
呼吸不全難治性肺疾患研究部
部長 井上 義一
最近の活動状況について
(1) 特発性間質性肺炎(IIPs)外科的肺生検症例の臨床的検討
予後血清因子の解明(国立病院機構政策医療呼吸器ネットワークによる多施設国際共同研究である)。
2002年アメリカ胸部疾患学会(ATS)、ヨーロッパ呼吸器学会(ERS)から特発性 間質性肺炎分類診断に関する国際合同コンセンサスが発表されそれを受けて日本 呼吸器学会でもIIPsの診断治療に関するガイドラインが2004年9月に発表された。 われわれはATS/ERSおよび日本呼吸器学会のコンセンサス、ガイドライン作製に 委員としてかかわりながら、新しい分類、基準にもとづいて、政策医療呼吸器ネッ トワーク内で外科的肺生検が施行され予後が判明している IIPs症例の臨床画像 病理診断による再評価を行い、予後決定因子、新しい基準の評価を行っている。 昨年は近畿中央病院にATS/ERSの国際合同コンセンサスの病理部門の代表である AFIP (USA)のWilliam Travis氏を招いて政策医療呼吸器ネットワークから集めた 164例の症例について検討会を行った。その中間解析結果から、画像あるいは病 理所見で蜂巣肺所見がある症例の予後が悪いことが判明し、日本呼吸器学会、ア メリカ胸部疾患学会(ミニシンポジウム、2004)等で発表した。現在病理組織を 米国(Travis氏)にお送りし生検部位別に詳細な検討を行っている(ほぼ終了)。 本年度中に臨床画像病理検討会を開催し最終的に論文化を目指しつつある。
更に我々は2005年夏にIIPsの診断で鑑別診断困難な場合が多い慢性過敏性肺炎 について海外の病理学者(Colby氏)を近畿中央胸部疾患センターに招いて呼吸 器ネットワーク関連施設を中心にした検討会も予定している。本年はその準備を 既に監視している。
(2) 肺のリモデリング(線維化、気腫化)におけるマスト細胞に関する研究 (H15年から)
これまで肺線維症の肺でマスト細胞が増加し同じ部位で筋線維芽細胞が増加し マスト細胞由来のbFGF が関与している事を明らかにしてきた(AJRCCM)。一方 特発性間質性肺炎患者肺でマスト細胞の増加している部位に細胞外基質を分解す るMatrix metalloproteinase (MMP)-2が増加している事も免疫染色的に明らかに した。現在ヒトマスト細胞株(HMC-1)ヒト線維芽細胞株(HFL-1)の共培養系を 用いて、マスト細胞が線維芽細胞に及ぼす影響について検討中である。最近の実 験結果からマスト細胞培養上清中には(1)線維芽細胞由来MMP-2濃度を上昇させる 液性因子、(2) 線維芽細胞由来pro-MMP-2を活性化させる液性因子が存在するこ とが明らかになり、現在その同定を行っている。またマスト細胞と線維芽細胞の 共培養系でbFGFの転写がコントラオールされている事も明らかになりそのメカニ ズムも検討中である。(3) 肺胞蛋白症に関する研究
(a)胞蛋白症における診断、重症度、予後評価法の開発。
現在我々は日本全国で約200 名の特発性肺胞蛋白症患者のデーターベースを作 製している(新潟大学(前国際医療センター)中田光教授との共同研究)。約 200名の患者データーの疫学解析から特発性肺胞蛋白症患者の病勢把握に血清中 KL-6, CEA, SP-Dの測定が有用である事、これらの血清中濃度が高値である物は 予後不良である場合があること、全肺洗浄の治療を行っても40%の患者は再度洗 浄が必要であり本当の意味で予後不良であることが明らかにされた。2004年 Cincinati(USA)で開催された第1回国際肺胞蛋白症会議(稀少肺疾患会議)で発 表した。現在論文準備中である。この結果を参考にさらに詳細な全国へのアンケー ト調査を準備中である。
