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2016年10月25日掲載

眼科医長 古屋 敏江

10月10日は目の愛護デー

 10月10日は何の日でしょうか?1964年の東京オリンピック開会式の日に因み、1966年から“体育の日”となりました。しかし現在、体育の日は10月の第二月曜日と定義されています。実は10月10日は“目の愛護デー“です。厚生労働省を中心に目の健康に関わる活動が進められています。山梨県では毎年この時期に、山梨県眼科医会主催の講演会が行われています。皆さんも機会があれば参加してみてください。

目の健診を受けていますか?

 私たちが受ける情報の80%が目から入ってくると言われています。目は色々な情報、人物や物体を認識するだけでなく、色や形を認識して個々の状態(野菜の新鮮さや人の年齢など)を判断したり、人の表情で相手がどのような気持ちなのかを瞬時に判断したりと、我々は実に様々な情報を目から得ています。
 毎日使っている“目”ですが、自分は不自由なく見えているから目のことは心配ないと思っている方はいらっしゃいませんか?しかし、知らず知らずのうちに、目の病気になってしまっている、なんていうことがあります。私たちは通常両目で物を見ていますから、片目が見えなくなっていても気が付かないで過ごしている場合もありますし、かなり病気が進んでからでないと、“見えない”ことを自覚しないこともあります。目の検診を受けて、視力障害が無いかどうかを定期的にチェックすることは大切なことなのです。

視覚障害の原因疾患

 我が国の視覚障害による身体障害者認定の原因疾患(平成19年~21年)の上位は、

  第1位:緑内障21.0%
  第2位:糖尿病網膜症15.6%
  第3位:網膜色素変性症12.0%
  第4位:黄斑変性9.5%
  第5位:網膜・脈絡膜萎縮8.4%

と報告されています。それでは視覚障害の原因疾患の第1位の緑内障とはどのような病気なのでしょうか。

緑内障について

 緑内障は視神経の障害によって、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。緑内障の初期は自覚症状に乏しく、自覚症状が出たときにはかなり視野障害が進行しているということもあります。一度障害された視野は改善せず、進行した緑内障では視力も悪くなり、放置すると失明するおそれがあります。
 また、痛みを伴う緑内障もあります。急激に眼圧(目の中の圧力、目の硬さ)が上昇する急性緑内障発作の場合は、眼痛、充血、目のかすみの他、頭痛や吐き気を自覚します。この場合は急速に視野が悪化することがあるので、すぐに治療を受ける必要があります。しかし、多くの緑内障の症例では痛みは伴わず、知らないうちに視野障害が進行してしまうケースも少なくありません。
 岐阜県多治見市で行われた調査で、40歳以上の20人に1人(5%)が緑内障ということが分かりました。そのうちの約90%は自分では緑内障と気が付いていない潜在患者であることも分かりました。緑内障の治療は、視野障害が進行しないようにするため、眼圧を下げる治療となります。主に点眼治療を行います。眼圧を下げると緑内障の進行が抑制されることが昔からわかっているためです。早期発見すれば、進行を抑制したり、遅らせたりすることができ、失明に至る危険性が低くなります。

緑内障を早期に発見するために

検査室
 健康診断などで眼底検査(眼底写真)を受けると緑内障の疑いがあるかどうかが分かります。「視神経乳頭陥凹拡大」と判定された場合は緑内障の疑いがありますので眼科で精査を受けてください。眼科では視力、眼圧、眼底、視野などの検査を行って緑内障であるかどうかを判断します。さらに最近ではOCT(光干渉断層計)という画像診断を用いてより的確に緑内障を診断できるようになっています。異常を指摘されたにもかかわらず、症状が無いからと言って放置せず必ず眼科医の診断を受けてください。当院でもOCTを用いた緑内障診断を行っており、緑内障の早期発見に努めています。
 眼科では緑内障の他に、高齢の方に多い白内障や、糖尿病網膜症などの眼底疾患の有無も検査できます。年に1度は眼科検診を受けて、眼科疾患の早期発見につなげてください。

 


  ・緑内障患者は40歳以上の20人に1人
  ・年齢とともに有病率は上昇
  ・自覚症状がないうちに進行
  ・目の検診を受けて早期発見、早期治療を