救命救急から慢性期まであらゆるニーズに対応するハイブリット型病院

独立行政法人国立病院機構 北海道医療センター

各診療科のご案内

迅速で適切な総合医療に取り組んでいます。

結核・非結核性抗酸菌症について

<ご紹介いただく医療機関の皆様へのお願い>
現在の感染性の評価をして当科外来での対応を決める必要がありますので、必ず事前の連絡(地域連携室へ)をお願いします。診療情報提供書持参のみで直接受診を指示されることは当院の院内感染対策の面からも好ましくありませんので行わないようにお願いいたします(喀痰塗抹陽性の肺結核など緊急の場合は直接結核担当の医師宛電話でご連絡下さい:病院代表番号へ 011-611-8111)。

1.結核

結核は未だに日本でも年間1万人以上が発病する感染症です。世界的には2014年の統計では1000万人弱の方が発病し、死因としては最大の感染症となっています。感染してから発病まで数ヶ月から数年(~数十年)と潜伏期間が長く、診断も難しいことが多いため発見が遅れることが少なくなく、集団感染が問題となることがあります。当院では国立療養所の時代から結核医療に積極的に取り組んでおり、道央医療圏で少なくなった結核の入院治療が可能な医療機関として診療を行っております。

基本的に当院は結核の診断がついた場合に、他の医療機関からご紹介いただいて主に入院治療を行っておりますので、下記のような場合はかかりつけ医かお近くの呼吸器内科・呼吸器科にご相談下さい

① せきやたん、微熱が長引いている(2週間以上)
② たんに血が混じった
③ 周囲の人に「結核」と診断された人がいるので心配(通常感染している危険が高い場合は保健所の接触者健診の対象になります。ご心配な場合は最寄りの保健所の結核担当者にまずご相談下さい)

結核の情報については結核予防会ホームページ(http://www.jatahq.org/index.htmlから、「結核について」のタブをクリックすると表示されます)もご参照下さい。


2.非結核性抗酸菌症

近年増加している感染症で、多くが肺に病気を起こします(肺非結核性抗酸菌症)。「非」結核性ということで、ヒトからヒトへの感染は通常ないと考えられていますが、結核菌と同じグループの抗酸菌が起こす病気であり、以前から結核専門医が診療に取り組んでおります。当院でも結核医療と同様に以前から診療に当たっており、道内では数少ない手術療法も手がけている施設の一つです。結核診療をしていない他院の呼吸器内科でも数多く診療されていますが、お困りの場合はセカンドオピニオン外来も行っておりますので現在担当の主治医にご相談下さい。
 以下にQ&Aとしてよく質問される事柄についてお答えしていますので、ご参考にしていただければ幸いです(2017年4月版)。