我々の施設では現在24 例の特発性肺胞蛋白症患者が通院しているが、患者様 の同意の下、血清、気管支肺胞洗浄液中の液性成分(GM-CSF自己抗体、KL-6、 SP-D、SP- A、CEA他)、画像所見(特に3次元CT)、動脈血液ガス、肺機能検査、 運動負荷検査(6MD、SWテスト)を行い、マルチスキャン3次元CTを用いた最新の 画像解析、精密呼吸機能検査、運動耐容能検査による詳細な検討を続けている。
(b)GM-CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究(H14年から)
本治療研究は、平成14年度厚生労働科学研究費 基礎研究成果の臨床応用推 進事業に基づく, 未承認薬の第2相試験である(主任研究者は国勢医療センター 中田光、当院は分担研究施設であるが薬品輸入等で実質的に中心的に関与)。 既にH14,15年度の研究費でGM-CSFを個人輸入し、吸入器も購入し。これまで予 備治療3例、本プロトコールによる治療14例に治療を行い有効率50%の成績を得 ている。対象症例が難治性症例だけであるので50%の数は少なくは無いと考えら れる。H16年も既に4例登録され治療が開始されている。
(4) 肺リンパ管平滑筋腫症(LAM)とその他の平滑筋、筋線維芽細胞増殖性肺疾患 に関する疫学、臨床、予後及び病態の研究
LAM は本年特定疾患に加えられた難治性進行性の難病である。有効な治療法も ないばかりか頻度も明かではない。我々は信州大学久保恵嗣教授、順天堂大学瀬 山邦明講師と共同で医療機関に対するアンケート調査を行っているsの結果約 150例のLAM患者について予後との関係についてデーターを解析しつつある。
さらに我々はH15 年度から患者会(L-LAM)と当院通院中の患者の協力により QOL調査(SF-36, SGRQ)、不安調査(HAD)、更年期指数調査(クッパーマン指 数)、血清、血漿保存等を行っている。現在約60名の患者からのアンケートの回 答及び医療機関から約30例の回答を得ている。現在解析を行っているが、本研究 はLAMに関する本邦で初めての調査となる。今後LAMガイドライン作製に 応用すると共に、米国LAM 財団との国際共同研究にミス日付ける予定である。
また我々はLAM 患者の病勢評価、疾患得意評価をマルチスキャン3次元CTを用 いる方法、血清因子を用いる方法で解析を始めている。血清因子については国際 医療センター病態代謝研究室鏑木康志氏m新潟大学中田光氏との共同で20kD以上 の蛋白は2次元電気泳動で、それ以下ではSurface Enhanced Laser Desoorption/Ionization (SELDI)-TOF/MS)(プロテインチップ)を用いて網羅的 に解析する(必要に応じ創薬プロテオームファクトリーと連携)。現在患者血清 を書類にて同意の上保存しつつある。また国際医療センターの倫理委員会の承認 を得たところである。
(5) 課題名:「特発性間質性肺炎(IIPs)外科的肺生検症例の臨床的検討予後血清因子の解明」
(国立病院機構政策医療呼吸器ネットワークによる多施 設国際共同研究である)。
2002年アメリカ胸部疾患学会(ATS)、ヨーロッパ呼吸器学会(ERS)から特発性間 質性肺炎分類診断に関する国際合同コンセンサスが発表されそれを受けて日本呼 吸器学会でもIIPsの診断治療に関するガイドラインが2004年9月に発表された。 われわれはATS/ERSおよび日本呼吸器学会のコンセンサス、ガイドライン作製に 委員としてかかわりながら、新しい分類、基準にもとづいて、政策医療呼吸器ネッ トワーク内で外科的肺生検が施行され予後が判明しているIIPs症例の臨床画像病 理診断による再評価を行い、予後決定因子、新しい基準の評価を行っている。昨 年は近畿中央病院にATS/ERSの国際合同コンセンサスの病理部門の代表である AFIP (USA)のWilliam Travis氏を招いて政策医療呼吸器ネットワークから集めた 164例の症例について検討会を行った。その中間解析結果から、画像あるいは病 理所見で蜂巣肺所見がある症例の予後が悪いことが判明し、日本呼吸器学会、ア メリカ胸部疾患学会(ミニシンポジウム、2004)等で発表した。現在病理組織を 米国(Travis氏)にお送りし生検部位別に詳細な検討を行っている(ほぼ終了)。 本年度中に臨床画像病理検討会を開催し最終的に論文化を目指しつつある。
