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(2003年7月:日本リウマチ友の会の機関誌「流」2003年230号に掲載したものです。)
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わが国でも、リウマチの画期的な治療法として、抗サイトカイン療法が始まりました。 多くのリウマチ患者さんがこの治療法に多大の期待を寄せられていることと思います。 ただ、その副作用として最も警戒されているのが結核の発症ではないかと思います。 私は、療養所でリウマチと結核の診療に携わっておりますので、リウマチと結核について 私の経験からお話ししたいと思います。
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結核は御存知のとおり結核菌という細菌によっておこる感染症です。この菌は1882年に コッホによって発見されましたが、彼は同時に、金製剤が結核菌の増殖を抑制することもみつけました。 当時、リウマチの原因は結核菌と考えられていたため、金製剤投与がリウマチ患者さんに試みられたのです。 1932年、金製剤が投与された患者さんの4分の3以上に有効だったことが報告されました。 ここに抗リウマチ薬第一号として注射金剤が誕生したのです。その後、金製剤の抗結核作用は否定され、 リウマチの原因が結核菌であるという説も支持されなくなりました。
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ところで、リウマチ患者さんは結核に罹りやすいのでしょうか? 一般に、
リウマチでは全身性エリテマトーデス(SLE)など他の膠原病に比べれば大量のステロイドを使用されることは
稀であり、結核発症はそんなに多くないと考えられていました。私たちの病院は結核の専門病院です。
過去8年間に1121人の結核患者さんが新たに入院されました。その内の20人(1.8%)がリウマチ患者さんでした。
これは、一般人口に占めるリウマチ患者さんの割合の3倍です。男性9例、女性11例で、平均年齢72歳、
リウマチの平均罹病期間は16年であり、男性、高齢者、リウマチを長く患っておられる方に結核の合併が
多いと言えそうです。
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一般に結核と言えば8〜9割は肺結核ですが、20人のリウマチ患者さんの結核の内、 肺結核は7割で、3割は肺外結核(肺以外の結核)でした。結核菌が血液を介して全身に拡がる粟粒結核の患者さんが 4人(20%)もおられ、この頻度は一般の結核に占める粟粒結核の割合の10倍以上です。肺結核の7割は 両側の肺に病変が拡がり、空洞を作らない、肺結核としては非典型的なレントゲン所見を示す方々でした。 また、咳、痰、発熱などの症状は半数の方にしか認めませんでした。つまり、リウマチ患者さんの結核では、 自覚症状が乏しく、診断がむつかしいということです。リウマチ肺としてステロイド治療中に肺結核がみつかったり、 腰椎の圧迫骨折を疑っていたら脊椎カリエスだったり、逆に、結核性胸膜炎を疑われた患者さんが、 リウマチによる胸膜炎だったということもあります。
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粟粒結核を合併されたリウマチ患者さんの
胸部レントゲン(左)とCT(右)

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リウマチの患者さんの結核は治りにくいのでしょうか? ほとんどの方は 一般の結核患者さんと同様、抗結核薬の投与開始後平均2カ月で排菌が消失し、軽快退院されました。
早期発見、早期治療が大切なのです。定期的に胸のレントゲンを撮ってもらったり、微熱など
何か気になる症状があれば早めに主治医に告げて専門医に診てもらうのがよいと思います。
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以上述べてきたのは、抗サイトカイン療法が始まる前の話です。抗サイトカイン療法が
始まると、リウマチ患者さんの結核はさらに増加し、その内容も変わってくるものと予想されます。
今回わが国でもリウマチ患者さんに適応が認められたレミケードは、既にアメリカでは1999年から市販されており、
結核の発症が問題となっていることは、埼玉医大の竹内勤先生が「流」225号に書かれているとおりです。
レミケードの場合は、平均3回(12週間)の投与後という早期に結核を発症します。肺外結核が57%と極めて高率です。
他人から感染して発症するのではなく、自分の体内に潜んでいた結核菌が目覚めて発症するものと考えられます。
レミケードに比べると少ないですが、エンブレルでも結核の発症が報告されています。これらの生物学的製剤は
腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれるサイトカインをブロックしてリウマチの炎症を抑えるわけですが、 TNFは結核などの感染症から体を守る大切な働きもしているのです。
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メトトレキサートなど従来の抗リウマチ薬では十分にコントロールできない患者さんにとって、
抗サイトカイン療法は待望の治療法です。でも、結核の既往歴の明らかな方はもちろん、胸のレントゲンで
古い結核の影が疑われた方も、抗サイトカイン療法に対しては慎重に臨むべきだと思います。結核の既往が
明らかでない方も安心はできません。日本では、つい最近まで乳幼児期以外に、小学1年と中学1年時に
ツベルクリン反応陰性者に対してBCG接種を行っていましたので、欧米のようにツベルクリン反応で結核感染の既往を
判定することが困難なのです。
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わが国での抗サイトカイン療法の幕開けに水をさすようなことを言って
申し訳ありませんでしたが、最後に1つ申し添えておきます。数年前から、私のようなリウマチ専門医が
結核の療養所にも配属されていることを。国立相模原病院をセンターとしたリウマチ・アレルギーの
ネットワーク作りという政策医療のためと伺っておりますが、ひょっとしたら抗サイトカイン療法導入後に
予想されるリウマチ患者さんの結核対策という政策医療(?)も兼ねているのかもしれないと個人的に思っています。
運悪く結核を発症された後も、リウマチ患者さんの治療を継続できるリウマチ専門医が若干名でも養成されていることは、
患者さんにとってはひとまず安心できることかもしれません。 |
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