救命救急から慢性期まであらゆるニーズに対応するハイブリット型病院

独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター
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各診療科のご案内

診療科  心臓血管外科

当科の対象疾患

虚血性心疾患、心臓弁疾患、大動脈疾患、末梢血管疾患、その他心血管関連疾患

診療内容

・虚血性心疾患
冠動脈バイパス手術(人工心肺使用および非使用)
・心臓弁疾患
心臓弁置換および形成(大動脈弁 僧帽弁 三尖弁)
・心臓腫瘍
・大動脈疾患
人工血管置換(胸部、胸腹部、腹部)、血管内治療(胸部・腹部ステントグラフト)
・末梢動脈疾患
人工血管置換、バイパス手術 血管内治療(バルーン拡張、ステント留置)
・静脈疾患
下肢静脈瘤手術(血管内焼灼術、伏在静脈抜去、高位結紮)、透析用内シャント造設術
・その他心血管関連疾患

スタッフ

氏名・職名 認定資格 主な専門分野
川崎 正和
医長
心臓血管外科専門医 修練指導者
胸部外科認定医
脈管学会専門医
腹部ステントグラフト指導医
胸部ステントグラフト指導医
日本血管外科学会認定血管内治療医
外科専門医・指導医
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術実施医
心臓 血管 血管内治療
吉本 公洋
医長
心臓血管外科専門医 修練指導者
胸部外科認定医
外科専門医
心臓 血管
國重 英之
医師
心臓血管外科専門医 修練指導者
胸部外科認定医
脈管学会専門医
腹部ステントグラフト指導医
外科専門医 指導医
心臓 血管 血管内治療

主な治療実績(29年度)

・手術
  • 手術総数:134例
  • 人工心肺症例:20例
  • 心臓胸(腹)部大血管(収縮性心膜炎1例含む):33例
  • 動脈(腹部以下):48例
  • 静脈関連(含:血管アクセス手術)48例
  • その他:5例
・胸部大血管手術症例:18(5)例
※()内は緊急手術例
  • 非解離性:7(0)例
  • 上行弓部置換 + エレファントトランク挿入:1例
  • 上行弓部置換 + OPEN STENT:1例
  • 両側腋窩動脈間バイパス + Zone 2 ステント(TX2):1例
  • 下行ステント(TX2:2例、VALIANT:2例):4例

  • 解離性:10(4)例
  • ベントール手術:1(1)例
  • 上行置換 + TAP :1例
  • Hemiarch置換: 3(3)例
  • 上行弓部置換 + OPEN STENT + 左心耳切除:1例
  • 両側腋窩動脈間バイパス + Zone 2 ステント(C-TAG):1例
  • 下行ステント(C-TAG:3例):3例

  • 外傷:1(1)例
  • 下行ステント(C-TAG:1例):1(1)例
・虚血性心疾患単独、弁膜症手術症例:11(2)例
※()内は緊急手術例
  • 単独冠動脈バイパス術(On pump beating):1例
  • 大動脈弁:3例
  • AVR:3例(生体弁:3)
  • +CABG:2例、+左心耳切除:2例
  • 僧帽弁:2例
  • MVR:2(1)例(機械弁:1、生体弁:1)
  • 僧帽弁+三尖弁:3例
  • MVP+TAP:1例+MAZE:1例
  • MVR+TAP:2例(生体弁:2)
  • +左房縫縮:1例、+MAZE:1例、+左心耳切除:2例
  • 大動脈弁+僧帽弁+三尖弁:1例
  • AVR+MVR+TAP:1(1)例(機械弁)
  • 僧帽弁+三尖弁+肺動脈弁:1例
  • MAP+TAP+PVP:1例
  • +ASD(I)閉鎖、MAZE、下大静脈弁切除、左房縫縮
・腹部大動脈及び腸骨動脈手術症例:29例
  • 非破裂性 / 破裂性:24例/5例
  • 腎動脈上クランプ:2例
  • 腎動脈下クランプ:14例
  • 感染性:1例
  • 炎症性(破裂症例):1例
  • 孤立性腸骨動脈瘤:10例

  • 再建人工血管等:
  • Yグラフト:6例
  • 3分枝:3例
  • 4分枝:4例
  • ステントグラフト:13例
  • (Zenith Flex:1,EXCLUDER:8,ENDURANT:2,AFX:1,AORFIX:1, 内腸骨動脈塞栓術併施:5〈Amplatzer:1,Coil:4〉)