更に我々は2005年夏にIIPsの診断で鑑別診断困難な場合が多い慢性過敏性肺炎 について海外の病理学者(Colby氏)を近畿中央胸部疾患センターに招いて呼吸 器ネットワーク関連施設を中心にした検討会も予定している。本年はその準備を 既に監視している。
(6) 課題名:「肺のリモデリング(線維化、気腫化)におけるマスト細胞に 関する研究」 (H15年から)
これまで肺線維症の肺でマスト細胞が増加し同じ部位で筋線維芽細胞が増加し マスト細胞由来のbFGFが関与している事を明らかにしてきた(AJRCCM)。一方特発 性間質性肺炎患者肺でマスト細胞の増加している部位に細胞外基質を分解する Matrix metalloproteinase (MMP)-2が増加している事も免疫染色的に明らかにし た。現在ヒトマスト細胞株(HMC-1)ヒト線維芽細胞株(HFL-1)の共培養系を用 いて、マスト細胞が線維芽細胞に及ぼす影響について検討中である。最近の実験 結果からマスト細胞培養上清中には (1) 線維芽細胞由来MMP-2濃度を上昇させる 液性因子、(2) 線維芽細胞由来pro-MMP-2を活性化させる液性因子が存在するこ とが明らかになり、現在その同定を行っている。またマスト細胞と線維芽細胞の 共培養系でbFGFの転写がコントロールされている事も明らかになりそのメカニズ ムも検討中である。(7) 課題名: 「肺胞蛋白症に関する研究」
肺胞蛋白症における診断、重症度、予後評価法の開発。
現在我々は日本全国で約200名の特発性肺胞蛋白症患者のデータベースを作製し ている(新潟大学(前国際医療センター)中田光教授との共同研究)。約200名 の患者データの疫学解析から特発性肺胞蛋白症患者の病勢把握に血清中KL-6、 CEA、SP-Dの測定が有用である事、これらの血清中濃度が高値である物は予後不 良である場合があること、全肺洗浄の治療を行っても40%の患者は再度洗浄が必 要であり本当の意味で予後不良であることが明らかにされた。2004年 Cincinati(USA)で開催された第1回国際肺胞蛋白症会議(稀少肺疾患会議)で発 表した。現在論文準備中である。この結果を参考にさらに詳細な全国へのアンケー ト調査を準備中である。
我々の施設では現在24例の特発性肺胞蛋白症患者が通院しているが、患者様の同 意の下、血清、気管支肺胞洗浄液中の液性成分(GM-CSF自己抗体、KL-6、SP-D、 SP-A、CEA他)、画像所見(特に3次元CT)、動脈血液ガス、肺機能検査、運動負 荷検査(6MD、SWテスト)を行い、マルチスキャン3次元CTを用いた最新の画像解 析、精密呼吸機能検査、運動耐容能検査による詳細な検討を続けている。
GM-CSF吸入による重症特発性肺胞蛋白症の治療研究(H14年から)
GM-CSF吸入療法は著明な改善効果を示すことを初めて明らかにした。すなわち今 まで良い治療法がなかった極めて難治性の重症特発性肺胞蛋白症で新しい治療法 を確立した。本治療研究は、平成14年度厚生労働科学研究費 基礎研究成果の臨 床応用推進事業に基づく, 未承認薬の第2相試験である(主任研究者は国勢医療 センター中田光、当院は分担研究施設であるが薬品輸入等で実質的に中心的に関 与)。既にH14、15年度の研究費でGM-CSFを個人輸入し、吸入器も購入し。
