禁忌と回避(医療関係者の皆様へ):誘発試験の方法(専門医向け) [1/5]
既往歴からの診断
AIAの約半数にNSAID過敏歴があるが、残りの半数は潜在例である。また非AIAの約70%にはNSAID使用歴がなく、問診でNSAID過敏を診断するには限界がある。さらに既往歴でNSAIDで誘発されたと判断される喘息患者100余例を検討した我々の成績によれば、(後の全身負荷試験の確認で)17%の非AIAが混入していた。これらの経験から、より正確なNSAID過敏歴の問診法を以下に述べる。
喘息患者に対し、問診によるNSAID過敏の診断の第一のポイントは、喘息発症後の解熱鎮痛効果の比較的強い酸性NSAID(市販薬ではノーシン、バファリン、セデス等)使用の有無を具体名を挙げて確認することである。これで明かな使用歴が複数回であり、副反応がなければ、NSAID過敏は否定的である。ただし喘息発症前の安全なNSAID使用歴は、多くのAIAに認められ、否定根拠とならない。当然のことながら、使用歴のないことイコール過敏歴無しともいえない。一方、総合感冒薬はシクロオキシゲナーゼ阻害作用が比較的弱いNSAID(アセトアミノフェンなど)が少量から中等量しか含まれておらず、AIAであっても発作が誘発されないこともある。したがって感冒薬が使用可能であっても過敏性を否定することはできない。
第二のポイントはNSAIDによる誘発が既往で疑われた場合、誘発症状とその経過が典型的NSAID過敏症状と合致するかである。著者らの経験では、服用1〜2時間以降に発作が出現したり、誘発発作が軽い、もしくは鼻症状が出現しなかった患者は、NSAID負荷試験が陰性、すなわちAIAでないことが多い。逆にNSAID服用30分以内の鼻閉、鼻汁を伴う強い喘息発作はアスピリン過敏を強く疑う。
喘息患者がNSAIDアレルギーを合併した際はAIAとの鑑別がむずかしい。誘発時は両者とも喘息、鼻症状が生じるが、NSAIDアレルギーの場合は喘息症状が比較的軽い、血管浮腫や蕁麻疹を伴いやすいなどの点が特徴である。またNSAIDアレルギーはアトピー素因の強い若年者に多いことも参考となる。