中期目標
独立行政法人国立病院機構中期目標
独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。)第29条第1項の規定に基づき、独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」という。)が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を次のように定める。
平成21年2月27日
厚生労働大臣 舛 添 要 一
前文
国立病院機構は、平成16年度の設立以来、職員の意識改革や病院間のネットワーク機能の強化を図りつつ、国の医療政策として担うべき医療(以下「政策医療」という。)の確実な実施と運営の効率化に取り組んできた。
診療面においては、結核、エイズ、重症心身障害、筋ジストロフィーをはじめとする神経・筋疾患、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(平成15年法律第110号。以下「医療観察法」という。)に基づく医療などについて、入院患者数が全国の大きなシェアを占めるなど、重要な役割を担ってきた。
また、財務面では、設立時に承継した約7,500億円の債務を計画以上に償還しつつ、設立2年目以降黒字に転じ、第一期中期目標期間において黒字を計上している。
さらに、臨床研究においても、我が国の治験体制の重要な一翼を担うとともにEBM(エビデンスに基づく医療(Evidence Based Medicine))推進のための大規模な臨床研究を進めている。
他方、近年の医師不足を始め、病院を巡る環境が厳しさを増す中で、国立病院機構は引き続き政策医療を確実に実施しつつ、地域医療に一層貢献することが求められており、その責務は益々高まっている。同時に、固定負債の着実な減少を含め経営基盤を安定化させる必要がある。
このため、本部、ブロック事務所、個々の病院がそれぞれ密接に連携し、一層の創意・工夫を加えつつ、業務を確実に実施し、業務の質及び効率性・自律性の向上を図り、それらを国民が実感できるよう最大限の努力を期待する。
第1 中期目標の期間
国立病院機構の本中期目標の期間は、平成21年4月から平成26年3月までの5年間とする。
第2 国民に対して提供するサービスその他業務の質の向上に関する事項
国立病院機構は、国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療、難治性疾患等に対する医療、歴史的・社会的な経緯により担ってきた医療及び国の危機管理や積極的貢献が求められる医療として別記に示す政策医療分野を中心に、国立病院機構の政策医療ネットワーク(以下「政策医療ネットワーク」という。)を活用しつつ、医療の確保と質の向上を図ること。
あわせて、地域における他の医療機関との連携を強化しつつ、都道府県が策定する医療計画を踏まえた適切な役割を果たすこと。
さらに、我が国の医療の向上に貢献するため、調査研究及び質の高い医療従事者の育成を行うこと。
1 診療事業
各病院において、国の医療政策や地域の医療事情を踏まえつつ、患者の目線に立ち、患者が安心できる安全で質の高い医療を提供すること。
(1)患者の目線に立った医療の提供
患者自身が医療の内容を理解し、治療を選択できるように、診療ガイドラインの活用、医療従事者による説明・相談体制の充実、全病院におけるセカンドオピニオン相談体制の整備、診療報酬の算定項目のわかる明細書の全病院における発行などに取り組むこと。
また、患者の目線に立った医療推進の観点から患者満足度調査を更に改善し、医療の質の向上を図ること。
さらに、疾患に対する患者の自己管理(セルフマネージメント)の観点から患者の支援を図ること。
(2)安心・安全な医療の提供
医療倫理を確保する体制を整備すること。
また、診療情報について情報開示を適切に行うほか、政策医療ネットワークを活用しつつ、医療安全対策の充実を図り、医療事故の防止に努めること。
さらに、これら取組の成果を適切に情報発信すること。
(3)質の高い医療の提供
政策医療ネットワークによる情報・ノウハウの共有化を図りつつ、クリティカルパス、職種間の協働に基づくチーム医療などを推進すること。
また、EBMの推進、政策医療の質の向上及び均てん化の観点から、政策医療ネットワークを活用して診療情報データベースを早期に確立し、民間を含めた利用促進を図るとともに、臨床評価指標の充実に努めること。
さらに、患者のQOL(生活の質(Quality of Life))の向上を図り、特に重症心身障害児(者)、筋ジストロフィー児(者)等の長期療養者については、障害児の療育環境の向上及び障害者自立支援法(平成17年法律第123号)に基づく療養介護事業の体制の強化に努めるとともに、老朽化した施設の計画的整備を図ること。あわせて、通園事業等を推進し、在宅支援を行うこと。
(4)個別病院に期待される機能の発揮等