  • IMA再建:2例
  • 大網充填(AAA人工血管置換術後の中枢側吻合部感染性仮性瘤,in-situ血行再建):1例

  • 総腸骨動脈瘤流入口及び流出口閉鎖+F-Fバイパス(総腸骨動脈瘤破裂):1例
  • 腹部大動脈瘤切開+腰動脈結紮+瘤縫縮(EVAR後瘤径拡大):1例
  • 腎動脈下腹部大動脈開窓術(急性B型解離):1例
・末梢動脈疾患手術症例:19例
  • 腸骨動脈ステント単独(閉塞性病変):3例
  • 浅大腿動脈ステント単独(閉塞性病変):2例
  • 膝窩動脈PTA単独:1例
  • 大腿動脈血栓内膜摘除術:1例
  • 大腿動脈血栓内膜摘除術 + 膝窩動脈PTA:1例
  • 腹部大動脈−外腸骨動脈,大腿動脈バイパス術(Yグラフト):1例
  • 下肢急性動脈閉塞血栓摘除術:6例
  • 大腿動脈仮性瘤手術:1例
  • PCPS関連血管形成術:1例
  • 腋窩動脈−橈骨動脈バイパス術:1例
  • 腋窩動脈吻合感染人工血管摘出術(急性A型解離手術時送血部位)1例
・静脈関連手術症例:48例
  • 透析用内シャント造設術:28例
  • 下肢静脈瘤手術:18例
  • (高周波:9例,高周波+小伏在静脈高位結紮:4例,小伏在静脈高位:2例
  • 高周波+ストリッピング:1例,ストリッピング+小伏在静脈高位結紮:1例,瘤切除:1例)
  • IVCフィルター挿入:1例
  • IVCフィルター抜去:1例

地域医療機関へのメッセージ

2010年3月1日に国立病院機構の方針で北海道がんセンターから心臓血管外科医局ごと当院へ異動してきました。 北海道がんセンター(旧国立札幌病院)では1996年から成人の心臓大血管疾患を中心に診療にあたり、この14年間に総計約3000例の手術を行っております。1300例は心臓、胸部大動脈瘤の手術、600例は腹部大動脈瘤の手術、1000例は末梢動脈疾患と静脈の手術でありました。それまで積み上げた経験を生かし、2010年から当院で心臓血管外科領域の診療に全力で取り組んでおります。
当施設の特徴として各科の専門家がそろった総合病院であり、さまざまな合併症のある患者さんにも対応可能です。さらに第三次救命救急センターの機能を有し、重症の循環器系救急患者にも常時対応しております。また、当科は日本心臓血管外科専門医認定機構から基幹施設、日本脈管学会から指定施設、日本ステントグラフト実施基準管理委員会から胸部及び腹部ステントグラフト内挿術実施施設、下肢静脈瘤血管内焼灼術実施・管理委員会から実施施設として認定されております。
また当科では2016年2月より血管生理検査専門外来(Vascular Labo)を開設し、末梢動脈疾患(PAD)の早期発見に努めております。PADが疑われる患者様がいらっしゃいましたら是非ご相談ください。
これからも症例を積み重ね、患者さんのために、さらに高度で安全な、また可能な限り低侵襲な医療を提供できるようにスタッフ一同、常に努力してまいります。

当科における胸部大動脈及び腹部大動脈に対するステントグラフト内挿術について

大動脈瘤は破裂すると突然死を招く危険性の高い恐ろしい疾患です。その標準的治療は成績が安定している「開胸や開腹による人工血管置換術」ですが、当院では患者さんへの負担が少ないステントグラフト内揷術を2010年開院当初より導入しています。

鼠径部の血管からステントグラフトを挿入
ステントグラフト内揷術は主に鼠径部の血管から金属製の骨組みを縫着した人工血管であるステントグラフトを収納した直径6〜9mm程度のシースを挿入し、動脈瘤の中で展開して破裂を防ぐ治療です。これまで治療を断念していた高齢者でも受けることができる低侵襲な方法として年々広まっています。当院でも90歳の男性に対して治療を行い、経過は良好です。従来の手術と異なる特殊性から関連11学会が組織するステントグラフト実施基準管理委員会では、本治療法に対して術者と実施施設に一定の基準を設けています。当院には実施医及び指導医が3人います。この治療法には放射線被曝を伴う、腎機能障害を有する患者には適さない等の欠点があります。

治療の要点
適応には動脈瘤の前後にステントグラフトの固定部位に適した血管が存在する、アクセスルートとなる血管に高度の狭窄、蛇行、石灰化がないなど、いくつかの解剖学的な条件が必要です。手術は「ステントグラフトを安全に目的部位へ運ぶ。」、「動脈瘤壁への血流を完全に遮断する。」ことが重要になります。留置したステントグラフトが血流によって移動しないよう、バルーンカテーテルを用いてしっかりと固定部位に圧着します。

