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神奈川県相模原市における成人気管支喘息有症率調査研究

このたび、厚生労働省科学研究費補助金“免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業”における「気管支喘息の有病率・罹患率及びQOLに関する全年齢階級別全国調査に関する研究」(赤澤晃班長)の一環として相模原市保健所中央保健センターの全面的なご支援と市民の方々のご協力により相模原市における成人喘息の有症率調査を実施させていただきました。この結果はわが国の成人喘息の有症率調査の一環として、国際比較のためにも重要な成果となります。その調査結果をご報告いたします。皆様のご協力を感謝申し上げます。

研究担当者

秋山一男(研究責任者)、谷口正実、渡辺淳子
国立病院機構相模原病院臨床研究センター

小山佐恵、岩本佐代子
相模原市保健所中央保健センター

研究要旨

東京に隣接する神奈川県相模原市は現在人口60万を超える中核市です。

今回、市内で環境の異なる2地区について成人の気管支喘息の方がどのくらいの割合かの調査を行いました。気管支喘息は息を吐く時にゼーゼーヒューヒューと音がして息苦しいという病気です。結果は両地区とも最近12ヶ月に喘鳴(ゼーゼーヒューヒュー)を経験したことがある人は10.6%の割合で出現し、男性の方が高い確率となっています。これを期間有症率といい、国際的に共通の気管支喘息の頻度のめやすとされています。性別および年代別に見ますと男性では20〜30歳代の若年層と60〜70歳代の高年層で有症率が高く、女性では40〜50歳の年齢層で有症率が高くなっていました。

一般的に、最近12ヶ月の喘鳴(期間有症率)の関連因子としては鼻アレルギーと現在の喫煙状況が挙げられていますが、最近では、女性の肥満[BMI=体重(kg)/(身長(m)2)(肥満率)で表します]も因子の一つとして挙げられることがわかってきました。

目的

日本の都市部の一つとして、市内で環境の異なる2地区について精度の高い研究方法にて成人喘息有症率を推定し、関連要因について検討することを目的としました。

方法

対象は、市内でも開発の進んだ若松地区と最寄駅が単線で昨年度小児喘息有症率調査協力地域であった上溝地区の2地域の20〜79歳の男女としました。

方法は、国際比較を可能とするために近年ヨーロッパをはじめ多くの国々で用いられているECRHS(European Community Respiratory Health Survey)調査用紙の日本語版に、身長・体重やペットの飼育状況などの生活環境調査を加え、国立病院機構相模原病院倫理委員会による承認を受けたあと、対象地域にお住まいの方々に2006年9月に発送し、郵送による回答を依頼し、同意をいただけた方からご回答をいただきました。

結果

若松地区は3032名の対象者中1817票の回答があり、有効回答率は60.6%、上溝地区は3110名の対象者中1978票の回答があり、回答率は64.0%でした。

両地区とも最近12ヶ月の喘鳴の出現率は10.6%でしたが、性別および年齢別に見ると両地区とも男性では20〜30歳代の若年層と60〜70歳代の高年層で有症率が高く、女性では40〜50歳代の年齢層で女性の有症率が高くなっています(図1)。これは、一般的な他の調査の傾向と類似した結果となりました。

図1 各地区の性別・年代別期間有症率

表1の結果からも要因は鼻アレルギーの存在と現在の喫煙が有意な因子として挙げられます。オッズ比とは、それぞれの項目に当てはまる方がそうでない方と比べて期間有症率陽性(過去12ヶ月間にゼーゼーヒューヒューしたことがあること)になりやすい割合で、1以上(かつ95%C.I.も1以上の場合)が有意な差となります。

表1 期間有症率関連因子

図2の各設問に対する地区別の回答からみても、設問7の花粉症も含めた鼻アレルギーの有無については、両地区とも有病率がかなり高値で、特に女性はともに50%を超え、設問9の喫煙経験率でも両地区とも男性が60%台で、女性は20%を超えています。

図2 各地区性別回答状況

他には、BMI(肥満率)が標準よりやや多い25.0〜29.9%の範囲でも有意差が認められました。

更に多変量解析 (平均BMI22.8±6.1) し、現在の喫煙状況、鼻アレルギーで補正したところ、男性でも一部で有意となりましたが、女性の標準以上で有意となる結果となっています(表2)。

表2 期間有症率とBMIとの関係

ここ数年BMI(肥満率)は、喘鳴の関連因子として世界的に議論になっています。今回は横断調査ですが、他の研究報告でも、いくつかの長期前向きコホート研究(ある一定の地域で長期間経過を追跡する研究)や減量・食事改善による発作回数の減少や重症度の減少を報告したものが複数存在していることから、BMI(肥満率)も関連因子の一つとして認められる可能性があると考えられます。

※BMI=体重(kg)/(身長(m)2

その他、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者(図2設問11)の一部でも最近12ヶ月に喘鳴を見る症例が増えていますが、症例数は喘息の薬物療法を受けている症例と、薬物療法は受けずに経過観察中または喘鳴を放置している症例に分けられることが考えられます。薬物療法により喘鳴が発生しない症例が存在することを考え合わせますと、20〜50歳代では経過観察もしくは放置の場合が多い可能性があるとも考えられる結果となりました。

※COPD:肺気腫や慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患のこと(主に喫煙が原因で発症し、気管支喘息に似た症状を示す病気)

論文発表

準備中

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