院長所感

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「院長所感9月10月合併号」

2・3日前に東京都で、頭痛を訴え救急搬送の対象となった妊婦が 7ヶ所の都立救命救急センターのどこにも収容されず、脳出血で 死亡されたので、「首都よ、お前もか!」という訳で、社会的な大問 題に成りつつあります。

日本の医療が曲りなりにも、フリーアクセス・ 公定価格が普通であり、国民皆保険もあって「持ち合わせがないから、 ジフテリアに罹患した子供に抗血清を注射できず、救命できなかった。 親として一生悔い続ける」というような、半世紀前の常識は通用しなく なっています。しかし、上記妊婦のような不幸な例は希なこと、となった のは、主に診療現場の医療スタッフの過酷(労働基準法に照らして)で 身を粉にしての勤務・業務に負うところが大きいのですが、国民市民は 実態を正確に知ってくれているのでしょうか?。 つくづく疑問に思うこと は、当院でも未収金が2000万円ほど残って(入院・外来の医療を受け た後に、代金未払いのまま経過。特に救急車で来院例、死亡退院例に 多い。)いるが、買い物や食事やサービスを受けた場合に対価を支払 わねば、無銭飲食あるいは窃盗として警察に突き出されるのに、どうし て医療の世界では、それに類する対応が出来ないのか、医療者側が 損益をかぶらねばならないのは何故か、非常に疑問に思うのです。

それはともかく、患者さん側の医療を受ける際の、治療結果への期待 と接遇態度面での医療者側への注文は、昨今これまでになく高くなって います。小職が長年外来管理させて頂いている呼吸器難病の男性が 何度目かの気胸を発症し、自宅に近い某市立病院に緊急入院され たのですが、誤嚥性気管支肺炎および広範な肺胞出血を合併して死 亡されました。医学的対応には別段のミスはなかったのですが、深夜 帯で苦しむ患者に付き添う夫人が、巡回のナースに「聴診器を胸に 当てて呼吸音を聞いてやってくれませんか?主人の気持ちが安らぎ ますので。」と頼みましたところ、「SO2(*)が90%キープしているので、 状態は安定しています。」という返事のみで、暗に患者の要請は断固 拒否の様子。翌日あれよあれよと増悪し、最後の半日はICUに収容され たが、入室の際(SO2が70%台)に患者が笑顔を見せて手を振った ので、それを見て主治医が夫人に「ご主人は大丈夫、良くなってICUを 出てこられますよ。」と、根拠のない楽観的な一言。しかし半日後には 予測どおり死亡退院され、遺族の不信と不満が爆発したのは当然。 後で判明しましたが、家族の「近畿中央の医者に対応について相談し て下さい。」の要請も結局は実行されなかった、と。ご挨拶下さった 故人の夫人は、「近畿中央には、同じ気胸で何回か入院したけれど、 同じ要請に近中のスタッフは気軽に応じてくださったので、あの市立 病院でも同じこと、と思ったのですが、あの病院は信頼できませんね。」 とおっしゃったので、小生は「いま、病院は、色々と問題を抱えてい ます。ご指摘の点は多少の差はあれ、当院でも問題なしとは言えません」 と返事しました。

患者さんとの意思の疎通、希望される事の意味を察知する技術と自然 な対応の仕方は日常診療で重要です。結局は十分なコミュニケーションを はかり、信頼関係を成立させ、病気を真中に両者が共同で対処にあた る、リードするのは医療者側、というのが理想的です。 そして、これは診療面だけではなく、院内内部の共同作業を、正確に又、 スムースに効率よく、遂行するためにも、必要なことであります。医師・ 看護師と患者さんの関係だけではなく、職員同士でも良好なコミュニケ ーションの有無が信頼感の有無にと繋がり、最終的には業務の成否を 左右するというわけです。特に各職域の管理職の方々にはこの面から 職員の一体感醸成をはかるべく率先して行動し、発言して下さい。

*SaO2:動脈血酸素飽和度、93−96%程度が正常値

紫紺のぼたん
淡紅紫色の花をつける「のぼたん」は、亜熱帯に属する 屋久島・奄美沖縄諸島・小笠原に自生し、1−2mの低木。 同じ科の「紫紺のぼたん」は、ブラジル原産で、直系7センチ 程の美しい紫色の花を、8月から11月にかけて咲かせる。 両者共に、茎・葉に毛が生えており、「のぼたん」の方が毛 が硬い。