南岡山医療センターリウマチ科▲トップページへ
トピックス


 ・リウマチと結核(2003年7月)

・リウマチの新薬:レミケードとアラバ(2003年8月)

 リウマチと結核

(2003年7月:日本リウマチ友の会の機関誌「流」2003年230号に掲載したものです。)

 わが国でも、リウマチの画期的な治療法として、抗サイトカイン療法が始まりました。 多くのリウマチ患者さんがこの治療法に多大の期待を寄せられていることと思います。 ただ、その副作用として最も警戒されているのが結核の発症ではないかと思います。 私は、療養所でリウマチと結核の診療に携わっておりますので、リウマチと結核について 私の経験からお話ししたいと思います。
 結核は御存知のとおり結核菌という細菌によっておこる感染症です。この菌は1882年に コッホによって発見されましたが、彼は同時に、金製剤が結核菌の増殖を抑制することもみつけました。 当時、リウマチの原因は結核菌と考えられていたため、金製剤投与がリウマチ患者さんに試みられたのです。 1932年、金製剤が投与された患者さんの4分の3以上に有効だったことが報告されました。 ここに抗リウマチ薬第一号として注射金剤が誕生したのです。その後、金製剤の抗結核作用は否定され、 リウマチの原因が結核菌であるという説も支持されなくなりました。
 ところで、リウマチ患者さんは結核に罹りやすいのでしょうか? 一般に、 リウマチでは全身性エリテマトーデス(SLE)など他の膠原病に比べれば大量のステロイドを使用されることは 稀であり、結核発症はそんなに多くないと考えられていました。私たちの病院は結核の専門病院です。 過去8年間に1121人の結核患者さんが新たに入院されました。その内の20人(1.8%)がリウマチ患者さんでした。 これは、一般人口に占めるリウマチ患者さんの割合の3倍です。男性9例、女性11例で、平均年齢72歳、 リウマチの平均罹病期間は16年であり、男性、高齢者、リウマチを長く患っておられる方に結核の合併が 多いと言えそうです。
 一般に結核と言えば8〜9割は肺結核ですが、20人のリウマチ患者さんの結核の内、 肺結核は7割で、3割は肺外結核(肺以外の結核)でした。結核菌が血液を介して全身に拡がる粟粒結核の患者さんが 4人(20%)もおられ、この頻度は一般の結核に占める粟粒結核の割合の10倍以上です。肺結核の7割は 両側の肺に病変が拡がり、空洞を作らない、肺結核としては非典型的なレントゲン所見を示す方々でした。 また、咳、痰、発熱などの症状は半数の方にしか認めませんでした。つまり、リウマチ患者さんの結核では、 自覚症状が乏しく、診断がむつかしいということです。リウマチ肺としてステロイド治療中に肺結核がみつかったり、 腰椎の圧迫骨折を疑っていたら脊椎カリエスだったり、逆に、結核性胸膜炎を疑われた患者さんが、 リウマチによる胸膜炎だったということもあります。

粟粒結核を合併されたリウマチ患者さんの
胸部レントゲン(左)とCT(右)


 リウマチの患者さんの結核は治りにくいのでしょうか? ほとんどの方は 一般の結核患者さんと同様、抗結核薬の投与開始後平均2カ月で排菌が消失し、軽快退院されました。 早期発見、早期治療が大切なのです。定期的に胸のレントゲンを撮ってもらったり、微熱など 何か気になる症状があれば早めに主治医に告げて専門医に診てもらうのがよいと思います。
 以上述べてきたのは、抗サイトカイン療法が始まる前の話です。抗サイトカイン療法が 始まると、リウマチ患者さんの結核はさらに増加し、その内容も変わってくるものと予想されます。 今回わが国でもリウマチ患者さんに適応が認められたレミケードは、既にアメリカでは1999年から市販されており、 結核の発症が問題となっていることは、埼玉医大の竹内勤先生が「流」225号に書かれているとおりです。 レミケードの場合は、平均3回(12週間)の投与後という早期に結核を発症します。肺外結核が57%と極めて高率です。 他人から感染して発症するのではなく、自分の体内に潜んでいた結核菌が目覚めて発症するものと考えられます。 レミケードに比べると少ないですが、エンブレルでも結核の発症が報告されています。これらの生物学的製剤は 腫瘍壊死因子(TNF)と呼ばれるサイトカインをブロックしてリウマチの炎症を抑えるわけですが、 TNFは結核などの感染症から体を守る大切な働きもしているのです。
 メトトレキサートなど従来の抗リウマチ薬では十分にコントロールできない患者さんにとって、 抗サイトカイン療法は待望の治療法です。でも、結核の既往歴の明らかな方はもちろん、胸のレントゲンで 古い結核の影が疑われた方も、抗サイトカイン療法に対しては慎重に臨むべきだと思います。結核の既往が 明らかでない方も安心はできません。日本では、つい最近まで乳幼児期以外に、小学1年と中学1年時に ツベルクリン反応陰性者に対してBCG接種を行っていましたので、欧米のようにツベルクリン反応で結核感染の既往を 判定することが困難なのです。
 わが国での抗サイトカイン療法の幕開けに水をさすようなことを言って 申し訳ありませんでしたが、最後に1つ申し添えておきます。数年前から、私のようなリウマチ専門医が 結核の療養所にも配属されていることを。国立相模原病院をセンターとしたリウマチ・アレルギーの ネットワーク作りという政策医療のためと伺っておりますが、ひょっとしたら抗サイトカイン療法導入後に 予想されるリウマチ患者さんの結核対策という政策医療(?)も兼ねているのかもしれないと個人的に思っています。 運悪く結核を発症された後も、リウマチ患者さんの治療を継続できるリウマチ専門医が若干名でも養成されていることは、 患者さんにとってはひとまず安心できることかもしれません。

