
Respiratory organ surgery
呼吸器外科
姫路医療センター呼吸器外科は、1986年に開設されました。以来、肺癌をはじめとする呼吸器疾患の外科治療に取り組み、これまでに約6,000例(肺癌2,650例)の手術症例を経験しています。
私たちは、高度で安全な外科治療を行うことをモットーにしていますが、一方で、慣習的に行なわれてきた診療行為の中には多くの無駄があることにも気づいてきました。それで、必要度の低いものはできるだけ省き、本当に必要なものをなるべく患者さんの負担にならないように提供するために、次のような点で努力しています。
①迅速かつ合理的な治療計画により一日も早い社会復帰を目ざしています。2007年の当科の平均在院日数は8.4日です。肺癌症例の当科初診から手術までは2週間以内で、癌を抱えたまま手術の順番を待つという患者さんにとって不安な日々をできるだけ短くするよう努めています。
②胸腔鏡を用いた低侵襲手術(VATS : Video-Assisted Thoracoscopic Surgery)を積極的に取り入れています。胸腔鏡手術は従来の呼吸器外科のイメージを一変させたといっても過言ではありません。人にはなかなか理解してもらえない術後の痛みに苦しむことは非常に少なくなりました。現在は全手術の80%以上を胸腔鏡で行っています。

③術後のQOL(Quality of Life 生活の質)を重視し、根治性を損なわない範囲で肺機能を極力温存する術式を選択しています。具体的には、早期肺癌に対する肺区域切除の適用、気管支形成術(後述)による肺葉の温存などです。
④原則としてすべての手術を無輸血で行ないます。大手術には輸血がつきものというわけではありません。同種血輸血は、既知および未知の病原体の感染の危険ばかりでなく、免疫能を低下させて肺癌術後の再発率を高めることが知られています。
⑤総合病院の利点を生かして他科の協力を得つつ、進行癌に対する拡大手術や、リスクの高い合併症を持つ症例の手術にも積極的に取り組んでいます。
当科の特徴ともなっている肺癌に対する胸腔鏡下肺葉切除術は、単一施設としては日本で最も多くの症例を持っています。
スタッフ紹介
The staff's introduction
| 役 職 | 氏 名 | 卒業年度 |
|---|---|---|
| 呼吸器センター部長 | 宮本 好博 | 1976年(昭和51年)京都大学 |
| 呼吸器外科医長 | 植田 充宏 | 1987年(昭和62年)京都大学 |
| 医 師 | 松岡 勝成 | 1990年(平成 2年) 京都大学 |
| 医 師 | 今西 直子 | 1999年(平成11年) 京都大学 |
| 医 師 | 小島 史嗣 | 2001年(平成13年) 京都大学 |
| 専修医 | 黒田 鮎美 | |
| 専修医 | 康 あんよん |
外来担当表及び休診日のご案内は、こちらをご覧ください。
VATS : 胸腔鏡下肺葉切除術・縦隔リンパ節郭清術
従来の肺癌の手術は20cm前後の皮膚切開で筋肉を切断し、肋間を開胸器で開大(これが術後の痛みの大きな原因)しなければなりませんでしたが、胸腔鏡を用いることにより、3~4cmの皮膚切開で筋肉を全く切断することなく、また、肋間を無理に開大することなく肺葉切除が行えるようになりました。弱点と考えられていたリンパ節郭清も器械や技術の進歩に伴い従来の開胸手術以上にきちんとできるようになっています。進行癌で他臓器の合併切除が必要な場合や、次に述べる気管支形成術などが必要でない症例はほとんど胸腔鏡手術が可能です。2007年度の肺癌手術260例のうち215例(83%)が胸腔鏡手術でした。この方法で手術をすれば痛みは軽度で、術後3日から7日(中央値6日)で退院することができ、不愉快な後遺症もほとんどありません。さらに、この方法で手術をした方が癌の再発率が低いという報告もあります。低侵襲ゆえに術後合併症の頻度も低く、開胸術に比べてより安全な術式であると考えています。ただし、胸腔鏡手術は、高解像度画面の恩恵を受けているとはいえ立体視はできず(2次元画像)、また、触覚を用いることのできない特殊な世界での手術ですから高度の技術を要します。また、限界もあります。特に、術中出血が生じたときや癌の根治性を損なう恐れがある場合は躊躇することなく開胸手術に移行します。当科では肺癌に対して約1,100例の胸腔鏡下肺葉切除術の経験がありますが、48例(4.4%)の症例が開胸手術に移行しました。それらの症例を含めて、胸腔鏡下肺葉切除術(+開胸術移行例)の手術関連死亡(手術死亡+在院死亡)は2例(0.18%)でした。

(注)当科で行なっている胸腔鏡手術(完全鏡視下手術, Pure VATS)は多くの施設で採用されVATSと呼ばれている小開胸直視を主体とし、胸腔鏡を補助的に用いる手術とは異なります。直視下手術は開胸創が小さくなればなるほど手術の難易度は上がり、手術精度は下がります。われわれは、すべての操作をモニター画面だけを見て行なうトレーニングを積んでおり、最小の創(最小の侵襲)で従来の開胸術に劣らない精度の手術を行ないます。
気管気管支形成術
肺癌の手術では、原則として腫瘍の存在する肺葉(右に3つ、左に2つある肺の「袋」)をまるごと切除しますが、各肺葉に枝分かれする太い気管支付近にまで病変が及んでいる場合、根治性をめざして肺葉切除を行おうとすれば隣接する肺葉を犠牲にせざるを得ません。肺は再生しませんので切除量が大きくなればなるほど手術後のQOL(生活の質)は低下します。しかし、このような場合に、病変の及んでいる気管支をいったん切り離して、後で健康な気管支をつなぎ合わせることにより、隣接する肺葉を温存することができます。これを気管気管支形成術と呼び、当科では従来この手技を積極的に用い、手術で失われる肺の大きさを最小限にする努力をしてきました。切除の難しい気管分岐部の癌に対しても、できるだけ一側肺全摘を避け、健康な肺を温存できるよう、新しい手術方法も開発しました(二連銃変法による気管分岐部再建手術)。さらに、最近では肺葉よりも小さい肺区域レベルでの気管支形成術も行なわれています。これまでに当科で行った気管気管支形成術は330例で、そのうち肺癌に対するものは286例(肺癌手術の10.7%)でした。


