「びまん」とは聞きなれない言葉ですが、漢字で書くと「瀰漫」で、三省堂の国語辞典には「はびこって広くゆきわたること」と説明されています。びまん性肺疾患は「肺全体に広くはびこっている病気」と理解していただいてよいでしょう。肺の間質がおかされることが多く、胸部のX線やCTの写真では肺全体に偏りなく分布する細かな粒様あるいはスリガラス様の陰影としてみられやすいのです。症状としては咳や息切れが一般的ですが、無症状のこともあります。
肺の間質とは、肺の末梢に約3億個という膨大な数で存在する肺胞の壁の部分とその手前の空気の通り道の細気管支のことをいいます。毛細血管でとり囲まれている肺胞の壁は極めて薄く、ここで血液と空気の間で酸素と二酸化炭素がやりとり(ガス交換)されます。したがって肺の間質は外界から吸い込まれた空気や心臓から肺に送りだされた血液の影響を大変受けやすい部位です。
びまん性肺疾患の中には実に様々な種類の病気が含まれますが、多くは間質に炎症をきたした間質性肺炎です。代表的なものでは、特発性肺線維症は中高年のヘビースモーカーにみられやすく、次第に咳と息切れが増強します。慢性関節リウマチなどの膠原病は間質性肺炎を伴いやすいことが知られています。サルコイドーシスは全身性の病気ですが、特に胸と眼がおかされやすく、眼科で発見される方も少なくありません。過敏性肺炎はある種のカビや鳥類の排泄物の吸入により引き起こされる激しい炎症です。アスベストなどの無機塵埃を吸入しておこる塵肺も間質性肺炎の仲間です。粟粒結核は血中に入った結核菌が全身に散らばる重症な病気ですが、肺間質にも特徴的な炎症を形成します。薬の副作用で忘れてならないのが薬剤性肺炎です。インターフェロン、小柴胡湯、そして抗癌剤のイレッサがマスコミで話題となったことを記憶されている方も多いことでしょう。可能性のある薬剤投与中は慎重に経過をみ、発症時には迅速に適切な処置をする必要があります。
ウイルス、マイコプラズマ、一般細菌が原因の肺炎でもびまん性陰影がみられることがあります。悪性腫瘍でも血行性転移や癌性リンパ管症をきたすと間質に生じるのでびまん性陰影を呈します。その他に肺胞蛋白症などの稀な病気があります。
一般に診断は、体の外から色々なことを調べる臨床検査と気管支鏡や胸腔鏡を用いて肺のごく一部の組織を採取して調べる病理検査とを組み合わせて行います。治療と予後は病気によってかなり異なるので、なによりも適切な診断をくだすことが重要です。
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最終更新日 2003/11/1
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