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病院長あいさつ



トップレベルの研修施設に


名誉院長 林 弘人


1.新医師臨床研修制度の現状と今後(平成17年6月記す)
2.医師臨床研修制度の現況と後期臨床研修のスタート(平成18年6月記す)
3.4年目を迎えた新医師臨床研修制度(平成19年5月記す)
4.ともに希望を語り、誠実を胸に刻む(平成20年5月記す)
5.総合診療マインドを培う(統括診療部長 佐藤 穣 平成21年7月記す)
6.21世紀型研修病院へ(平成22年5月記す)


新医師臨床研修制度の現状と今後
(平成17年6月記す)

 平成16年度より医師臨床研修が必修化されたのに伴い、現在全国の臨床研修指定病院で、医科系大学を卒業した後の2年間を、スーパーローテイト方式で幅広い基礎的診療技能を修得する、いわゆる新臨床研修制度が実施されています。

 当センターでは、「次の世代を育み、無限の可能性をひきだす」病院理念に則り、熱意あふれる多くの指導医により、新制度発足の昨年度は8名の研修医、本年度は22名の研修医を、明日の医療の担い手として育成すべく、その内容の充実に努力しております。

 

 さる6月14,15日に、新臨床研修制度の国の直接責任者である厚生労働省医政局医師臨床研修推進室の宇都宮啓室長が、当センターを視察されました。 14日には、今後の日本の医師像を変えると言われている新医師臨床研修制度の全国的状況と、これからのあり方についてご講演をいただきました。 当センターの研修医、指導医、コメディカルはもちろん、山口大学や県内の研修病院の指導医、さらには医学部5,6年生も多数参加し、ご講演の後の多くの質問にも一つ一つ丁寧にお答えいただきました。


宇都宮啓氏による講演。会議室一杯の参加者。

 翌日には、研修医を囲みミーティングがもたれ、研修医、指導医一人ひとりから当センターの研修状況を聴かれ、現場が抱えているさまざまな問題にも具体的かつ前向きなご指導をいただき、とても有意義な機会を持つことができたと感謝しております。 「当センターの研修医の眼は輝いている」と感想を述べられ、「全国的にもトップレベルの研修施設となっている」とお褒めの言葉を頂戴し、さらなる研修内容の充実に新たなる情熱を持つことができました。

 研修医が有意義な毎日を過ごせるよう、当センターでは職員一丸となって指導にあたっております。 未知の患者さんとの一瞬の邂逅に、医師として自らが持つすべてを投じるために、確かな知識と技術に裏づけされた謙虚な自信と、それ以上に病む人に対する思いやりの心と研ぎ澄まされた感性を涵養していきたいと考えております。 医療と教育、この両者に共通するものは相手への愛であり、有能な医師を育て上げうる病院こそが、病気を診るのではなく、病む人を診る、全人的医療の提供できる病院であると確信しております。

 今後とも当センターの研修に対しまして、ご理解とご支援のほどよろしくお願い申し上げます。



医師臨床研修制度の現況と後期臨床研修のスタート
(平成18年6月記す)

 新医師臨床研修制度がスタートして2年が経ち、この春初めて全国の臨床研修 病院や大学病院から本臨床研修を終了した3年目の医師が生まれました。 当センターでも2年間の、あるいは山口大学から派遣され1年間の研修を終えた14名の研修医が、自信と希望にあふれ巣立っていきました。

 この新制度は、社会のニーズを背景に、”患者を全人的に診ることができる総合的な基本診療能力”を身につけることを目的として、36年ぶりの大改革となったものです。 この期間の研修は、個人の将来の医師像を大きく左右する極めて重要なものであると考えられます。