 リウマチの新薬:レミケードとアラバ
(2003年8月:相談コーナーに寄せられたご質問に対する回答です。)

 レミケードは、一般名インフリキシマブと呼ばれる生物学的製剤であり、新しいタイプの 抗リウマチ薬です。腫瘍壊死因子(TNF)αというリウマチの炎症を起こしているサイトカインをブロックする 抗サイトカイン療法の1つです。
 アメリカでは1999年から、我が国では2003年7月から関節リウマチの治療薬として 使用されています。当院でも、8月より使用を開始しました。
 この薬剤は点滴投与します。0、2週、6週、以後8週毎に反復します。これまでの 抗リウマチ薬に比べ、効果発現が早く、2〜3週でCRPなどの炎症所見は改善し、関節の疼痛や腫脹も軽減します。 約7割の患者さんに有効です。マウス(ねずみ)を使って作成されたキメラ抗体なので、点滴時に過敏症状がみられたり、 中和抗体が産生されて効果が減弱することがあります。中和抗体の産生は、メトトレキサート(リウマトレックス)に よって防ぐことができるため、原則として週6mg以上のメトトレキサートを併用します。
 副作用として、「リウマチと結核」にも書きましたが、結核の問題があります。 これまでに欧米では43万人以上の患者さんに投与されており、350人の方に結核の発生が報告されています。 TNFαには結核などの感染症から体を守る大切な働きもあるのです。結核はレミケード投与後3ヵ月以内と 比較的早期におこるため、新しい感染ではなく、その患者さんが過去に感染された結核の再発と考えられています。 そのため、レミケードは過去に結核の既往のある患者さんには相応しくないと考えます。当院では結核の 既往歴がない方で、投与前に、ツベルクリン反応と胸のCTで結核病巣のないことを確認してから投与開始しております。 3ヵ月までは毎月、1年後までは2月毎、胸のレントゲン検査をしております。結核以外の感染症にも注意が必要です。 その他、抗サイトカイン療法の問題点としては、まず、悪性腫瘍や自己免疫疾患の誘発など長期の安全性が 確立されていないことがあります。また、製剤が高価であること、リウマチを完治させる薬ではないため、 一生継続する必要があることなどの問題点があります。レミケードの値段は1回の点滴で23万円(3割負担なら6万9千円)です。 丁度、高額療養費の上限額ですから、これ以上は払い戻ししてもらえる筈です。



 つぎにアラバについてお話しします。一般名はレフルノミドと呼ばれ、レミケードとは異なり、 生物学的製剤ではなく、メトトレキサートと同様、核酸代謝を抑制して抗リウマチ作用を 発揮する抗リウマチ薬です。9月には発売されると聞いています。
 アラバ内服薬であり、最初の3日間のみ100mg錠を1錠ずつ内服し、その後は 毎日1回20mg錠を1錠ずつ内服します。
 効果は1ヵ月以内に発現し、有効性もメトトレキサートと ほぼ同等といわれています。
 副作用としては、下痢、脱毛、高血圧、肝障害、骨髄抑制などがあります。 とくに肝障害と骨髄抑制の早期発見のため、投与開始後半年間は毎月、その後は2ヵ月に1度の血液検査が必要です。 この薬剤は体内に長く留まって排泄されにくいという特徴があるため、副作用が出現したときは、薬剤の中止だけでは 不十分で、コレスチラミンという除去薬を飲まなければなりません。ただ、メトトレキサートと 異なり、間質性肺炎は稀なようです。
 次々と新しい薬が登場します。レミケードの他、エンブレル(一般名エタネルセプト)という 週2回の皮下注射の生物学的製剤も来年早々には認可される予定です。これらの薬は、従来の抗リウマチ薬よりも 有効性が高く、骨関節破壊も防ぎます。ただ、いろいろな副作用や、薬の特徴があるため、自分に一番合った 抗リウマチ薬を選ぶことが大切です。
 レミケードアラバも、半年間の市販後調査が義務付けられています。レミケードは、 全国で5000例に達するまで、アラバは3000例に達するまでの調査です。アラバは12週までは2週毎、24週までは 4週毎の採血が必要ですので、これらの薬剤治療を受けられる場合は調査にご協力下さい。


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