第7回健康講座このページを印刷する - 第7回健康講座

第7回健康講座

○ 講 師: 国立療養所青野原病院呼吸器科医長 中垣 嘉信
○ 演 題: 『インフルエンザの予防と治療』
○ 日 時: 平成12年11月16日(木) 14:00~15:30
○ 場 所: 病院内理学療法室・訓練棟内

"風邪は万病のもと"といいます。一般に"風邪"とは、主にウィルスの感染によって鼻咽頭に炎症が起き、鼻汁、咽頭痛、咳、痰など一連の症状をおこす症候群を指します。
インフルエンザは風邪症候群の一群に属しますが、別名、流行性感冒とも呼ばれ、冬季(12月~3月)に流行します。突然の高熱で発症し、筋肉痛、全身倦怠、食欲の低下など強い全身症状をともないます。また、二次的に細菌性の肺炎を起こすことがあり、ときには脳症を起こすことが特徴的です。特に高齢者、糖尿病、心肺疾患を持病としている場合、肺炎などの合併症を引き起こしやすいため、重症化し、治療が遅れると致命的になることがあります。

なぜ冬季にインフルエンザは流行するのでしょうか?インフルエンザウィルスは空気が乾燥し冷たくなると活発になる。反対に、ヒトの鼻、咽頭、気管支の粘膜は乾燥、冷気によって、その防御機能が低下する(血流の低下、繊毛運動の減弱などによる)。さらに、冬場は保温のため部屋を密閉するので、感染の機会が増える。以上の点をふまえて、予防、治療について考えてみましょう。いかに新しい医薬の開発があっても、感染症に対する予防、治療の決め手になるのはヒトのもつ免疫の力です。インフルエンザに負けない体力を維持するために過労を避け、充分な睡眠、栄養を摂りましょう。

  • うがい、手洗いの励行
  • マスクの着用(によって加温、加湿された空気を呼吸できる)
  • 部屋の加湿、加温および換気の励行
  • ワクチン接種(抗体を作っておく)。ワクチンの効果、安全性については実証済みです。1回の接種で十分の免疫が得られます。(なお、当院でもワクチン接種をうけられます。ご希望のかたは病院受付までお問い合わせ下さい。)

発熱の意義、解熱の功罪
聴衆の方から「熱は下げるべきなのか?」という質問がありました。発熱は一種の防衛反応で、これによって免疫の産生能を高めるという事実からすれば、むやみに熱を下げるのは却って病気の治りを悪くする可能性があります。しかし発熱が長時間続くと防衛作用は減弱し、却って生体の抵抗力が弱まる可能性があります。従って結論として、「熱は生体にとって必要な現象だからむやみに下げるのはよくないが、発熱によって身体や精神が必要以上に衰弱した時や長い間高熱が続く時は、解熱を図った方がよい」と考えます。