 当センターの研修カリキュラムは、厚生労働省の定める内科をはじめ各科のスーパーローテートはもちろん、2年間すべての期間を通して救急医療や総合診療に携わることができ、加えて、地域保健・医療研修では、沖縄本島や壱岐対馬あるいは国立保健医療科学院など幅広く研修できるよう配慮されております。 また、知識・技能に偏ることがないよう、人格の涵養、態度面の育成にも力を入れております。 ”意志と人格を備えた人物との触れ合いは、人生のスタートを切る際に役立つ”、という言葉がありますが、多くの有能な指導医に恵まれた研修環境にあり、その中から自分自身の医師像の礎を築き上げてほしいと思っております。卒後30~40年になる大先輩が、昼夜分かたず小児救急医療に打ち込んでいる真摯な診療姿勢に、また、土日も祝日も関係なく毎日患者さんの状態や血糖コントロールに気を配り回診されている姿に、あるいは若手の医師でありながら、患者さんだけでなく、その家族や共に働く周囲の医療人までもが引き込まれる人間性に、研ぎ澄まされた感性をもってその一部でも吸収してほしいと念じております。

 今年度採用した1年目の研修医は14名で、2年目の研修医を合わせると総勢で23名となり、また、今年度は初期研修を修了し、更に専門医を目指す、いわゆる後期臨床研修がスタートいたしました(独立行政法人国立病院機構では、”専修医”と呼びます)。当センターでは総合診療内科、外科、循環器科、脳卒中診療科、整形外科からなる各コースを設定し、いずれも3年間から5年間の期間に認定医や専門医の取得を目指します。 当センターでも1名の専修医を総合診療プログラム内科コースで採用いたしました。 現在一緒に学び、働く彼らは病院の宝であり、全職員一丸となって教育に情熱を傾けているところであり、当センターの研修・教育に対しまして、更なるご理解とご指導をお願い申し上げます。

 

4年目を迎えた新医師臨床研修制度
(平成19年5月記す)

~アイオワ指導医セミナーに参加して~


 平成16年4月に新医師卒後臨床研修制度がスタートして、早くも3年が経ちました。当センターでは今年度、研修1年目19名、2年目10名、計29名が日夜研修に励んでおり、これまでの研修終了者を合わせると実に70数名になります。 卒後臨床研修に関しましては、病院長以下、全職員一丸となり、また、協力病院や下関市医師会、そして何より患者さんの温かいご支援を賜り、順調に軌道に乗せることができましたことを衷心より感謝いたしております。 関係各位に厚く御礼申し上げます。

 そこで、この2年間のいわゆる初期研修終了後の研修体制の整備が急務となってまいりました。
当センターではすでに国立病院機構本部の認定を受けた後期研修プログラムを各科作成しておりますが、さらなる研修内容の充実を図る目的で、”第2回アイオワ指導医セミナー”(通称:ハワイセミナー)に参加してまいりました。
本セミナーは平成19年2月18日から一週間、ワイキキのハワイアットリージェンシー・ホテル&スパで開催されました。 私自身、年数回、国内のワークショップなどをお手伝いさせていただいておりますが、久しぶりに教える側から研修を受ける側に回りました。 実りある研修・教育に欠くべからざる条件とは・・・魅力あるプログラム、情熱溢れる指導者、研修参加者自身のやる気、そして快適な環境などでありましょう。
まさに、いまの卒後臨床研修に共通する項目ではないでしょうか。 この度のハワイセミナーでは、アイオワ大学名誉教授の木村健先生が用意してくださった素晴らしいプログラムに沿って、情熱溢れるアイオワ大学の各科研修プログラム責任者8名が、真摯な態度で、素晴らしい講義をしてくださり、まさに実り多い研修となりました。
もちろん、参加者全員、真剣そのもので、ともに臨床研修を支えていく仲間として、素晴らしい邂逅であったと感謝しております。

 また、レセプションでは木村健先生に魅力ある研修について有意義なお話しをお伺いし、先生自ら当センターの研修プログラムにお力添えを戴ける事になりました。

   当センターでは、初期研修から後期研修まで幅広く、”病を診る”のではなく、”病む人を診る”、全人的医療の遂行できる”良医”を育て上げるという理念に則り、更なる研修内容の充実に努めてまいります。

 今後とも、当センターの研修・教育に対しまして、ご理解・ご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。

 

洋上から臨むダイヤモンドヘッド

ハワイセミナーにて

アイオワ大学 木村名誉教授と共に


ともに希望を語り、誠実を胸に刻む
(平成20年5月記す)

