第4回健康講座このページを印刷する - 第4回健康講座

第4回健康講座

○ 講 師: 国立療養所青野原病院内科医師 森 敬弘
○ 演 題: 『よくみられる肝臓の病気』
○ 日 時: 平成12年4月20日(木) 14:00~15:30
○ 場 所: 病院内理学療法室・訓練棟内

肝臓は重さ1kgにもなる大きな腹部臓器です。肝臓には様々な役割があり、肝臓の病気になるとそれらの機能が低下しいろいろな症状が出現します。しかし肝臓は非常に大きな臓器であり、かなり病気が進行して初めて症状が出現するため「沈黙の臓器」と呼ばれています。ですので肝臓の病気は自覚症状のない時期から自分自身が病気を理解し、しっかり自己管理していく必要があります。
一般の外来診療でよく見られる肝臓の病気は肝臓に脂肪の貯まる脂肪肝、アルコール性肝障害、ウイルス性肝炎、肝硬変、肝臓癌ですが、肝臓病の原因は肝炎ウイルス、アルコール多飲、薬、免疫の異常、先天性の異常、細菌、ウイルス、寄生虫などによる感染症など様々です。それらを鑑別する上で重要なのが血液検査、画像検査.肝生検です。
まず外来で簡単に行うことができるのが血液検査で、健診でも一般に行われておりこの検査で初めて肝臓の病気を指摘される場合も多くあります。画像検査は超音波検査(エコー)と呼ばれる検査をまず行います。この検査は手軽に行うことができ苦痛もなく体に全く侵襲のないもので、肝臓の状態をかなりはっきり知ることができ、肝臓病以外の胆石、膵炎、腎結石などの病気も診断可能です。エコーで十分な情報が得られない場合はCT、MRI、シンチグラム(核医学検査)、内視鏡検査、血管造影を行います。これらでも十分にわからない場合は直接肝臓の組織をとってくる肝生検を行います。これは肝臓の組織をボールペンの先ほどの太さの針でとり顕微鏡でとった組織を観察し診断します。これらの検査をもとにして総合的に肝臓病を診断しそして治療を行います。

肝臓病の中でも現在ウイルス性肝炎は増加していて、それが原因で起こる肝硬変、肝癌もそれに伴い増加しています。その中でもB型、C型肝炎ウイルスは肝癌の原因ウイルスとして注目されていて、日本の肝癌はその背景として95%以上がB型もしくはC型肝炎ウイルスが関与し、そのうちC型が80%近くを占めています。このためウイルス性の肝臓病の場合、このB型、C型肝炎ウイルスをなくす治療(インターフェロン療法など)、もしくは慢性肝炎の進行を抑える治療(炎症や線維化を抑える治療)こそが肝癌の予防に最も有用だと思われます。

肝臓病の原因は様々ですが、多くの方が苦しんでおられる病気の1つです。しかも進行するまで自覚症状がない場合が多く大変やっかいな病気です。しかし医学の進歩によりインターフェロン治療のような新しい治療法で治る病気になりつつあります。ですので健診などで肝臓病が疑われた場合、早い段階で診察をうけ、その後も定期的に受診していくことが肝臓病の悪化を防ぐ最も良い方法だと思います。

【会場での質疑応答】
Q1 以前、肝臓値が高いと言われた。当時インターフェロンの治療を勧められたが、副作用が怖く点滴に通った。これだけで十分ですか?
A1 肝臓値は正常値(40以下)にすることが望ましいです。インターフェロンには確かに副作用がありますので、治療を行う場合は適応があるかどうか十分に検討して決定すべきです。点滴などの治療で肝臓の炎症を抑え、肝炎の進行を抑制することができていれば問題ありません。

Q2 医者に飲酒を止められたが、自宅ではどうしても酒を飲んでしまい、肝炎を繰り返したことがある。本当に禁酒した方がよいのですか?
A2 最近はお酒も1合程度までなら構わないとされています。ただし、必ず「休肝日」を設けるようにしましょう。