Q1. 抗酸菌とはどのような菌ですか?
A1. 細菌を顕微鏡で検査するときに行う染色法にはいろいろなものがありますが、染色法の中に最後に酸を使って脱色する方法があり、この方法でも脱色されず染まったままでいる性質(抗酸性)の菌のことを「抗酸菌」といいます(酸に強い、酸をかけても死なないという意味ではありません)。抗酸菌のことを細菌学的な名前では「マイコバクテリウム(Mycobacterium)属」といいます注。一般の細菌と比べると増える速度が遅い、消毒薬にやや強いなどの違いがあります。
抗酸菌の中で昔からよく知られている代表的(定型的)な菌は肺結核をはじめとする病気を引き起こす結核菌ですが、これ以外にも多くの種類(菌種)があります。結核菌以外の抗酸菌をまとめて「非結核性抗酸菌」と呼んでいます(以前は「非定型抗酸菌」)。
注:くわしく言うとマイコバクテリウム属以外にも抗酸性を示す菌種はありますが(ノカルジア属など)、通常は抗酸菌=マイコバクテリウム属、とされます。
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Q2. 結核菌と非結核性抗酸菌との違いは?
A2. 結核菌は人間や一部の動物の体の中だけでしか生息することができず、自然環境の中で増えることはできませんが、非結核性抗酸菌はおもに土壌や水中などの環境の中で生息しています(水環境に関しては自然の水辺よりも噴水、風呂など人工的なものに生息しやすいとされています)。したがって結核菌は人間の体内で生きていけるように適応した抗酸菌と考えられています。非結核性抗酸菌は多くの種類がありますが人間に病気を起こす菌種は一部であり、また毒力も弱いと考えられています。
また結核菌は人間から人間へ伝染する事で生息範囲を広めていきますが、非結核性抗酸菌では人間から人間への感染はまれに報告があるものの、非常に体の抵抗力が低くなっている人以外では通常は心配する必要はないとされています。
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Q3. 非結核性抗酸菌の種類とは?
A3. 現在でも新しく発見される非結核性抗酸菌があるため種類は年々増加しており、今までで百数十種類以上の菌種が報告されています。
その中で一般に人間に病気を起こすとされる菌は二十種類程度ですが、日本ではそのほとんどを
1、アビウム菌、イントラセルラーレ菌(北海道では多くがアビウム菌)
(Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare)
→病像が似ているため合わせてMAC(マック): M. avium Complexと総称することもあります。
2、カンサシ菌
(Mycobacterium kansasii)
が占めており、その他にも以下のような菌が病気を起こすことが知られています。
M. abscessus、M. xenopi、M. scrofulaceum、M. gordonae、M. szulgai、M. fortuitum、M. chelonae、M. haemophilum、M. marinum、M. shinjukuense   など
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Q4. 非結核性抗酸菌症の診断は
A4. 非結核性抗酸菌がヒトに感染することで引き起こされる病気のことを非結核性抗酸菌「症」といいます(肺に起こすと「肺」非結核性抗酸菌症)。長い名前のため英語の頭文字をとってNTM症ということもあります。アビウム菌、イントラセルラーレ菌が病気を起こす場合を別に「MAC症」(肺の場合は「肺MAC症」)と呼んでいます。
結核の場合は結核菌が人間周囲の環境に生息することがほとんどないため、通常は痰や膿など人間由来の検査材料から結核菌が一度でも検出されると診断がつきますが、非結核性抗酸菌は土や水の中でも見られたり、病気を起こしていないのに肺や気管支に住みついていたりすることもあるので、診断の条件としては痰などから複数回菌が見つかることや、病気の部分の顕微鏡検査(病理検査)で特徴的な結果が得られることなどが求められ、結核に比べ少しきびしいものとなっています。
胸部レントゲン写真やCT検査で、非結核性抗酸菌症でよく見られるタイプの影が現れているかどうかも診断の重要な条件のひとつです。
最近MAC(アビウムとイントラセルラー菌)については血液検査(抗体検査)が利用できるようになっていますが、100%ではないこと、他の菌種でも陽性となるものがあることなどから補助的な診断方法となっています。ただしこの検査で陽性となるとMAC症の可能性が高いと考えられます。
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Q5. 非結核性抗酸菌症の症状は?
A5. 菌の種類によっても多少異なりますが、多く見られる症状としては長く続くせき、たんや血痰があります。血痰はこの病気の方には比較的多く見られる症状です。病気が進行すると肺の障害により酸素が十分取り入れられなくなり酸素吸入が必要となる呼吸不全を起こす方や、弱くなった肺の表面がパンクして肺がしぼんでしまう病気である気胸を起こす方もおられます。初期のうちは発熱がある方はあまり多くないようですが、進行すると微熱や高い熱がみられることもあります。最近は症状が見られないうちに健康診断の胸部レントゲンやCT検査の異常で発見される方も増えています。
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Q6. どんな人が非結核性抗酸菌症にかかりやすいのですか?
A6. 菌種によっても違いますが、昔肺結核にかかってその変化(瘢痕:きずあと)が残っていたり、COPD(肺気腫や慢性気管支炎)、気管支拡張症、肺のう胞症など肺に病気があったりするとその部分に非結核性抗酸菌が住み着いて病気を起こしてしまうことがあります。また明らかな肺の病気の経験のない方にも非結核性抗酸菌症が起きることがありますが、この場合は中高年の女性に見られることが多く、原因菌としてはMACによるものが多いようです。なぜ中高年の女性に多いかについてはよくわかっていません。その他、ほかの病気で免疫力(体の抵抗力)が落ちている方や、免疫力を下げる作用のあるクスリ(一部のリウマチ治療薬、副腎皮質ホルモン:ステロイド、抗がん剤など)を使っている方にもおきることがあります。
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Q7. MAC(アビウム菌、イントラセルラーレ菌)症の治療法は?
A7. 薬剤による治療では、結核治療で使うリファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)の内服薬と、肺炎などでも使われる抗生物質のクラリスロマイシン(CAM)の内服薬を使用する3剤併用療法が、また肺に空洞が見られたり痰中の菌量が多かったりする場合は内服剤に加えてストレプトマイシン(SM)かカナマイシン(KM)という注射薬のうち1剤の筋肉内注射を使用する4剤併用療法が現在の所標準治療となっています。多くのクスリを組み合わせるのは薬の効果を高めるためとともに結核の場合と同様にクスリの効きづらい耐性菌の発生を抑え、再発を防ぐ目的のためです。しかし結核と比べるとクスリの効き目は今ひとつで、効果があっても最低でも2年以上(痰から菌がなくなってから1年以上)は治療を続けなければいけませんし、残念ながら再発も結核よりはるかに多いのが現状です。現在の所、肺のMAC症はふつうの肺炎やかぜのように「治してしまう」病気ではなく、高血圧や糖尿病のように「うまくつきあってゆく」病気に近いといえます。

<その他の治療薬> 再発して一番中心のクスリであるクラリスロマイシン(CAM)が効かなくなってしまった場合は代わりに通常の肺炎などでも使うニューキノロン系という抗菌薬を使うことがあります。また他の治療薬に影響を与えることが少ないリファブチン(RFB)をリファンピシンの代わりに使用する場合もあります。そのような治療が必要となった際は抗酸菌症治療に習熟した医師の診療を受けて下さい。

