認知症についてこのページを印刷する - 認知症について

2014年10月22日掲載

病院長 長沼 博文


 平成20年4月に物忘れ外来を始め、これまで延べ820人余りの患者さんの認知症診断を行ってきました。最近は、認知症の一歩手前の状態(軽度認知機能障害と言います)の患者さんの受診が増えています。最近テレビでもよく認知症についての番組が放映され、患者さんからあの薬(例えば、シロスタゾール)はどうですか?と聞かれる事が増えました。認知症は軽い段階で診断し、治療介入を始める事が大事です。

認知症の診断

 物忘れ外来では、受診時に日常生活の様子をチェックリストで調べ、次いで採血検査(甲状腺機能、ビタミンB12等)、MRI/CT検査、神経心理検査(認知機能の検査)を行います。認知症が疑われる場合には、さらに脳血流シンチ検査を行い脳の活動が低下している部分を調べます。それらの結果から、認知症のタイプを診断します。

認知症の種類

 一番多いのは、アルツハイマー型認知症で、その他脳血管性、前頭側頭葉変性症、レビー小体型認知症などがあります。レビー小体型認知症では、パーキンソン症状や幻視を伴うことが特徴です。

認知症に対する治療

 これまでアルツハイマー型認知症に対しては、長い間ドネペジル(コリンエステラーゼ阻害薬)という薬剤のみでしたが、最近は同じ系統のガランタミンとリバスチグミンが使えるようになりました。又、異なった作用を持つメマンチンも使えるようになりました。レビー小体型認知症にもドネペジルの有効性が報告されています。
 それ以外には、ビタミンE、鯖等に含まれる油成分(エイコサペンタエン酸;EPA, ドコサヘキサエン酸;DHA)等が疫学的に効果があると考えられています。
 もう一つ大事なことは、出来るだけ軽い運動を行う事です(テレビでも放映あり)。1日30−40分程度の散歩などが勧められます。軽い運動により、海馬の神経細胞の再生が起こるとされています。患者さんにもなるべく散歩をするように指導をしています。

認知症に対する治療効果

 これまで認知症に対する治療効果(特にアルツハイマー型)を報告してきました。認知症の一歩手前の状態(軽度認知機能障害と言います)或はごく軽度のアルツハイマー型認知症の患者さん(110例余り)に、コリンエステラーゼ阻害薬、ビタミンEそしてEPA(高脂血症のある患者さんの場合)を投与し、認知機能の変化を検討しました。平均1年6ヶ月経過をみた結果、約80%の患者さんは、認知機能が維持されるか改善がみられました。脳血流シンチで評価した患者さんの中には、血流低下部位の改善のみられた例もあります。以上から、それらの薬剤の治療介入効果はあると考えています。
 最近は、認知症が軽度の段階から早期に治療介入を行う方が良いとされています。認知症が進んでしまうと、脳の変性も進んでしまっているので、治療効果があまり期待できないと考えられます。

認知症の問題点

 認知症は徐々に悪化し、しばしば周辺症状(暴言、乱暴、易怒性、徘徊など)がみられ、家族による介護が大変になることです。その為、介護認定を受けてデイサービス、ヘルパーさん、訪問看護などを活用する事が、家族の負担を減らす上で大事です。
SPECT画像

物忘れ外来のご案内はこちらから