地域における医療に一層貢献するため、都道府県が策定する医療計画を踏まえ、がん、脳卒中、急性心筋梗塞及び糖尿病の4疾病並びに救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児医療(小児救急医療を含む)の5事業を中心に、地域連携クリティカルパスを始め地域の医療機関との連携強化等を図ること。また、救急医療・小児救急医療については体制強化を図り、周産期医療においてはNICU(新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit))の後方支援機能の強化を図ること。また、災害や新型インフルエンザなど公衆衛生上重大な危害が発生し又は発生しようとしている場合には、迅速かつ適切な対応を行うこと。更に、医師不足地域への協力に努めること。
各病院が担う政策医療について引き続き適切に実施し、結核、エイズ、重症心身障害、筋ジストロフィーをはじめとする神経・筋疾患等に対する医療、医療観察法に基づく医療など他の設置主体では必ずしも実施されないおそれのある医療について、セーフティーネットとしての機能を果たすこと。
また、国の医療分野における重要政策の受け皿となるモデル事業を積極的に実施すること。
2 臨床研究事業
政策医療ネットワークを活用して、EBM推進の基礎となる医療の科学的根拠を構築し、我が国の医療の向上に資するため情報発信すること。
また、高度・先進医療技術の臨床導入を推進すること。
さらに、治験を含め臨床研究を的確かつ迅速に実施するための体制整備を進めること。
3 教育研修事業
政策医療ネットワークを活用し、国立病院機構の特色を活かした臨床研修プログラムやキャリアパス制度により、質の高い医療従事者の確保・育成に努めること。
特に、幅広い総合的な診療能力を有し、全人的な医療を推進できる医師の育成に努めること。
また、国立病院機構が担う医療に対する使命感を持った質の高い看護師の育成を行うとともに、看護教育の変化の中で、医療と一体となった高等看護教育に資する取組を行うこと。
さらに、EBMの成果の普及や医療の地域連携の促進などを目的として、地域の医療従事者及び地域住民に対する研修事業の充実を図ること。
4 総合的事項
(1)個別病院ごとの総合的な検証、改善等
平成22年度末を目途に、個々の病院ごとに、政策医療に係る機能、地域医療事情、経営状況等について総合的に検証し、その結果を公表するとともに、病床数の適正化を含め必要な改善措置を講ずること。
その際、近隣に労災病院等がある場合は、都道府県が策定する医療計画、地理的配置状況や担っている医療機能等を踏まえ、個々の病院単位で診療連携の構築を始め効率的な運営の可能性等について検討を行うこと。
また、厚生労働省において、平成25年度末までに、所管の独立行政法人が運営する病院全体について、それらの病院が果たすべき政策医療及び地域医療における役割を勘案しつつ、政策目的に沿った医療供給体制の最適化を図る観点から、病院配置の再編成を含む総合的な検討を行うため、国立病院機構は必要な協力を行うこと。
(2)エイズへの取組推進
ブロック拠点病院においては、HIV裁判の和解に基づき国の責務となった被害者の原状回復に向けた医療の取組を着実に実施し、エイズ患者及びHIV感染者の増加に適切に対応できるよう必要な取組を進めるとともに、後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針に基づき、中核拠点病院・拠点病院への支援など、引き続きエイズ医療提供体制の充実に努めること。
第3 業務運営の効率化に関する事項
独立行政法人の趣旨を十分に踏まえ、効率的で透明性の高い業務運営を行うこと。
また、国立病院機構全体として収支相償の運営確保を図ること。
1 効率的な業務運営体制の確立
各病院が果たすべき機能や地域事情も踏まえつつ、効率的な業務運営となるよう、組織の役割分担、管理や連携の体制及び人員配置について、弾力的に見直しを行うこと。
また、業務の効率化や職員の意欲の向上に資するよう、適切な業績評価を実施すること。
さらに、入札・契約事務の公正性や透明性の確保を含むコンプライアンス(法令遵守)徹底の取組を推進すること。
加えて、監事及び会計監査人による監査において、入札・契約の適正な実施について徹底的にチェックを行うこととし、常勤監事による監査機能の強化を図るほか、全病院に対し、毎年、会計監査人による会計監査を実施すること。
以上のほか、独立行政法人国立病院機構法(平成14年法律第191号)附則第7条に基づく業務として、「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本方針」(昭和60年3月29日閣議報告)に基づき実施されている「国立病院・療養所の再編成計画」(平成11年3月の計画見直し後のものをいう。)に定められていた再編成対象病院のうち、平成20年度末において未実施となっている2病院について着実に実施すること。
2 業務運営の見直しや効率化による収支改善
各病院が担う政策医療を着実に実施し、経費節減、診療収入等の増収及び医療資源の有効活用を図り、各病院の収支改善を促進すること。
(1)経営力と経営意識の向上