<外科治療> 他の治療法としては手術療法があります。クスリによる治療を開始して3~6ヶ月程度しても病状の改善が見られなかったり、喀血(咳とともに血液をはく)や病気の部分に別な菌による肺炎、気管支炎を繰り返したりする場合、真菌症を合併した場合などは原因となる病気の部分を取り去ってしまう事で症状に対する治療になるとともに肺の中の菌の量を減らしクスリを効きやすくする効果を期待して行われます。必ずしもすべての病気の部分を取り除いてしまうことを目的にしてはいませんので、病気が両方の肺など広い範囲にあっても手術を行うことはあります。また、病気の範囲が比較的狭くてすべて取り切れるように見えても見えないところに菌が潜んでいる可能性がありますので、せっかく手術してもほかの部分に再発する可能性もあり、必ず治る(根治する)という治療法ではありません。しかしクスリを数ヶ月使用しても十分な効果が得られず不都合な症状が続く場合は考える価値がある治療法です。

<標準的治療を行わない場合> またクスリの副作用などで十分な治療ができない場合は標準的治療を行わなかったり治療を中止したりするのも一つの考え方です。とくに御高齢の方で多数のクスリの服用がむずかしい場合や、クスリの副作用のために食欲が落ちる場合は、無理をして治療を続けて栄養状態や健康状態の悪化をまねいてしまうよりは、むしろクスリをやめて十分な栄養をとり、健康状態を良好に保つほうが良い場合もあります。やはり、「うまくつきあっていく」病気といえます。
 通常の治療薬を使用しない場合は慢性の気管支炎の一部などで使われるエリスロマイシン(EM:抗生物質ですが、少量使用することで痰を減らしたり、炎症を抑えたりする効果があるとされています)や、漢方薬を使用することがあります。

<前記の薬の主な副作用>
リファンピシン(RFP)
    微熱、全身倦怠感、悪心、食欲不振、肝臓障害、血液障害(白血球減少、血小板減少=出血傾
    向)、発疹(かゆみ)、手のこわばり、(尿、涙などに赤く色がつく)
エタンブトール(EB)
    視力障害(多くはないが重要:使用中は当科では定期的な眼科検診を受けて頂くことにしていま
    す)、足のしびれ、肝臓障害、発疹(かゆみ)
ストレプトマイシン(SM)・カナマイシン(KM)
    めまい(SM)、聴力障害(KM)、腎障害
クラリスロマイシン(CAM)
    胃部不快感、食欲不振、下痢、発疹
*胃腸症状や発疹(かゆみ)以外はそれほど多く見られる副作用ではありません。
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Q8. その他(MAC以外)の非結核性抗酸菌症の治療は?
A8. カンサシ菌による非結核性抗酸菌症の場合は通常、一般に使われる抗結核薬のうちイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)の3剤で治療を開始します。治療期間は痰から菌が消えてから12ヶ月間で終了ということで、おおむね1年半以内で終えることができます。再発もMAC症から見るとはるかに少なくしっかりとクスリがのめれば比較的治りやすい菌種といえます。
その他の菌の場合は菌種により治療法がかなり異なり、また日本での発生が少ないため標準的な治療法が確立されていません。海外や日本における治療経験の報告を参考に治療を進めていく必要がありますので主治医とご相談ください。
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Q9. 肺アビウム(MAC)症といわれましたが、日常生活で何か気をつけることはありますか?
A9. 
1. 薬剤による治療を受けている場合は決められた量、回数の薬を確実に服用して下さい。副作用が疑われ服用が困難な場合は出来るだけ早く主治医に相談して下さい。禁酒、禁煙は副作用増強防止、症状の悪化防止の面から重要です。
2. 他の疾患の治療を受けるもしくは受けている場合は、他疾患の担当医に肺非結核性抗酸菌症であることと服薬内容をお知らせ下さい。免疫に影響を与える薬(副腎皮質ステロイドなど)等により肺MAC症が悪化したり、薬剤同士の影響により薬の種類や量の変更が必要になったりする場合があります。
3. アビウム菌は土や水の中で生息しています。これらの菌が直接ヒトに感染するかどうかは明らかにはなっていませんが、園芸などで土を扱うときはマスクを着けて作業されることをお勧めしています。また、シャワーヘッドやお風呂のお湯の噴き出し口にアビウム菌が住み着いていますので定期的な清掃をお勧めしています。清掃の際にもマスクの使用をお勧めします。マスクは、理想的には微粒子も防ぐことが出来るN95マスク(最近ドラッグストアなどでも扱うようになりました)を勧める専門家もいらっしゃいますが、やや値段も高いですし、隙間のないようにしっかり付けると息が苦しくなるので長時間付けるのが難しい場合は通常のマスクでも付ける意味はあると思います。
4. 他の慢性の呼吸器の病気でも見られますが、この病気の特徴の一つに体重減少があります。あまりやせてしまうと息切れの進行などで悪循環となりますので十分な栄養摂取を心がけて下さい。栄養剤(いわゆる「栄養ドリンク」ではなく、食事を補う栄養素を含んだもの)の併用なども一つの方法です
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