治療後の管理と経過
術後は造影CTで定期的に治療効果を判定します。動脈瘤内への血液の漏出(エンドリーク)やステントグラフトの移動がないか、瘤は拡大していないかなど、慎重に経過観察します。治療前の動脈瘤の直径から5mm以上拡大したら再治療を検討します。当院実績では2018年3月までの163例の本治療施行症例中、追加治療を必要としたのは10例で、経過は概ね良好です。

以下のような状況の患者さんには、専門的な検査をお勧めください。
  • 1.高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満などの生活習慣病のリスクファクターを持っている、喫煙習慣がある。
  • 2.他疾患でエコー、CT、MRIを行った際に動脈瘤の存在が疑われる所見がある。
  • 3.胸部レントゲンで胸部大動脈の拡大が疑われる。
  • 4.腹部に拍動性腫瘤を触知する。

腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術

当科における胸部大血管疾患治療の推移

当科における腹部大動脈・腸骨動脈瘤治療の推移

68歳男性の胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後の3D-CT画像 弓部大動脈嚢状瘤に対しても開窓型ステントグラフトを用いることにより 治療が可能となります。

90歳男性の腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術後の3D-CT画像 中枢ネックが高度屈曲した超高齢者ですが、ステントグラフトは問題なく 内挿され、術後2年経過した現在も元気に外来通院されています。

55歳男性の急性B型解離に対するステントグラフト内挿術前後の3D-CT画像 術後3ヶ月で偽腔が著明に縮小しています。

下肢静脈瘤血管内高周波焼灼術について

下肢の表在静脈内の弁が壊れて逆流・うっ血が起きると、皮膚直下に蛇行や瘤が確認されるようになります。「下肢静脈瘤」という血管の異常ですが、つらい症状が出ない場 合には年齢や体質によるものと長年放置されてきました。しかし、近年登場した高周波 アブレーションカテーテル治療で「1泊入院で患者さんの QOL を向上できる」ことから全国的に手術症例数は増加傾向にあり、当院でも2014年に本格導入しています。

静脈を高周波で焼灼し閉塞させる
下肢静脈瘤治療の主流は、静脈に硬化剤を注射器で注入する硬化療法、弁の壊れた静脈を外科的に引き抜く静脈抜去術(ストリッピング手術)でしたが、近年になり高周波を使用する「高周波血管内焼灼術」が選択肢の一つして加わりました。この治療は、静脈内に挿入したカテーテルの先端部分にある約 cmの金属コイルに高周波を流し発熱させて静脈を熱変性させ閉塞させる方法です。焼かれた静脈は数カ月で吸収され、その役割は別な血管が代行します。治療は全身麻酔で行われ、両足で1時間から2時間程度。静脈弁の壊れた静脈だけを血管内から治療できるため、侵襲が少なく、術後の痛みもほとんどありません。傷口はカテーテルを挿入するための小さな刺入部のみです。

治療の要点
当院では血管外科治療を専門に行っている心臓血管外科医が担当します。高周波血管内焼灼術の最中に動脈瘤の形状が適さないと判断した場合には、静脈抜去術に切り替えることも可能です。他の静脈瘤があった場合は、真上を尖刃で切開するstab avulsion法を行います。 切開創は小さく目立ちません。

治療後の合併症
稀に起こる重大な合併症に深部静脈血栓症(エコノミー症候群)があります。足を長時間動かさないことが原因ですが、手術後にエコー検査を行い、血栓の有無を確認します。万が一の場合の治療法(ヘパリン投与)も確立されています。手術後は、すぐに歩行可能ですので、退院後は、これまで通りに旅行や散歩などを楽しむことができます。

人生のQOLを向上させるための治療です
下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありません が、自然治癒もしません。足がだるい、痛いと思い ながらも、何十年も経過してから受診される患者さんがほとんどです。妊娠や分娩を経験した女性だけ でなく、立ち仕事を長年続けてきた男性にも発症します。高齢になり下肢の筋力が弱くなると症状が強 くなり、筋力や体力の低下につながります。潰瘍ができたり、感染を起こしたりするケースもあります。 しかし、「もう高齢だから無理しない方がよい」 との誤解から治療への理解が進んでいませんが、「体 への負担も痛みも少ない治療」だからこそ、高齢の方も安心して受けていただけます。また、「自分の 足で無理なく歩ける」というメリットが「人生の QOL 向上」につながります。当院で治療を受けた最高齢者は89歳。「足が軽くなりました。これで孫との外出を楽しめます」と笑顔で退院されました。