これまで予備治療3例、本プロトコールによる治療14例に治療を行い有効率50%の成績 を得ている。対象症例が難治性症例だけであるので50%の数は少なくは無いと考 えられる。H16年も既に4例登録され治療が開始されている。GM-CSF療法は3例で 奏功を示し、胸部陰影、KL-6値の改善、呼吸機能の改善、BAL検査の著明な改善 が認められ、再発を認めていない。したがってこのGM-CSF療法をEvidence Based Medicineとして政策医療呼吸器ネットワークを通じて全国の病院・患者に広げてゆく。
(8) 課題名:「肺リンパ管平滑筋腫症(LAM)とその他の平滑筋、筋線維芽細胞 増殖性肺疾患に関する疫学、臨床、予後及び病態の研究」
LAMは本年特定疾患に加えられた難治性進行性の難病である。有効な治療法も ないばかりか頻度も明かではない。我々は信州大学久保恵嗣教授、順天堂大学瀬 山邦明講師と共同で医療機関に対するアンケート調査を行っている結果約150例 のLAM患者について予後との関係についてデータを解析しつつある。
さらに我々はH15年度から患者会(L-LAM)と当院通院中の患者の協力により QOL調査(SF-36, SGRQ)、不安調査(HAD)、更年期指数調査(クッパーマン指 数)、血清、血漿保存等を行っている。現在約60名の患者からのアンケートの回 答及び医療機関から約30例の回答を得ている。現在解析を行っているが、本研究 はLAMに関する本邦で初めての調査となる。今後LAMガイドライン作製に応用する と共に、米国LAM 財団との国際共同研究に結びつける予定である。
また我々はLAM患者の病勢評価、疾患得意評価をマルチスキャン3次元CTを用い る方法、血清因子を用いる方法で解析を始めている。血清因子については国際医 療センター病態代謝研究室鏑木康志氏 新潟大学中田光氏との共同で20kD以上の 蛋白は2次元電気泳動で、それ以下ではSurface Enhanced Laser Desoorption/Ionization (SELDI)-TOF/MS)(プロテインチップ)を用いて網羅的 に解析する(必要に応じ創薬プロテオームファクトリーと連携)。現在患者血清 を書類にて同意の上保存しつつある。また国際医療センターの倫理委員会の承認 を得たところである。
(9) 課題名:「びまん性肺疾患(呼吸不全)に対する新しい治療モデル作製」
(結核研究部との共同研究)
肺線維症発症マウスに骨髄幹細胞由来の肺stem cellを用いた新しい再生医療 及びICOS抗体(自己免疫反応性T細胞に強く発現)を用いて、肺線維症に対する 新しい治療法を開始した(stem cellの発見者ハーバード大学教授 Richard.C.Mulliganとの共同研究)。肺stem cellの存在を明らかにした。さらに、 ヒト特発性間質性肺炎ではICOS陽性CD8+キラーTの著明な浸潤が認められた。サ ルコイドーシスにおいて、レセプターレベルでの遺伝子異常解析による新しい診 断法を開発した。IL-2Rg鎖(-/-)NOD-SCIDを用いた新しいヒト肺移入モデルの 開発を行っている。骨髄由来のstem cellを生体内投与して肺内の細胞に生着す ることを示唆する結果を得た。この方法は肺結核やじん肺、肺がん後遺症の大きな 問題の荒蕪肺に対する再生医療並びに今だ良い治療法のない肺線維症の再生医療 として新しい武器を提供する可能性がある。
各診療科、検査科との協力関係について
部長はびまん性肺疾患、呼吸不全に関する臨床研究成果、新しい診断法・治 療法を内科・外科診療科へフィードバックしている。 びまん性肺疾患、呼 吸不全患者について週2回のカンファレンスで中心的役割を果たしている。ま た肺生検組織、気管支肺胞洗浄液の病理細胞像の解析について研究検査科科 長と、肺機能・睡眠時無呼吸検査等に関して検査科と、呼吸リハビリについ てリハビリ科医長と、画像診断においては放射線科医長(難治性疾患室長を 併任)と、放射線科のHRCT・3次元CTに関するデータを臨床研究センターで解 析・評価し、その結果を内科、びまん性肺疾患グループにフィードバックす ることにより日常の診療に役立てている。