~新医師臨床研修制度5年目~


 平成16年にスタートした新医師卒後臨床研修制度も、今年で5年目を迎えました。
当センターでは今年度も、研修医1年次15名、2年次17名の計32名が研修に励んでおり、これまでの研修修了者を合わせると実に78名になります。在籍する研修医の出身地、出身大学は、年を重ねるごとに多岐に渡り、出身大学別では山口大学、九州大学など、今年度だけでも10以上の大学から情熱溢れる多くの研修医が集まってまいりました。研修医同士非常に仲がよく、互いに励まし、助け合い、そして刺激し合って研修している、まさに切磋琢磨している状況といえましょう。

 

ベッドサイドでの厳しい研鑚

 フランスの詩人ルイ・アラゴンが”教えるとは希望を語ること、学ぶとは誠実を胸に刻むこと”といったように、ともに誠実を心に刻み、そしてともに希望を、夢を語り合える、当センターでは当初よりそのような研修を目指してまいりました。日々の研修、診療において得られた知識や技能だけでなく、多くの仲間、指導医あるいは患者さんとの出会いや語らいから、色々な事柄を学びとり、人間的にも成長してもらいたい、それがわれわれ指導医の最大の願いでもあります。

 他者のさまざまな考え方や経験に心から学び、自らが対峙、格闘するとき、その考えや経験、あるいは事実に”誠実”に向かい合う態度を養わなければなりません。学びにおける”誠実を胸に刻む”とは、非常に難しいことではありますが、研修の質と量を規定するのは、この知的な誠実さそのものであると考えます。
言葉をかえれば、すでに経験した事柄や、過去に学んだ事柄でも、目の前の患者さんや現在の病態に当てはまるのか、あるいはその知識そのものが正確かつ最新で、エビデンスに基づいているものなのか、常に自問してみる”謙虚さ”が必要なのです。

 さらに、誠実の”誠”とは、”至誠、天に通ず”にもありますように、”きわめて純粋なまごころ”という意味合いがあります。その意味でも、学びにおける”誠実”は、研修期間中の人格涵養、医師としてのスタートという点で、最も大切にしていきたいものであると考えます。


本年3月に2年間の臨床研修を修了した
10人の若い医師

 今春、新病院より一足早く、研修医専用宿舎が竣工いたしました。ハード面での整備はもちろんですが、教育とは”人と人”であり、皆様のお力添え無しには心の通った真の研修は成しえません。今後とも、当センターの研修・教育に対しまして、ご理解・ご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。



総合診療マインドを培う
統括診療部長 佐藤 穣 平成21年7月記す

今年も新たに18名の研修医 コミュニケーション能力・リーダーシップ発揮


 先日80歳の女性が、転倒した後に歩けなくなったと救急搬送されてきました。ご主人のお話では、女性は糖尿病と高血圧のある方で、最近は家の中でぼーっとしていることが多く、食事もあまり食べなくなったとのこと。
検査を進めてみると予想を超えて様々な病態がわかってきました。非ケトン性高浸透圧性昏睡、慢性硬膜下血腫、左大腿骨頚部骨折、低ナトリウム血症、栄養障害、仙骨部褥瘡、そして老々介護の実態。

 高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多く、それらが様々な形で日常生活に影響してきます。高齢化が進み、この方のような複数の問題点を持った患者さんが増えています。従来の医療のように、臓器別専門医がそれぞれ専門の臓器を「機械のパーツ」のように診るだけではなく、一人ひとりの患者さんをトータルに診ることが必要です。さらに病気がコントロールできるようになっても、退院後の生活まで考慮した対応が必要です。

 

救急医療への適切な対応が医療の基本技能の1つ(ER24)

 これからの医療では、患者さんの抱える心身両面にわたる複数の問題点を、その重要度、緊急度、問題解決性という3つの視点からとらえ、専門医や医療スタッフと連携できるコミュニケーション能力とリーダーシップを持った医療者が必要です。このような資質を私は「総合診療マインド」と呼んでいます。