当科における下肢静脈瘤手術症例数の推移

血管生理検査専門外来(Vascular Labo)のお知らせ

近年本邦においても高齢者・糖尿病・高血圧症・高脂血症・腎不全といった末梢動脈疾患(peripheral arterial disease; PAD)発症リスク因子を有する症例が増え、PADの頻度も増加しています。また動脈硬化は末梢動脈のみならず、他の重要臓器に関連する動脈との合併が高頻度に認められることから、PADを「全身の動脈硬化性血管病変の一部分症」と捉えることができます。つまりPADの存在は他の重要臓器虚血の存在を示唆する指標ともなることから、PADの診療時には全身の臓器虚血の存在を疑う必要があります。また透析症例のPADの多くは無症状であり、急速に重症下肢虚血に進行することも多々見受けられます。さらに非外傷性の下肢切断の原因の約60%はPADと糖尿病であると言われています。よってPADを早期に発見し治療を開始することにより、虚血性病変の予防、潰瘍の治癒、下肢切断の予防、患者様の運動機能の保持とQOL及び生命予後の改善が期待できます。
我々は血管生理検査専門外来(Vascular Labo)を2016年2月より開設し、血管エコー・上肢下肢血圧比(ABI)・皮膚組織灌流圧(SPP)等の血管無侵襲検査を行うことによりPADの早期発見を目指し、これらの検査で異常所見が見つかった患者様に関してはさらなる精査(造影CT、血管造影等)を行い、治療方針を決定します。また必要に応じて他の重要臓器虚血の有無を調べるための検査も他科と連携しながら進めてまいります。つきましては間欠性跛行・下肢安静時疼痛・潰瘍形成等、PAD特有の症状がないにも関わらず末梢動脈触知が不良な患者様、ABIが測定可能であれば低値の患者様(0.9以下であればPAD合併が疑われます。)、あるいは特に上記所見はないもののご自身の合併症からPADの存在を危惧されている患者様がいらっしゃいましたら是非当院までご相談ください。
担当は心臓血管外科専門医認定機構認定修練指導者及び日本脈菅学会認定脈菅専門医の資格を有した専門医で、診察は毎週木曜日午後の完全予約制となります。また上記血管無侵襲検査につきましては血管診療技師認定機構により認定されました血管診療技師が中心となって施行いたします。なお下肢症状からPADの存在が疑われます患者様に関しましては、火曜日及び木曜日午前の外来にて診察させていただきます。

これまで施行してきた研究・治験

  1. ・①凝固因子を指標に加えた急性大動脈解離(Type A)の手術適応評価の有用性の証明研究
  2. ・②観血的医療処置時の抗血栓薬の適切な管理に関する研究
  3. ・③K-134の間欠性跛行患者に対する二重盲検比較試験および長期投与試験
  4. ・④末梢動脈疾患患者を対象として心血管死、心筋梗塞及び虚血性脳卒中発現リスクに対するチカグレロールの効果をクロピドグレルと比較する無作為二重盲検並行群間多施設共同第Ⅲ相試験
  5. ・⑤閉塞性動脈硬化症に伴う間歇性跛行を対象としたNS-304の後期第Ⅱ相試験
  6. ・⑥深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び再発抑制に対するリバーロキサバンの有効性及び安全性に関する登録観察研究
  7. ・⑦腹部大動脈瘤治療に対する国立病院機構ネットワーク研究(腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術導入前・後の患者リスク背景、低侵襲性の比較検討と術前リスク評価法の構築)
  8. ・⑧破裂性腹部大動脈瘤に対する開腹手術とステントグラフト内挿術の治療選択に関する全国多施設観察研究

お知らせ

 

当科はNCD外科手術・治療情報データサービス事業に参加しています

当科は一般社団法人National Clinical Database(NCD)が実施するデーターベース事業に参加しています。この事業は、日本全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析することにより医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供するために利用されます。全国の医療施設診療科の情報を収集することで、手術を行っている施設診療科の特徴、医療水準の評価、適正な外科専門医の配置、手術を受けた方の予後、これから手術を受ける方の死亡・合併症の危険性などを明らかにすることができます。これらの登録情報は匿名化され、患者さまに不利益が生じることはありません。
尚、データ登録の参加については患者さまの自由な意思によりますので、参加されたくない場合は拒否して頂くことができます。

詳細についてはNCD患者さま向け説明資料【PDF:308KB】をご覧ください。 

NCDホームページ (http://www.ncd.or.jp/