経営人材の確保や経営研修の充実を図るとともに政策医療のコスト分析を行い、経営能力の向上と更なる意識改革を進めること。
(2)業務運営コストの節減等
施設整備や医療機器、医薬品等の購入について、費用対効果や法人全体の債務を総合的に勘案して実施することとし、単価の見直し、品目の標準化、共同入札、後発医薬品の採用などを促進するとともに、業務委託を適切に活用すること。
なお、後発医薬品については、患者負担の軽減や医療保険財政の改善の観点から数量シェアの30%相当以上への拡大を図ること。
さらに、臨床研究事業や教育研修事業についても効率化に努めること。
また、総人件費については、医療サービスの質の向上、患者の処遇の改善等にも留意しつつ、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成18年法律第47号)等に基づく平成18年度からの5年間で5%以上を基本とする削減について、引き続き着実に取り組むとともに、「経済財政運営と構造改革に関する基本指針2006」(平成18年7月7日閣議決定)に基づき、人件費改革の取組を平成23年度まで継続すること。その際、併せて、医療法(昭和23年法律第203号)及び診療報酬上の人員基準に沿った対応を行うことはもとより、国の制度の創設や改正に伴う人材確保も含めた政策医療推進のための対応や医療安全を確保するための適切な取組を進めること。
あわせて、給与水準について、以下のような観点からの検証を行い、これを踏まえた適正化に取り組むとともに、その検証結果や取組状況については公表すること。
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① 国からの財政支出の大きさ、類似の業務を行っている民間事業者の給与水準等に照らし、現状の給与水準が適切かどうか十分な説明ができるか。
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② その他、給与水準についての説明が十分に国民の理解の得られるものとなっているか。
さらに、契約については、原則として一般競争入札等によるものとし、以下の取組により、随意契約の適正化を推進すること。
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① 国立病院機構が策定する「随意契約見直し計画」に基づく取組を着実に実施す るとともに、その取組状況を公表すること。
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② 一般競争入札等により契約を行う場合であっても、特に企画競争や公募を行う場合には、競争性、透明性が十分確保される方法により実施すること。
(3)医療資源の有効活用
医療機器の共同利用、他の医療機関との連携促進や病床の適正配置など、医療資源の有効活用を促進すること。
また、国立病院機構が保有する再編成により廃止した国立病院や看護師等養成所などの遊休資産について、国の資産債務改革の趣旨を踏まえ、売却、貸付等による有効活用を行うこと。
さらに、IT化の推進を図り、業務・システムの次期最適化計画策定を適切に進めること。また、政策医療のコスト分析等において全病院共通の財務会計システムを有効に活用するとともに、医事会計システムを全病院について標準化(基本仕様の統一)すること。
(4)収入の確保
医業未収金の発生防止や徴収の改善、診療報酬請求業務の改善、競争的研究費の獲得などを図ること。
第4 財務内容の改善に関する事項
「第3 業務運営の効率化に関する事項」で定めた事項に配慮した中期計画の予算を作成し、当該予算による運営を実施することにより、中期目標の期間における期首に対する期末の財務内容の改善を図ること。
1 経営の改善
中期目標の期間の各年度の損益計算において、経常収支率を100%以上とすること。
2 固定負債割合の改善
各病院の機能の維持を図りつつ、投資の効率化を進め、国立病院機構設立の際に承継した債務を含め国立病院機構の固定負債(長期借入金の残高)を着実に減らすこと。
第5 その他業務運営に関する重要事項
1 人事に関する計画
国民の医療需要や医療環境の変化に応え、良質な医療を効率的に提供していくために、医師等の医療従事者を適切に配置する一方、技能職についてアウトソーシング等に努めるなど、一層の効率化を図ること。
また、必要な人材の育成や能力開発、人事評価や異動を適切に行うことのできるシステムの確立を図ること。
2 広報に関する事項
国立病院機構の役割、業務等について積極的な広報に努めること。
3 中期計画における数値目標
本中期目標の主要な事項について、中期計画において数値目標を設定すること。
(別記)
国の医療政策として担うべき医療(政策医療)の分野
がん
循環器病
精神疾患
神経・筋疾患(筋ジストロフィーを含む。)
成育医療
腎疾患
重症心身障害
骨・運動器疾患
呼吸器疾患(結核を含む。)
免疫異常
内分泌・代謝性疾患
感覚器疾患
血液・造血器疾患
肝疾患
エイズ
長寿医療
災害医療
国際医療協力
国際的感染症