 先述の80歳の女性は、総合診療部が親科となり、脳神経外科、整形外科、糖尿内分泌科、栄養サポートチーム、感染制御チーム、褥瘡チーム、ソーシャルワーカーの協力で、自宅退院が可能な状況になりつつあります。総合診療マインドを持った全病院職員が、それぞれのプロフェッショナリズムと意欲を持ち、皆で一人ひとりの患者さんを支え生きる希望を沸き立たせる温かい医療を提供したいと思っています。


病気をあらゆる角度から再検証する
臨床病理カンファレンス

 当センターは今では全国的にも有数の臨床研修病院として、多くの医者の卵である研修医を育てています。当センターから巣立っていった彼ら彼女らは、しっかりと「総合診療マインド」を持った医師として全国各地で活躍しています。そして今年も新たに18名の新人研修医が仲間に加わりました。明治維新発祥の地、下関から着実に総合診療マインドが広がっていきます。これからの医療には夢があります。



21世紀型研修病院へ
(平成22年5月記す)

 医師卒後臨床研修制度は、昨年5月に「臨床研修に関する省令及び関連通知の一部改正」が行われ、今年4月から見直し後の制度に基づいた研修が開始されました。当センターでは今年度も、研修医1年次18名を迎え、2年次17名と合わせて計35名が日夜研修に励んでおります。

 

新たに18名の研修医

 医師臨床研修制度の見直しでは、研修病院の特色と研修医の希望に応じ、研修プログラム内容を柔軟に構築できるようになりました。しかしながら、制度の根幹、すなわち理念と2年間の到達目標は何も変わっておりません。今後は、研修プログラムあるいは臨床研修病院そのものの指定基準が強化され、将来的には第三者機関による評価がなされようになってくるでしょう。

 さらには、病院運営にも変革が求められてまいります。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のトマス・マローン教授の提唱する、個人の自由、創造性、価値観を中核に据えた組織のあり方、すなわち病院という組織においても「命令と管理」から「調整と育成」へという、21世紀型病院経営戦略がひとつの方向性を示していると考えます。当センターでは、医師臨床研修制度開始前から、病院の理念に、「次の世代を育み無限の可能性を引き出す。」を掲げ、自発的活動を通して次世代をたくましく育て、当センターの将来を託するとともに、国民から高い評価を受ける医療人として広く社会に送り出すことを使命とし、臨床研修に力を注いでまいりました。 



日野原 重明 聖路加国際病院理事長と共に

教育研修ブランドの形成


 同じく、MITスローン経営大学院のグレン・アーバン教授は、アドボカシーマーケティングを、「顧客主導の時代に信頼される企業を目指すには、公正公平なあらゆる情報を開示し、中立的なアドバイスに徹するべきである。顧客を徹底的に支援(アドボケイト)することによって、顧客の長期的な信頼を得ることができる。一見、常識に反するようだが、自社製品が他社製品よりも劣る場合は、自社製品よりも他社製品を正直に勧めるくらい、顧客に対して透明かつ誠実に対応するべきである。」と定義しています。

 アドボカシー(advocacy)とは、擁護、支援、代弁といった意味です。「研修・教育」という機能に着目すると、研修医や医学生がアドボケイトすべき対象となってまいります。医師臨床研修マッチング制度そのものがアドボカシーマーケティングといえるかもしれません。

 研修医や学生の持つ情報収集、比較評価および意思決定能力がインターネットなどによって強化され続けることは明らかであります。かかる情勢の中での21世紀型臨床研修病院は、「信頼」を基礎とし、研修医のアドボケート(代弁者)として長期的な信頼関係を構築する必要があります。

 マーケティングの世界では、「消費者の心理や感情的背景に深く踏み込むことなく、ただ表面の現象だけを追う企業、体面を取り繕うことだけしかしない企業は、顧客を徹底的に支援することなど到底無理であり、顧客の深い信頼など得られるはずがない。」とも謂われておりますように、まず、研修医を深く理解することを基に、研修医をもっと成長させたい、感動させたいという行動理念が病院という組織全体にしっかりと浸透され、それを地域に発信していくことが大事だと考えます。




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