病理検査室

病理検査室とは、患者様から採取された臓器や組織から顕微鏡標本を作製し、病気を検査、診断する部門です。組織学的検査・細胞学的検査・病理解剖の3分野からなります。




組織学的検査 (組織診)

組織診とは…

患者様の病変部から採取させていただいた臓器や組織の一部を23μm1μm1mm1000分の1)程度に薄く切り、スライドガラスに貼り付け、見やすく色づけして顕微鏡で細胞や組織の構造や細胞の形態を観察し、病理医が診断します。

組織診の業務…

1.  検体提出: 内視鏡検査や外来等で採取された病変部の小さな組織はホルマリンという液に浸されて提出されます。手術で摘出された胃や子宮などの大きな組織は検査室内にあるホルマリンの入った大きな容器で一定時間浸して固定(組織の形態が変化するのを防止)します。

2.    検体受付: 検体と依頼伝票を一緒に提出していただきます。双方に同一の検査番号をつけ検査システムにて受付・台帳管理をします。

3.    ブロック作製: 小さな組織は専用容器(ブロック)に入れ、大きな組織は固定完了後、病理医と検査技師によって適切な大きさに切り分け、必要箇所をブロックに入れ、専用機器を使い、最後はパラフィンというロウに埋め込み固めます。



4.      薄切: 固められたブロックをミクロトームという機器を用いて厚さ23μm程度に薄く切り、スライドガラスに貼り付けます。



5.       染色: 細胞の核と細胞質を染め分けます。染め上がった標本をカバーガラスで封入し、標本が完成します。



6.       鏡検・結果報告: 出来上がった標本を病理医が顕微鏡で観察し、組織診断名(病名)と所見を報告します。




細胞学的検査  ( 細胞診 )

     

細胞診とは…

患者様の病変部から採取させていただいた細胞をスライドガラスに塗り、見やすく色づけして顕微鏡で個々の細胞を観察し、どんな細胞で構成されているのか、患部の病変は何かを専門の認定を受けた細胞検査士(臨床検査技師)と病理医・細胞診指導医(医師)が判定・診断します。主にがん細胞の有無を観察しますが、細胞採取にあたり患者様が痛みを伴わずに検査できる剥離細胞診と、若干の痛みを伴う穿刺吸引細胞診があり、子宮がんや肺がん、膀胱がんなどの検診および早期発見に役立っています。


検体の種類

婦人科の子宮頸部・子宮体部・膣壁・外陰部や気管支鏡下で気管支表面などから綿棒やブラシで擦って採取した擦過標本、甲状腺・乳腺・唾液腺・肝臓・皮下などにできた腫瘍に針を刺して細胞を吸引した標本、喀痰、尿、胸水、腹水、心のう液、髄液、胆汁、膵液、関節液など液状で組織標本が作製できないものなど、全てが検体となります。


細胞診の業務

1.      検体採取: まずは細胞の採取から始まります。患者様ご自身に採取していただく場合と医師により採取する場合があります。検体によっては細胞検査士が採取時に立会いその場でスライドガラスに塗沫(塗りつけ)します。

2.     検体受付: 検体と依頼伝票を一緒に提出していただきます。双方に同一の検査番号をつけ検査システムにて受付・台帳管理をします。

3.     標本作製: 採取された検体をスライドガラスに塗沫します。

4.    固定: 目的に応じた方法で細胞を固定(細胞の形態が変わらないように)します。

5.    染色: 細胞の核と細胞質を染め分けます。染め上がった標本をカバーガラスで封入し、標本が完成します。

6.    鏡検: 出来上がった標本全面を顕微鏡で観察します。
      

7.       結果報告: 細胞検査士と指導医でディスカッションし、パパニコロウ分類に準じて推定組織診断名(病名)、細胞所見を報告しています。

検体採取について…

細胞診は検体採取の良否により結果が大きく左右され、不適当であると正しい情報が得られないことがあります。多くは医師により採取されますが、喀痰や尿は患者様に採取していただきます。

喀痰は唾液や食物の混入する場合があり、判定困難なことがあります。喀痰採取の際には、うがいで口腔内をきれいにしてから深呼吸とともに大きな咳をすると検査に適した喀痰が採取されやすくなります。喀痰が採取されにくい場合は機器を用いた誘発法により採取が可能です。



染色とパパニコロウ分類について…

染色:

日常ルーチンで行われる染色方法には主に以下の2種類があります。

1.       パパニコロウ染色: 細胞診の基本染色です。細胞の核をヘマトキシリンという色素で青藍色に、細胞質はオレンジG、ライトグリーン、エオジンという色素でそれぞれ橙色、緑色、朱色に染め分けます。細胞質は細胞の性質により染色性が異なります。

      

2.       ギムザ染色: 上皮性細胞、非上皮性細胞の鑑別や多発性骨髄腫や悪性リンパ腫など血液疾患の鑑別に有用な染色方法です。

  

この他にも目的に応じた様々な染色が実施されます。

パパニコロウ分類:

正常細胞と比較して、形態の異り具合に応じて良性細胞(正常もしくは正常に近い細胞)から悪性細胞(がん細胞)に分類されます。これをわかりやすく表記する方法のひとつにパパニコロウ分類があります。ClassⅠ(異常なし)からClassⅤ(悪性)の5段階で判定します。婦人科細胞診では組織診との対比が容易で、他の臓器にも共通し便利である点から広く使われてきました。しかし、近年は臓器や腫瘍によりクラス分類がなじまなかったり、採取法の多様化により判定基準が異なる場合があり、新しい分類方法が推奨されるようになりました。