非結核性抗酸菌症

非結核性抗酸菌(NTM)症とは

非結核性抗酸菌(NTMと略します)は細菌の1グループである抗酸菌のうち、結核菌とらい菌以外の菌のことをいいます。
NTMによる肺感染症のことを肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)といいます。
非結核性抗酸菌はたくさんの種類があります。
人に感染するNTMの約9割をしめるのがMAC菌(マック:Mycobacterium avium complex)と呼ばれ、MAC菌による肺感染を肺MAC症といいます。
NTMは、水や土壌などの自然環境やシャワーなどの生活環境にどこにでもいる菌です。
多くの人が日常的に菌を吸い込んでおり通常は病気になることはありませんが、一部の人で肺に定着して肺NTM症を発症します。
なぜ発症するのか、その原因は不明です。
結核とは異なり、人から人への感染は基本的に起きない感染症です。
よくある自覚症状は、長引く咳・痰・血痰・喀血・体重減少です。
症状のない患者さんも多くおられ、健康診断を通じて病院を受診されることがあります。
肺NTM症は、現在日本で増加傾向がみられている病気です。
特に中高年のやせ型の女性に多くみられます。
また、もともと肺に病気をもっている人や関節リウマチのある人などが、肺NTM症にかかりやすいと言われています。

診断

肺NTM症の診断や重症度の判断は、いくつかの検査を組み合わせて行います。
痰の検査は、診断を確定するための要になる検査です。
痰の検査により、菌の種類や菌の量を調べます。
痰が出にくい患者さんは、病院ではなく、自宅で出した痰をもってきてもらい検査を行うことも行っています。
胸部エックス線写真やCTで肺の状態の評価を行い、血液中の抗体を調べて感染の有無を間接的に調べる方法もあります。
痰で診断がつかない場合は、気管支鏡(肺のカメラの検査)を行って診断することもあります。

 

治療について

肺NTM症の治療は、自覚症状をよくすること、病気の進行を防いで、将来重症化をさせないことが目的です。治療開始のタイミングについては明確な基準がありません。総合的に考えて治療方針の検討を行っています。はじめは経過観察を行うことになった場合でも、画像の経過や出現する症状次第で、治療を開始することもあります。

治療薬は、飲み薬による治療が基本です。
菌の種類や重症である場合では、注射薬を併用することがあります。それ以外の薬に、吸入用懸濁液剤というネブライザーを用いた薬があります。単剤(ひとつの薬)ではなく、いくつかの薬を組み合わせて使用する理由は、単剤で服用を続けると薬が効かなくなってしまうからです。また、薬による治療を行っても改善がみられない場合は、呼吸器外科の先生と治療方針を相談して、肺にある病変を手術で取り除くことを検討する場合もあります。

肺NTM症の治療は長期間にわたっていくつかの薬を使用していくので、副作用に注意していきます。
薬を使用しはじめてから数ヶ月以上経ってから副作用が出ることもありますので、気になる症状があらわれた場合は主治医に相談してください。
主な副作用は、発疹・視力や視覚の異常・発熱・味覚障害・食欲低下などです。
また、視力や視覚に影響を与えることがある薬(エサンブトール)を飲む患者さんには眼科の先生への定期診察をお願いしています。

肺NTM症は治療によって完全に治すことが難しいとされており、特効薬がない現状であります。
しかし、定期的な診察と治療によって、さらなる病気の進行を少しでもおさえていくことを期待して診察をしていきます。