いします。